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接客という職業

*ぼくが毎日通っている喫茶店には、とても良い店員さんがいる。歳の頃にして20代前半だろうか。彼女は必ず、お会計や飲み物を持ってくるときに、一言添えてくれる。もちろんぼくだけにではない。すべてのお客さんにそうなのだ。彼女は週に二度ほどしか見かけないアルバイトだが、まちがいなくこの店の看板娘になっていると思う。彼女が働いているときの喫茶店は、どこか店内がうれしそうなのだ。

上手なバーテンダーは、お酒のクオリティはもちろんだろうけれど、お客さんの求めている立ち居振る舞いをしてくれる。その人が話しかけて欲しいのか、話を聞いて欲しいのか、隣の女性を口説くためのアシストが欲しいのか、じゃましないで欲しいのか、ひとりで静かに飲みたいと思っているのか。しかし当のお客さんが、それを言葉にして伝えることはほとんどないだろう。お客さんのひとりひとりから発せられる、雰囲気や気分という微弱な電波やオーラみたいなものを読み取って、どういう対応をするか決めているんだろうな。

いわゆる「接客業」と呼ばれる仕事ではたらく人たちには、そんなちょっとした特殊能力みたいなものが身についてそうだ。ただおもしろいのは、人間には自分も理解していない潜在的な欲求もある。こう思っていたけれど、本当はこうして欲しかったんだ!みたいなね。そういう「声なき声」をすくいあげてくれる人ってのが、人生にちょこちょこいるよなぁ。そういう人になりたいなぁと思う。

その反対側で「察して」という行為の幼稚さも、ちょっと思ったりするよねー。言わなきゃ伝わんないじゃない!ってことばかりじゃないですか。声なき声を聞こうにも、そもそも声がないんだから、とも思うし。なんだろうなぁ、人間のコミュニケーションって、すごく奥が深いというか。言葉だけでもないし、言葉でのコミュニケーションは強いし。すみません、何が書きたかったのか分からなくなってきましたが、とにかく僕の通う喫茶店で働くアルバイトの子が、すっごくいいんですよね。


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