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本当は絵描きになりたかった

*本当は絵描きになりたかった。美術の成績は5段階で「2」だった。デッサンの授業で先生から「キミは絵は下手だけどこの角度だけはいいね。上手い人が見つける角度だよ」と言われたことがある。その席はクラスのマドンナ石川さんに「アイツの隣ヤだから代わってよ」と言われ渋々代わった席だった。文章を書く仕事もそんな感じで始まった気がする。なんなら成績も5段階で2な気がする。ただあの頃と違うのは、まだ筆を置いてないことだけだ。

先日、タイトルに惹かれて観に行った展示で、たまたま出会った絵に惹き込まれすぎて絵を買った。僕は美術商でもなんでもない。ただその絵に描かれたアメリカンワタウシの表情に、あの目で見つめられたくて絵を買った。今朝、部屋に飾ったものの「もうちょっとこっちかなぁ」と思い少しだけ移動させたら、その場所にぽかんと穴が空いた気がした。良い絵は初めからそこにあったような存在感がある。本当はそこには何もなかったはずなのにだ。

僕の大好きな漫画にこんなセリフが出てくる。
「人に花をあげるのは自然で、その花を花かんむりにしようとするのが芸術だって。でも本当に大切なことは、花かんむりをあげたいと思う、その”こころ”なんだと思う。だから、お花を見てかんむりを作りたいと思ったら、作らないといけないんだよ。そうしないと間に合わないから。だから私は絵を描くんだ」

本当は絵描きになりたかった。そう思い出させてくれるほどのこんなに素晴らしい絵を描いてくれた作家さんに感謝したい。その展示のタイトルは「描いてこそ」だ。下手でもどうにか書いてやる。くじけそうではあるが、まだ筆を置きたくはない。人には決して言わない夢もある。でもその夢が叶おうが叶わまいが、その道中で出会う誰かと何かを共にすることができたら、それだけで人生は半分勝ったも同然な気がする。何に勝つのかは知らないけれど。


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