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プロのお客さんになりたくて。

*褒めてもらうことがめっきり少ないぼくだが、先日、褒められて心から嬉しかったことばがあった。知り合いのバーのマスターが「れつくんはさ、プロのお客さんみたいなとこあるからね」と言ってくれたのだ。その場で飛び上がりたい気持ちを抑えて、ウヰスキーをくいっとやりながら「ありがとうございます」とだけ、つぶやいておいたぜ。

「プロのお客さん」は、ぼくにとって目指すべきところだ。役者やスポーツ選手、料理人、ギャンブラーにだって「プロ」があるんだから、とうぜん「お客さん」という種目のプロだってありますよ。そんな「プロ客」に、ぼかぁなりたい。

プロのお客さんの仕事は、たったひとつ。お店にとっての「いいお客さん」でいることです。しかし、この「いいお客さん」ということばは、「いい人」くらい曖昧で、広くて、マニュアルで決められるようなものではありません。ただ、ひとつ曖昧なルールを作るとすれば「自分がお店の人だったら、してほしいこと」を考えて、それをするかしないかを決めるのです。

空のグラスを渡すときは、どんなふうに渡せば取りやすいか。料理をもらうとき、片手と両手だとどっちがいいだろう。お店を出るとき「ごちそうさま」「ありがとうございました」と言われなかったら、ちょっとがっかりするだろうな。ほとんどの人が当たり前のようにやってるそんなことを、当たり前のようにやる。そこから、どうしたら喜んでもらえるかを考える。お金をたっぷり落とすからといって、「いいお客さん」なわけではありません。いくら気遣いがよくても、ハイボール1杯で二時間も粘っていても、これまたいいお客さんとは言い難い。

当たり前ですが、お客さんと店員さんは、上下ではありません。お金を払って、サービスを受ける。お金をいただいて、サービスをする。それが「足りない」と感じたら、指摘してもいいし、通わなくてもいいわけです。「お客さん」というのは、顧客でもあり、そのサービスを共につくっていく、仲間のひとりでもあるわけです。演劇を見るにしても、髪を切るにしても、酒を飲むにしても、いいお客さんでいたいなぁ。その「いい」を、考えていくのはおもしろいよ。


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