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マナーの一言

*昨日は九州から、アートディレクターの佐藤瞳さんが来られていたので、夕方から神戸をぶらぶらと案内した。

廃業する銭湯を常連が引き継ぎ、リニューアルされた飲める銭湯「湊河湯」。番台をなくしてロビー空間を作り、そこに立ち飲みスペースを設けているのがおもしろい。立ち飲みしてから風呂に入ってもいいし、風呂に入ってから飲んでもいいよね。なんなら、飲んでから風呂に入って、出てからまた飲んだっていいわけだし。

歴史ある看板は危険なので廃棄されて、ネオン管が灯るおしゃれな外装になったものの、地域の人たちは相変わらず寄り付いているようだった。若い人たちが地域の古い資源をリニューアルしたものの、今まで使っていた人たちのことを無視した設計や文脈になっており、元々の人たちが寄りつかない例はままある。しかし、ここはそうではなかった。なんなら僕たちが飲んでいた間、お客さんは全員、地元のおじいおばあだ。

「なにか意識されていることや、こだわったところはあるんですか?」と元常連の店主に訊くと、さっと一言、「とくになにもしてないですよ。ただそれだけ、この銭湯が昔から愛されてただけだと思います」って。こりゃー、一本取られたくらいの気持ちよさだったなぁ。そうだそうだ、そうだよね、と握手したい気持ちになった。

もちろん、意識していることがないわけはないのだ。事実、そこから突っ込んで聞いたら、いくらか方法やこだわりを見つけることはできた。でも、最初のあの答えも本当で、何より一発目にサッと出すべき答えだと思ったんだよな。なんていうんだろう、マナーというかさ。しかもそれがちゃんと見えてる人たちがやってるってのがよくて、ただおしゃれなだけじゃないんだなとよく分かる。いいよー、湊河湯。お近くの人もお遠くの人も、ぜひぜひ。

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