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赤い女の子の霊

これはバイトで県外まで出張して調査をした話。
依頼されたのは、とある一戸建ての賃貸物件について。オーナーは特に曰く付きの物件ではないというが、入居者が短期間で出て行ってしまうという。出ていく理由を尋ねると、女の子の霊が出ると口をそろえて言った。
専門の霊能力者に依頼すれば解決すると思うが、オーナー自身が霊の存在を否定している為、霊能力者に大金を払いたくないとのことで、こちらに話が来た。
要はお金を払いたくないので本当に霊が出るのか、そしてあわよくば解決してくれと。

毎度こういった依頼をされるが、修行した霊能力者ではないので、お祓いなんてできないし除霊もできない。見ること、話すことしかできないので、ある程度理由が判明したら報告してお金もらって帰る。
誰から依頼されるとかは守秘義務で言えないです。お金をくれるのは物件のオーナーじゃなくて、オーナーから相談されてこっちに依頼してきた人。どういうお金の動きがあるのかは知らない。探るのも怖い。


そんなわけで生活費の為に県外まで行ってきました。
物件は閑静な住宅街の外れにありました。外から見ただけでは何も感じないので、とりあえず預かっている鍵で中に入ろうとしたら、視線を感じたので横を見ると、隣の家の庭からお婆さんがこちらを見ていた。
コミュ障なので軽く会釈してさっさと家の中に行こうとしたら、
「そこに住むのかい?」
お婆さんから声をかけられた。
あぁめんどくさいと思いながらも、不審者として通報されても嫌なので適当に返事をした。住む予定なので内見に来たと嘘をつく。
お婆さんは何も言葉を返さず、家の中に入るこちらをずっと見ていた。
言っちゃ悪いが視線を向けられるのが嫌いなのですっごい不愉快です。


家の中に入り、玄関で佇む。静寂に支配されているが、気味悪さなどは一切感じなかった。女の子の霊が出ると聞いて来たが、一体どこにいるのやらと思った。
だいたいは家の中に入ればどの部屋に霊がいらっしゃるのかはわかる。でもこの家の中からは何も感じなかった。断言できる。この家には霊はいないと。
それでも一応、家の中を一通り移動して霊がいないかをチェックする。
いたところで何もできないのだが、正確な報告が求められている仕事なので、できることはやる。

だけど、やっぱり思った通り、霊はいなかった。
全然住みやすい家だと思う。誰も住んでいないのがもったいない。
そう思ってリビングの床に座った。とりあえず報告しようとスマホを手に持って――

寒気がした

――庭の方からだった。
目を瞑って深呼吸。そのまま庭の方に意識を集中させる。
あぁこれか。これが入居者が見た霊かと思った。
急に現れた。でも家の中じゃない。庭から……いや、もっと……


……隣の家からか?


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