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旧秋田商会ビル

下関の大きな街道のそばにいくつか古い建物がある。そのうちの一つが旧秋田商会ビルだ。秋田寅之介さんによって1915年に建てられた。

現在は観光情報センターとして使われているようで、なかには事務員の女性がいた。最初は恐る恐る入ったという感じで入ったのだが、非常に柔らかい口調で案内をしてくれたので、それならばしっかり見学してみようかという気になった。1Fは土足で、2F以上は靴を脱いで上がるようになっている。

社屋と住居を併用していたそうで、実は平成の最初の頃までは普通に使っていたらしい。だから地元に長くいる人にとっては近くを通ったときに、秋田家の奥さんが普通に挨拶をしてくれていた、という記憶が残っているとのことだった。

屋上にはそれはそれは立派な庭園が広がっていて、松の木が10本ほど植えられているそうだが、現在は一般の見学を行っていない。平成28年に豪雨に見舞われ、その際に屋上の一部が壊れてしまったそうだ。現在は、手入れをする職員さんや研究のために調査に入る人くらいしか屋上に立ち入れなくなっている。その昔は、その屋上で縁日のようなことも行われていたというから、さぞ栄えていたのだろうと推し量られる。

寅之介さんは新しいことが大好きで、人がやっていないことをして驚かせようという気概を持った人だったようだ。庭園のほかにも、手動式のエレベーター、いくつもある階段、取り外し可能な柱など、建物の随所に他では見られないところを感じられた。そのことを素直に「すごく面白い建物ですね」と言ったら、「きっと寅之介さんもそれを聞いて喜んでいると思います」と先ほどの事務の女性が返してくれた。

なんとなく散歩のついでに入っただけだったが、印象に残る建物だった。中にあるの展示物も見ごたえがあるので、とても無料とは思えないなと感じた。

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