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やっぱりサプライズは要らなかった

サプライズのなかった侍ジャパンは見事に金メダルを獲得した。決勝戦をTV観戦していたが、村上選手のホームラン以降、なかなか点が入らず、国際試合の決勝戦らしい、じりじりとした重い展開であった。

2点目と取ったプレーはまさに日本の野球らしさが出ていた。ヒットで出たランナーを1球で2塁に進める。その後のヒットで生還できないと思われたが、返球が逸れたのを見てホームに飛び込む。紙一重の差でホームベースをタッチした。この試合ならば2点あれば大丈夫だろう、そう思える追加点であった。

最終回に登板した栗林投手はルーキーながら広島カープの抑えを任されている。オーバースローから、ストレート、カウントも取れて決め球にもなるフォーク、そしてカーブ。抑え投手にこれだけ投げられたバッターはそう打てない。決勝も含めて2勝3セーブは、本当に見事な守護神っぷりであった。

振り返ってみると、稲葉監督は野手に関しては役割を決めていたようだった。そもそもスタメン以外のベンチメンバーが4人なのだからそりゃそうなのだが、高校野球のような選手起用だった。対してピッチャーは調子のよい投手を(トーナメントに入ってからは特に)起用していったように思う。決勝戦は、森下→千賀→伊藤→岩崎→栗林と繋いだが、途中、平良投手、山﨑投手を使ってもよい展開だったはず。しかし、こちらもルーキーながら伊藤投手に勢いがあった。それを感じて、決勝の、しかも1点差の場面でマウンドに送ったのだ。

結果的にではあるが、選ばれなかった早川投手や宮城投手に出番は無かっただろう。先発は山本投手、森下投手、田中投手の3枚で考えていただろうし、大野選手や青柳投手、千賀投手には先発もしくは第2先発のような形の起用法を想定していたのだろう。つまり二人が選ばれるには、先発の3人を超えないといけなかったわけだが、まだその域には達していないだろう。逆にルーキーでも伊藤投手や栗林投手の実績は十分と判断し、使いどころのイメージがあったから選出した。首脳陣からすれば、順当な選手選考だったことが、試合を通してよくわかった。

エースや4番ばかりを揃えても勝てないところが野球の面白いところ。各選手に役割があり、それを見事に実行し続けていった結果、悲願の金メダル獲得となったわけである。近年は野球の人気低下が叫ばれているが、今回のような試合を見せてもらえれば、「野球っていいな」と思う人たちが自ずと増えそうだ。選手選考・起用、そして選ばれた選手の活躍によって、アトランタ・北京五輪の雪辱を晴らせた大会であったと思う。

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