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先月の下北沢

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大学受験前、アメリカでオバマ大統領の就任直前に築40年・風呂なし安アパートに住み始めたのが下北沢との最初の接点です。
受験勉強に飽きて古本屋で啄木の『一握の砂・悲しき玩具』を買い、部屋の中なのに吐く息の白い東京の冬が、詩の雰囲気に妙にあっていたのを覚えています。

駅前のバラック屋根の通りにある八百屋や乾物屋の前を通り、いつまでも開かない踏切を待ち、通りひとつ越えるたびに違う色を見せる街での撮り歩きはスナップ撮影の勉強に最適でした。

でも、今となっては小田急は地下に潜り、通った銭湯は服屋に。
駅前のバラック通りは再開発で跡形もなく、巨大な天狗の面があった神社はこじゃれた商業ビルに取って代わられています。

他の街に引越し後たまに訪れる「シモキタ」はその度にどこか変わっていて、自分の記憶の中の「シモキタ」がいつの姿なのか見失ってしまいそうです。

だから、この街に来るときはいつだってカメラがかかせません。
下北沢と自分とのささやかな思い出の栞として、今日まで自分が歩んできた時間的距離を正しく知るための物差として、これからもたくさんの「先月の下北沢」をフィルムに写していきます。

機材
Hasselbrad SWC Biogon 38mm f4.5
Fuji PRO400H
現像&スキャン:すずきかめら(名古屋) 

*2020/12にデザインフェスタギャラリーで開催したグループ写真展にて出展


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