ライブハウスは日本の文化
今回のコロナでは飲食店や観光業を営む企業をはじめ、エンタメ関連の方や対面サービスを行う方々を中心に、他方に多大な影響があったと思います。
緊急事態宣言が再び発令され、この先どれだけ堪えればいいのか。先が見えない状況に不安を感じている多くの人の気持ちを想像すると、心の底から苦しくなってきます。
今回僕が記事を書くライブハウスは、そんな中でも危機的な状況なので、少しでもライブハウスに関心を持っていただく一助となればと思い、このnoteを書きました。
少し長いですが、一読いただけると幸いです。
コロナ禍のライブハウス
コロナ禍のライブハウスは、中でも危機的な状況で、閉店が相次ぎ、一度目の緊急事態宣言が解除されてイベント自粛が緩和された頃(2020年6月-9月頃)も、クラスター発生確率の高い警戒業種扱いとされ続けていました。
当時を振り返ると、
マスク必須、声を出さない、などの他に、
人と人との距離を2メートル以上あけないといけない
という、キャパ数百人規模の普通のライブハウスでは立ち行くわけのない、厳しいガイドラインが引かれていました。
池袋Adamというライブハウスが、Youtubeでこのガイドラインについて検証していましたが、この基準を守るとキャパ200人のところ10人も入ることができませんでした。
こんなんじゃ営業再開にならないですよね。
再び訪れた緊急事態宣言は、
ニューノーマルを模索しながら、耐えて耐えて、耐え抜く戦いを強いられているライブハウスにとって、とても苦しいニュースだったと思います。
ライブハウスって必要?
僕は10年ちょっと前、24才くらいまではバンドでプロを目指していました。
月に4-6本ほど行っていたライブハウスは、特別な場所で、とても思い入れがあり、とにかく無くなって欲しくないと思っています。
ただ、一方で、
「残れないならライブハウスは必要ないんじゃないの?」
という考え方を聞いたこともあります。
なぜかと言うと、ライブハウスはチケットノルマというシステムがあり、
多くのまだ売れていない原石アーティストは、
ノルマ分のお客さんを呼べずに自腹で払ってライブをしています。
数人のお客さんを集めてもお金をもらえるどころか、払ってライブをするのなら、Showroomやツイキャスのような、直接お客さんとやりとりをするサービスを使って、少しでも収入を得た方が、アーティストにとってはメリットがある。
という考え方もあるからです。
この「ライブハウスって本当にいるの?」
という問いに対して、
悩みながら僕が出した答えはYesです。
ライブハウスは絶対に無くしてはいけません。
僕にとってのライブハウス
僕がバンドで有名になりたいと思って活動をしていたころは、
ライブハウスでのライブは一つの目標でした。
「〇月〇日のライブに向けて新曲を作るんだ」
「3ヶ月後の自主企画ライブまでにスキルアップするんだ」
「あのアーティストと対バンができる!いいところを見せてやるぞ!」
「有名になりたい」という距離の見えない漠然とある目標に対して、もう少し、目に見える現実的な指標になっていたんだなと思います。
そんな僕の記憶に残っているライブハウスは、
地下の冷房の効いた場所で、
立派なステージがあって、
プロの照明さんと音響さんが演出してくれて、
出番が近づくと鼓動が高まる場所。
そんな中で、メンバーよりもお客さんが少ないこともあるし、
売れないバンドにしては、意外と集まってくれる日もありしました。
ライブハウスの店長なんて禄(ろく)でもなくて、
お金を払ってライブをしてるのに、お客を呼べないことをボロクソ言われたり、その日の演奏をへこむほどダメ出しされたりもしました。
「もっと場数を踏まないとダメだ」
って言われて、言われるがままに自腹のライブの数を増やしていったら、
バンドマンなんてもともと貧乏なんで、健康保険や住民税が払えずに、督促状がどんどん溜まっていったりもしました。
そうやって無理しながらも続けていると、
打ち上げで珍しく褒めてくれることがあったり、
「お前らのカラーに合いそうなバンドを集めてやる!」
ってイベントを組んでくれたり、
他県のライブハウスに遠征に連れていってくれたり、
「下手くそだからもっと本格的な練習に付き合ってやる!」
って休みの日に店を開けて練習させてくれたり・・・
僕の中に残っているライブハウスはそういう場所でした。
僕が得たもの
売れないアーティストだった僕が、
ライブハウスから得ていたものは何だったんでしょうか?
簡単に言葉では表しにくいのですが、
「人生」
だったんだと思います。
数えきれない失敗を経験し、失敗を乗り越えていく成長を感じ。
涙が出るほど笑ったり、悔しくて悔しくて泣いたり。
仲間同士意見がぶつかって喧嘩になるようなテンプレートのような思い出もあります。
僕がバンドマンとして夢を追いかけた人生をライブハウスが一緒に作ってくれていました。
ライブハウスは日本の文化
少し話は変わるのですが、
今回のコロナで、海外のライブハウスはどうしてるのかを調べたんですが、海外には日本のようなライブハウスはなく、お酒や料理と一緒に音楽を楽しむライブバーのような形態なんですって。
日本のライブハウスは日本独自の文化だったんだってそのとき初めて気付きました。
ライブハウスは売れないアーティストからお金をもらって場所を提供している搾取ビジネスではありません。
売れ方の知らないアーティストが、夢に向かって進んでいけるように、口や態度は悪くても親身になって力を貸してくれる日本の大切な文化です。
ライブハウスの今後を考えたい
無観客ライブやライブ配信といった言葉が、コロナ禍で定着しつつありますが、ただ演奏をお客さんにみせるだけではライブハウスのDX(デジタルトランスフォーメーション)は不十分に感じています。
それが、生だから体感する周波数、目の前の熱量、場の一体感、といったお客さん側のエクスペリエンスが足りない、というよく耳にする課題も最もだと思いますが、
売れ方の知らないアーティストが、夢に向かって進んでいけるように、口や態度は悪くても親身になって力を貸してくれる日本の大切な文化です。
ライブハウスが僕(出演アーティスト側)に与えてくれていたこの要素をデジタルに再現することも、DXを行う上では重要なポイントになってくるのではないかと考えています。
クラファンへの参加やライブハウス支援のスプリット盤の購入程度しか未だにできていない自分が、どれだけ力になることができるのかはわかりませんが、今後もライブハウスのDXについて考え、何かを形にすることができればと思っていますので、デジタルで新しいことを模索していきたいというライブハウスの方は、ぜひお話を聞かせてください。
この記事をご覧いただいたみなさまも、
僕に一つの人生を作ってくれた、ライブハウスという日本の大切な文化がこのまま無くなってしまわないように、ぜひ一緒に応援してください。