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ライブハウスのビジネスモデル考察

ステージに立つのも困難なあのライブハウスは、今勢いのあるバンドが入れ替わり立ち替わり出演し、毎週末は満員御礼!

ライブハウスと聞いて、
下北沢のシェルターとかを想像する音楽好きの方のイメージするライブハウスは、極端に言うとこんな空間だったりしますよね。
もちろんそういうライブハウスもありますが、多くのライブハウスの実情と乖離があることは、なるべく多くの方に知って欲しいなと思い、この記事を書きました。

よく行くライブはライブハウスのホントの姿じゃない

音楽って素晴らしいですよね!
中でも生音を感じられるライブって瞬間芸術の極みだと思っています。
そんなライブを愛する多くのライバー(こんな言い方するのかな??)達のカスタマージャーニーを想像すると、ライブハウスではなくアーティストから結果的にライブハウスを選ぶようなケースが多いと思っています。

例えば、
「超人気」とまではいかないけれど、好きなバンドのライブ情報をチェックして足を運べる距離と日程のチケットを買って観に行ったり。

普段はあまりライブに行かないけれど、好きなバンドが複数集まって対バンするアツい日に魅力を感じて足を運んだり。

「え?なんでこんな小さなライブハウスにこんなビックネームが来てるの??近くで観れるなんて最高じゃん!!」
って驚いて倍率激高のチケットの抽選に申し込んだり。

でも、こんな日は一部のライブハウスの、限られた日だけ・・・

人気アーティストが入れ替わり立ち替わりやってきて、満員御礼で場所代とドリンク代で運営している。
そんなライブハウスはとても少なく(あんのかな?)、多くのライブハウスの現実的な一夜ではありません。

多くのライブハウスのビジネスモデル

多くのライブハウスの標準的一夜は、原石アーティスト達によって作られます。
原石アーティストは10〜20枚くらいのチケットノルマを抱えながら、

まだファンと呼べるお客さんがいなくて、毎回友達に声をかけて必死に数人を集めるバンド。

いつも同じ顔ぶれだけど、何人かのファンが付いてくれたバンド。

「チケット代無料でもいいから来てください!」となんとか数人集められたバンド。

夢を叶えようと必死にもがいている数組のバンドを一夜に集め、
時には集客力のあるバンドをそこに混ぜて彩りを足して、
一つの夜ができあがる。

ライブハウス関係者やバンドマンにとっては、こんな夜の方が身近な一夜だと感じるんじゃないでしょうか。

この例の場合はバンドが5組、お客さんが35人、演者が20人。
ライブハウススタッフを除くと合計55人が同じ場所にいる、まぁまぁ賑やかな一夜となります。

いやらしい話、この場合の金銭の動きですが、
各バンドのチケットノルマが2,000円×20枚だとすると、
お客さんを5人ずつ呼んだバンドは赤字分の30,000円をライブハウスに払い、
15人呼んだバンドは赤字分の10,000円を払います。
(15人呼んでも赤字!!)
ライブハウスは基本的に1ドリンク制なので、ドリンク代が17,500円〜。
この例だと、217,500円が1日の売り上げとなります。
これが多くのライブハウスのビジネスモデルです。

ライブハウスは、アーティストがお客さんを呼んでも呼ばなくても、最低限ノルマ分は儲けることができる。
リスクを抑えたビジネスモデルになっていることがわかります。

ライブハウスのバリューチェーン

次に、このビジネスモデルの本質を見出すために、バリューチェーンを使って構造を紐解いていきたいと思います。

アクター(登場人物、団体)は
・顧客1:アーティストのお客さん
・顧客2:ライブハウスのお客さん
・アーティスト
・ライブハウス
の4種類です。

一連のバリューの流れを説明すると、
ライブハウスは、アーティストからチケットノルマを受け取り、チャンスと成長するためのフィードバックをアーティストに提供します。
一方のアーティスト側は、顧客1からチケット代と顧客1の時間をもらい、エンターテイメントでお返しをします。
また、分母は減りますが、ライブハウスに付いている顧客2はチケット代と顧客2の時間をライブハウスに支払い、対価としてエンターテイメントを受け取ります。

バリューチェーンで表すことで、
ライブハウスが大切にすべき一番の顧客が誰なのかが明らかになり、
原石アーティストとのギブアンドテイクがこのビジネスを成り立たせる鍵となっていたことがわかります。

ライブハウスのデジタル化はこのままではいけない

今コロナ禍で行われているライブハウスのデジタル化はというと、
Youtubeやツイキャス、ZAIKOなどを使ったライブ配信が多いと思います。
ただこの場合、顧客1がアーティストのエンターテイメントを観るためのデジタル化となり、ライブハウスがどこであろうと、あまり関係がなくなってしまいます。
(冒頭の「どこでやってもチケットが売れるイベント」と同様)

ライブハウスを主語としたデジタル化を成功させるためには、
オフライン上でライブハウスが原石アーティストに提供していたこれまでの価値を、デジタル上で再現する仕組みが新たに必要なんだと思います。

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