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アジア農業専門家が、「生育データから夏イチゴ栽培の課題を読み解く」試験栽培の参加動機

菜園&リゾートライフ編集部では、夏イチゴ試験栽培2023にご参加された渡辺哲氏に屋外プランター栽培の生育・収穫データを共有頂き、夏イチゴ栽培の魅力と課題を読み解く連載コラムを開始しました。第1回コラムでは、渡辺哲氏の農業関連のご経験と、夏イチゴ試験栽培へのご参加の動機などをお聞きしました。

アジアでの農業支援の仕事は、新しい栽培技術への挑戦の連続

渡辺哲氏へのインタビュー国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊で、野菜栽培専門家としてフィリピンの地方都市で栽培技術の普及活動に参画、その後、社団法人海外農業開発協会で数10年間、主にアジアでの農業支援事業に従事。

(編集部)渡辺哲氏は、夏イチゴの試験栽培で、詳細な生育・収穫の記録(栄養成長、生殖成長)を取られ、伊東・伊豆高原での「屋外ブランター栽培」(家庭菜園でも出来るイチゴ栽培)の課題・魅力を読み解いていらっしゃいます。渡辺哲氏は、長年、日本企業のアジア地域での農作物の栽培試験計画の立案を支援されていましたが、具体的にはどのようなプロジェクトでしたか?

(渡辺氏)東南アジアで、農作物の新しい栽培試験計画を考案するための調査研究に従事
1981年から2001年にかけ多くの日本企業が東南アジアでの農産物の生産事業を計画していました。その中で、日本政府の低利融資制度を利用した事業を目指す企業に対し、当該作物の栽培試験計画を立て、現地の投資環境、外資関連法を考慮した事業経営、資金計画等のフィージビリティスタディを行ってきました。
対象作目は、野菜の種子生産から油糧作物、香料植物、薬用植物、工芸作物、花卉や観葉植物など多種多様でした。東南アジアは年間を通して温暖ですが、雨の降り方は、地形、季節風、海洋などの影響を受け場所により複雑です。バナナ、ココヤシ、油やし、コーヒー、ゴムなどの農園は、それぞれの栽培適地で生産されています。
そんな中で日本の企業が行う事業ですが、単なる開発輸入では制度金融は利用できません。事業の試験性が認められなければならないため、対象作物の品種、育種、栽培法等について様々な手法、技術を組み込んだ試験計画を立てました。

(編集部)夏イチゴの試験栽培に参加される時の動機にはどんなものでしたか?

(渡辺氏)夏イチゴという自分にとっては未知の品種に挑戦してみる、栽培方法を探索してみるこの楽しみが試験栽培の参加動機。
いちごについては、1982年にフィリピンの高冷地で既に日本の品種が栽培されていました。その後、マレーシア高地の観光農園を視察しましたが、ハダニが発生した小粒のいちごでした。当時はまだ、国内での夏いちごの品種はなかったように思います。 今回、夏イチゴ(夏の環境下での生産に適した品種)の存在については、栽培方法を考える知的な好奇心を感じた。

(編集部)夏イチゴの試験栽培を始める前に、課題と感じていたことにはどのようなものがありましたか? 特に、屋外・プランター栽培と言う、ご経験の豊富な露地栽培との違いを感じられましたか?

(渡辺氏)屋外・プランター栽培での潅水量調整、最適な光合成/温度環境を作ることは新しい経験であった。
施設栽培についての実体験がないため、培養液の濃度、量、施用頻度など全て富戸のいちご農家に教えていただき、いわゆる「根腐れ」について若干の懸念はあったが、取りあえずは、文献の推奨に従った潅水管理を始めた。どこにプランターを置くかについて検討を行ったが、プランターの高温化を避けるために、遮光シートの上げ下げが出来るウッドデッキで屋外プランターを栽培することとした。
考えてみれば今の商業栽培されているイチゴは全て施設栽培で、施設内の日射量は露地に比べ相当減っている筈だと考えました。文献データからも半陰性植物的な性質が示されていました。

(編集部)次回の連載では、定植後の5-6月の猛暑前の観察記録と、その試験データからどのように栽培課題を読み解いたらよいかについて、渡辺哲氏にインタビューをさせて頂きます。

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