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割りを食う会社員。

国民年金維持装置な厚生年金。

 2022年9月28日の日経新聞の一面に、「厚生年金で穴埋め」という不吉な見出しが目についた。マクロ経済スライドによって100年大丈夫と豪語されていた年金制度改革が、蓋を開けてみると20年も持たずに給付抑制を止めようと、検討しているのだから皮肉が効いている。

 橘玲さんの著書「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」で、この問題は前々から指摘されていた。

”公的年金制度で最も得をしているのは、崩壊しかけた国民年金に加入し、毎月きちんと保険料を納めている人たちです。膨大な数の保険料未納者が存在するおかげで、彼らの受給率は、厚生年金に加入するサラリーマンよりはるかに高くなっているのです。ところで、国民年金が加入者に得な仕組みになっているとしたら、年金財政の赤字は誰が補填しているのでしょうか。日本の保険制度は2つしかないのだから、国民年金のツケは厚生年金に回すしかないことは誰でもわかります。厚生年金はサラリーマンに対する強制加入で保険料は給料から天引きされますから、ぼったくるのにこれほど都合の良い仕組みはありません。”

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方|橘玲

 会社員は厚生年金に強制加入することとなっており、雇用主も掛け金を折半しなければならないため、帳簿上、我々には直接分からない形の人件費として計上されている。つまり、厚生年金そのものがなければ、毎月何万円も天引きされている保険料と、同額を折半している会社負担分の人件費が、本来ならば給料として貰えるはずなのである。

 それを賦課方式で既に破綻している年金制度を維持するために、現在の受給者に供給し続けている。少子高齢化社会で、我々が年金を受給できる年齢に達する頃には、更に少ない現役世代が納付した保険料を原資として給付されるのだから、インフレ率を加味した場合の可処分所得で、現行世代と同じだけの額を貰うことは絶望的となっている。

個人事業主とマイクロ法人の二枚舌で最適化。

 同著にも、

”厚生年金は、男性に限れば現役世代のほぼ全員が払い損なのです。日本では消費税を3%上げるのにも大騒ぎしていますが、厚労省にとって都合の良いことに、年金保険料の料率改定に国会の議決は必要ありません。これは払った保険料がいずれ本人に返ってくるとされているからですが、現実には、サラリーマンが納めた保険料の半分は国民年金の赤字の穴埋めに流用され、消えていくのです。”

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方|橘玲

 と記されており、本来、給料として貰える筈の額を削る形で、雇用主が厚生年金の掛け金を、雇用者と折半して納付しているのにも関わらず、国民年金の赤字の穴埋めに使われ、当の本人が厚生年金を受給する頃には、納めた額よりも遥かに少ない額しか給付されず、ぼったくり以外の何者でもない。

 厚生年金の支払いを回避するためには会社員を辞めて、社会保険適用除外の従業員5人未満(例外あり)の事業所や、個人事業主として生計を立てるか、税務上の低所得者として振る舞うしかない。

 個人事業主として生計を立てられる規模であれば、「黄金の羽の拾い方」に、税率を最適化するための個人事業主と、社会保障の手薄さを補うために、最少額の社会保険料を掛けるマイクロ法人の二枚舌を用いる具体的手法が記されているため、個人事業主の方であれば、法人化するつもりがなくても知っておいて損はないだろう。

分離課税を駆使して低所得者を装う。

 とはいえ、個人事業主として生計を立てる手法が記されている訳ではない。あくまでも自分のビジネスを持っていることが前提となっており、会社員の我々からすれば、独立起業の壁が立ちはだかり、一筋縄ではいかないだろう。私も理屈は理解したが、いざ個人事業主として実践して、生計を立てることへのハードルの高さを感じずにはいられない。

 そこで、マイクロ法人とは全く異なるアプローチとして、金融所得に対する分離課税制度に目を付けた。株式を始めとする有価証券の所得は、一律で20%(復興特別所得税除く)となっている。個人の住民税が一律10%、所得税が課税所得に応じて45%まで上昇する累進課税であることを考えると、資産持ちに優しい仕組みとなっている。

 一律20%で個人の所得税率とは切り離されているから、証券会社の源泉徴収で完結する。そのため、確定申告をしなければ、金融資産所得は個人の所得として計上されることがない。

 仮に5,000万円を年率4%で運用した場合、得られる金融資産所得は税引き後に年間160万円弱で、月換算で13万円ちょっとになるため、働かなくても一般的に想像される健康で文化的な最低限度の生活は可能である。13万円も必要ない方は金融資産5,000万円も必要ないかも知れないが、年金制度をハックするのに必要な論点ではないため、各自計算されたい。

 仮に5,000万円の資産所得だけで生活する場合、所得は分離課税となり、源泉徴収ありの特定口座で運用していれば確定申告も必要ない。つまり、個人としての所得はゼロ計上されるため、所得税はゼロ。住民税も非課税世帯だし、国民年金は役場で申請することで全額が免除される。

 免除は滞納と異なり、加入期間が加算されるし、国庫負担分の半額は積み立てられるから、仮に40年間免除で1円も納付しなくても、現行制度が維持されるなら、年間78万円の半額である39万円が給付される。

 例え1円たりとも納付しなくても、役場で低所得者であることを申請して、全額免除となれば律儀に毎月16,900円納めている方の半額が受給できる。月当たり3万円ちょっとだけ受け取れても仕方ないと思えるかも知れないが、掛けたコストがゼロで、老齢期に毎月数万円給付されるのだからチート級のリターンだろう。

 金融資産で生計を立てているのだから、老齢期も相応の資産規模だろうし、最悪、老後破産しても生活保護があるから餓死することはない。老後不安のために必死に働き、払い損となり返って来ない厚生年金を給与天引きで強制的に徴収されるくらいなら、5,000万円前後を形成して、合法的に低所得者を装うか、若しくは65歳で資産がゼロになる勢いで好き勝手に生きて、そこから開き直りで生活保護を受給するのもひとつの手段だろう。

 いずれにせよ、厚生年金から逃れるには、普通の人がやらないことをやる覚悟は必要だろう。私はまだ20代であるが、来春から人柱的に分離課税によって税金や社会保障制度をハックするつもりである。


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