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無料に踊らされる人々。

ゴールドカード修行は得なのか?

 通常であれば年会費が発生するゴールドカードだが、三井住友ゴールドカード(NL)を皮切りに、年間で一定以上の金額をカード決済で利用すると、翌年以降の年会費が永年無料になるマイラーの「修行」にも似た要素が発表され、100万円修行に取り組んでいる人は多い。私の友人もそのうちの一人だ。

 私は三井住友カードが発表した際に、恐らく資金力のある各社でこぞってやり始めるだろうなと思い、ポイントや還元率の面で、使い勝手がお世辞にも良いとは言えない銀行系クレカは修行せず、様子を見ることにした。

 案の定、乱立する展開となり、備忘録的に記事を作成にするに至った。

 私は最終的に月5万円が上限の、投資信託のクレカ積み立てに関しても利用額に算入され、なおかつ口コミレベルの話ではあるが、半年経過時に修行で設定されている額の半額程度を利用することで、太客見込みの判定がくだされてインビテーションに至る可能性のある通常のEPOSカードを選択して、リサーチ通り半年で達成。既に年会費永年無料のゴールドカードを手にしている。

EPOSカードの場合。

 EPOSカードでセゾン・グローバルバランスファンドを積み立てする場合、投資信託の時価が変動しない前提で、修行達成に必要な経費を考えると、ファンドの売買で生じるコストを負担するだけである。

 年会費永年無料で空港のカードラウンジを利用したい目的を達成する上で、現時点では最も安上がりな手段だと判断した。

 ポイントが付与されない点と、信託報酬が0.56%と解約時の隠れコストとして、信託財産留保額が0.1%上乗せされる点を踏まえても、明示されている50万円を10ヶ月積み立てた際、ファンドに持ってかれる手数料は2,750円相当。

 他社ならポイントが付与される機会損失を含めても+5,000円相当で、合わせても実質7,750円あれば、年会費5,500円のゴールドカードが無料で持てる算段となり、2年も保有すれば元が取れる。私の場合は半年間、30万円積み立てで達成したため、1年保有で元が取れる。

”永年”無料はいつまで続く?

 そもそも、年会費”永年”無料は、しばらくの間、無料であるだけで、一般的に想像する”永久”無料ではない。クレディセゾンが発行するクレジットカードでは、一般カードは”永久”無料なのに対して、修行要素のあるハイステータスカードに関しては”永年”無料と区別している。

恐ろしく類似した字面、オレでなきゃ見逃しちゃうね

 つまり、一度取得さえしてしまえば、一生ものの運転免許と性質が異なり、数年経過後にサービスの改悪や終了となる可能性が高く、それを想定した上で、修行する価値があるかを各々で判断すべきだろう。

 現にAmazon Mastercardゴールドは、2014年に登場して、Prime会員が自動付帯にも関わらず、年会費は4,000円+税まで割り引くことができたため、どうせPrime会員を利用するヘビーユーザーには御用達のカードだった。

 しかし2021年に新規申し込みが終了。既存のカード会員も年会費永年無料の新仕様に切り替わり、実質改悪となった。このことからも、顧客側に旨みのあるサービスなど、10年先まで持続するか分からない程度に捉えておくべきだろう。

時として経済的合理性と直感は相反する。

 つまり年会費5,500円のカードが、修行によって永年無料になったところで、その恩恵を受けられる期間を悲観的に見積もって5年。楽観的に10年と仮定すると、金額にして27,500〜55,000円程度なもので、その年会費を無料にするために、わざわざ年間50万円や100万円以上利用する価値が見出せるかは、個人の価値観次第である。

 年間で一定額はカード決済するから、どうせなら年会費が無料になる条件のカードが良い。は理にかなっているため完全に同意する。私も番号が15桁のクレカを保有しているが、必然的に年会費無料条件を満たすため、会費を取られたことはない。

 しかし、無理して修行の条件を満たそうとする位なら、諦めるか大人しく年会費を支払った方が経済的には合理的な判断となるだろう。それ位、人の感情は「無料」に弱く、飛びついてしまう非合理さは、行動経済学で証明されている。

 私は家賃を除いた生活費が、最低限だと月3万円、多くても5万円そこらで、家電の購入などの特別な出費でもない限り、年間で60万円もカード決済を利用しない。

 つまり、私が年間100万円利用しないと年会費が永年無料とならないクレカで、修行の条件を満たすには、余計に40万円使わなければならない。

 無駄遣いとなる可能性の高い40万円で、配当利回り4%の日本株を保有すれば、毎年16,000円の配当が手に入る計算で、そこから年会費の5,500円を支払った方が1万円以上得だが、多くの人が年会費永年無料に釣られて、どうにかして差額の40万円を消費しようと躍起になるだろう。

 カード会社の内情を知る由もないが、現金文化の根強い人口減少社会で、消費が低迷する中、乱立しているカード会社同士で凌ぎを削る構造上、いかにして顧客に金銭消費させるかを考えた結果が、現在のXX万円修行ではないだろうか。

 送料無料ラインを設定するのも似たような思惑だろう。直感的には抵抗感があるものの、たとえ年会費や送料などのコストが生じても、必要な時に必要な分だけ支払う方が無駄がない分だけ、経済的には合理的であることは、稲盛和夫さんが京セラで徹底した結果、会社が繁栄していることが何よりの証拠だろう。

 企業のマーケティングに踊らされたり、手のひらで転がされないためにも、行動経済学の知識と、相手の思惑を見極めようと思考する習慣は、案外役立つものである。


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