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危うくFIREするところだった...

餅は餅屋。

 いつものように電気ケトルでお湯を沸かしたところ、突然電源が切れた。お湯が沸いていて、本体がそれなりに熱を持っていたため、エネルギー源であるプラグを抜き、中身を水道水と入れ替えて気持ちだけでも本体を冷却。

 熱が引いた頃合いを見計らって、再度通電を試みたものの、うんともすんとも言わなくなった。温度ヒューズ溶断だろうな。工業高校で電気工事士の資格を取得する程度には、電気の知識や技能を有している身としてはそう直感した。

 取り扱い説明書には分解するなと注意書きがある中、自己責任でドライバーで蓋を開け、基盤と配線を辿っても、抵抗器などに損傷が見られないことから、ヒューズが溶断したのだとは思うが、通電を確認するテスターがないため真相は定かではない。とはいえ、修理か買い替え必須なのは間違いない。

 購入したの確か昨年だよな…。6月と言うこともあって、保証期間内かが五分五分であることに若干の期待を持ちながら、Amazonの履歴を調べたところ4ヶ月遅かった。享年16ヶ月。いくら保証期間外だとしても、タイマーでもあるのかと思う程度に短命だった。

 「タタコンは消耗品だ!やるなら1年以内に壊せ!」学校教諭から言われた古い記憶が蘇る。今思えば、なぜ某太鼓ゲームが学校の備品に紛れ込んでいたのかは謎だが、消耗品は保証期間内に無償交換を繰り返すのが、最もコスパが良いことだけは学生ながら一理あると思った。

 洗濯機はその要領で1万円程度の安物を使い潰して、保証期間内に交換対象となって、新品ロンダリングをしたが、電気ケトルはそうはいかなかった。

 とはいえ電気ケトルと言いながら、調理機能が内蔵されており、炊飯や即席麺用の片手鍋代わりにと、使用頻度が1日数回と酷使していたため、通常の電気ケトルよりも過度な負荷が掛かり、短命に終わったのは想像に難くない。

 1台で何でも済ませられるのは確かに便利だが、余計な機能が付加されていることで、製品寿命を縮めたり、性能が微妙になるなら、別々で買った方が良いのは普遍の真理で、餅は餅屋である。

チェンジニアでは原因が究明できない。

 定職に就かず株式市場の売買で生計を立てている身として、例え数千円の出費でも、想定外のものは痛みを感じる。最もコストを掛けない対応としては、はんだ付けされている温度ヒューズと同じものを、自前で交換することで復活する可能性が高く、ヒューズなんて送料を含めても数百円程度なものである。

 普段であれば器用貧乏さを生かして、捨てずに修理するが、電力量の大きい電化製品の場合、電気の知識があることと相まって発火のリスクと、金銭的リターンが釣り合っていないように思い、端から買い替える方向で考えている。

 温度ヒューズが溶断したのは結果であって、原因ではない。

 水が沸騰するのに際して、ヒューズに記載されている184℃を超過した原因が判明しない以上、はんだこてで部品交換したところで、また溶断する可能性が高く、そんな爆弾を抱えながらお湯を沸かすくらいなら、最初から買い換えたほうが長期目線では安上がりなのだ。

 これはかつて動力車操縦者という、電車の運転を生業にしていた身として、ヒューズが落ちた原因を探らないまま、とりあえず復位しても根本的な原因は解消しておらず、そのまま誤魔化してやり過ごした方が、後々面倒なことになる経験則から、原因不明の不具合だが、よく分からないけど変えたら直った、チェンジニア思考が相容れない側面も大きい。

全振りが許されるのはゲームの世界だけ。

 経済的独立と早期退職のFIREを目指した過程で、生活費用を引き締めた末路が、火災保険のお世話になる形でのリアルFIRE、リアル炎上になったら洒落にならない。

 つまり温度ヒューズが溶断して、うんともすんとも言わなくなった電気ケトルには、リアルFIREしないための、最終安全装置としての機能を存分に発揮してくれて、私の身や家財、賃貸物件を守ったのだから、お役目ご苦労さんで買い替えるのが紳士の嗜みだろう。

 幸い家電量販店の株主優待券が最近届いているのと、ホームセンターで使えるギフト券も常備しているため、持ち出しは少額で済むだろうし、価格帯によっては無いかも知れない。

 そんな状況下で、発火の危険が伴う電化製品を、自己責任で直して使い続けるリスクと、得られるであろうリターンが釣り合わないと、まだ判断できるだけの余裕がある意味では、早期リタイアが順調である何よりの証拠だろう。

 fireとfiredは自ら選んだ道のため、今後何が起きても独力で生きていくのだと、事あるごとに自分に言い聞かせているが、目先の買い替え費用惜しさにhouse fireに発展してしまったら元も子もない。

 人生で経済的独立と早期退職のfireを目標に掲げ、それに向かって邁進すること自体は尊いが、そのために削れるリソースを削りすぎると、違う部分でfireしかねない。ステータスの全振りが許されるのはゲームの世界だけだ。

 しかもこの炎上は何も物理的なものに限らず、SNSなどでPVを稼ごうと発信が過激化することで、インターネット上の仮想空間でも起こり得る話だ。

 大切なのは経済的独立も、早期退職も、人生における選択肢を増やすためのひとつの手段であって、それが目的化すると、いざfireした時に暇過ぎて何をすれば良いのか戸惑いかねない。

 そうならないためにも、相場が好調で株式市場にのめり込み過ぎていると感じたら、電気ケトルのように「危うくfireするところだった」と、ヒューズを落としてクールダウンさせて、自由になった時のことを考え直す時期なのかもしれない。


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