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小売店のポイント制度をハックする。

10%ポイント還元は実質9.1%引き。

 私が幼少期の頃、近所にある家電量販店が「その場でズバッと現金値引き」でお馴染みのケーズデンキだった影響もあってか、競合他社が導入しているポイント制度に関して、まどろっこしく、管理の手間が増えて面倒臭い印象が強く、今でもあまり好きではない。

 とはいえ、品揃えや株主優待の利便性を考慮すると、ポイント制度を導入している競合他社に軍配が上がるのと、都内某所に転居したことのを機に、郊外店であるケーズデンキとは疎遠になっていった。

 そうしてポイント制度のある家電量販店を多用するようになって久しいが、未だにポイント還元の踊らされている感が好きになれない。

 昔から数学的センスは人並み以上で、数字のマジックには騙されない傾向があるため、10%ポイント還元などと謳われると、あたかも1割引しているかのように見せておいて、実際にはおよそ9.1%引きであることは学生時代から見抜いていた。

 例えば1,000円の商品を1割引すると900円になる。しかし、1000円の商品に対して10%のポイントを付ける場合、100ポイントが付与される。どちらも同じ100円だから1割引と錯覚しがちだが、後者の場合、100円分の商品と引き換えられる権利が付与されたと捉えるべきで、言い換えれば1,000円で1,100円分の商品+ポイントを買ったに等しい。1,000/1,100=0.90909…。つまり、購入価格の90.9%で買っているため、100%から差し引くと、実質9.1%引きとなるのである。

 つまり、価格交渉で9.1%よりも値引きする代わり、ポイントは一切付与しませんと言われた場合、数学的には定価で10%のポイント還元を受けるよりも得をするのである。

合理的なポイントの使い道。

 それに、ポイントの厄介な点は現金と比較して、「ポイントで購入した額にはポイントは付かない」、「使用用途がそのお店の商品に限定される」、「貯めても利息が付かない」、「有効期限が定められている」が挙げられる。楽天ポイントなど例外はあるものの、原則としてこのような形態を取っている。

 そのため、「ポイントで購入した額にはポイントは付かない」対策として、元からポイント還元率が1%や還元なしの商品を購入する。「貯めても利息が付かない」、「有効期限が定められている」対策として、出来るだけ早く使い切り、現金を温存するの2点が重要となる。

 これらを考慮して、学生時代は書籍と、社会に出て賃金を得るようになってからはApple製品と引き換えるように努めていたが、Apple製品は単価が高いため、「出来るだけ早く使い切る」のに不向きだった。

 そうして最終的に辿り着いたのは、「お酒と交換する」であった。ワインやウイスキーの類でそれなりのものなら1,000円程度から取り扱っており、還元率は1%程度。それに何と言っても罰金である酒税を現金で支払わないで済む利点は大きい。

 私に限らず、お金持ちは資産にマイナスの影響がある税金が大嫌いだから、手持ちのキャッシュで罰金を払わずに、欲求が満たせるのは精神衛生に良く、我ながら理にかなっていると思う。株主優待のカタログギフトでも、特に必要なものがなければお酒と交換しており、晩酌するにしてもポイントでの購入が基本であることから、身銭を切って酒税を納める機会は飲んでいる割に少なく気分が良い。

経営者目線では値引きよりポイント付与。

 さて、ここまでは消費者目線でポイントについて記したが、ここからは経営者目線でポイント制度がいかに企業経営にとって都合の良いシステムなのかを、簿記を交えて記していく。

 まず、企業からするとポイントは負債となる。仮に1,000円の商品を売り上げた場合、仕訳は

現金(資産)1,000/売上(収益)1,000 と計上するのと同時に、

ポイント引当金繰入(費用)100/ポイント引当金(負債)100 を計上する形となる。

 この状態で貸借対照表を作成した場合、総資産1,000円に対して純資産900円となるが、直接1割引きした場合、総資産も純資産も900円となる。ポイント引当金という名の負債があることで、総資産を大きく見せることが出来るのである。

 しかも、通常であれば、融資で利子を支払って借入するところを、ポイント制度があることによって、実質的に企業は顧客から無利子でお金を借りているに等しくなる。しかもこの負債は、償還日が定まっておらず、いつでも引き換えに応じなければならない代わりに無利子が許されるだけに留まらず、多頻度顧客でなければ消失する可能性すらある。

 借金が2~3年で帳消しにされたら、貸した側は腹立たしくなって当然の筈なのに、それと同じことをしているポイント失効に対しては、存在そのものが忘れ去られていたり、気付いた時にもうっかりして勿体ないことをした程度で済んでいる。

 企業にしてみれば、決められた日に利子を付けて返さなければならない銀行から借りるよりも、あわよくば失効して踏み倒せるポイントとして顧客から借りた方が利点が多い。だから揃いも揃ってまどろっこしいポイント制度を導入しているのである。

 それに、現金で値引きする場合、売上高や利益を直接減らすのに対して、ポイント還元の場合、商品を売り上げた際の粗利を全く減らさないどころか、ポイントで購入する商品にも利益が加えられている。

 そのため、ポイントという名の負債を小売価格の商品を引き換える場合、還元率は原価相当分(7割)となり、在庫を抱えなければ商売が成り立たない小売店としては好都合となる。

 つまり、合理的なポイントの使い道に付け加えるとすれば、小売店側の儲けが少ない、言い換えると、どこで買っても値段が変わらない商品との交換が理にかなっており、自ずとポイント還元率の低い商品がそれに当たるだろう。


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