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NISAの欠点が顔を覗かせる。

5年先すら見通せない時代。

 10月5日、メインで利用しているSBI証券から、NISAのロールオーバー手続き開始のお知らせが届いた。私は一般NISAで口座を開設しているため、2018年にNISAで保有している銘柄は、暦年が変わると特定口座に移管するか、引き続き2023年のNISA枠を利用して非課税で運用するかを選択でき、後者のことをロールオーバーと読んでいる。

 私は5年前と現在とで運用方針が変わっており、日本株の高配当銘柄に関しては配当控除で税率を7.2%まで圧縮できることを知ってから、損益通算も可能な特定口座で運用するようになり、NISA口座に関しては、外国株式のインデックスファンドを購入するようになった。

 そのため、NISAで運用していた日本株は、ロールオーバーせずに特定口座に移管する形となるのだが、それは否応なしに通算不能な利確もしくは損切りすることを意味する。そのため、タイムリミットが迫っている銘柄に関しては、出来るだけ損をしない形で売却する必要があるのだが、5年前と今とでは世界情勢の状況が異なり過ぎており、含み損を抱えたまま塩漬けしている銘柄が残ってしまっているのである。

 考えてみれば、2018年当時は、2年後に東京五輪が控えており、インバウンド全盛期である。外国人観光客による爆買いの恩恵が期待できる銘柄を保有するのはメガトレンドで、まさか疫病による行動様式の変化で東京五輪が1年延期となった挙句、無観客試合となることや、戦争によるサプライチェーンの崩壊。

 世界的に急激な金融緩和を行った反動で、金融引き締めに転じた煽りを受けた極度な円安も、コストプッシュ型のインフレも、これら全てが起こることなど想像しなかった異常事態であり、それ以前と以降では銘柄を選定する基準の根底が覆されたに等しい。

 そんなかつて有望だったが、今では見る影もない個別銘柄を、年内に損切りしなければならないのは確定している中で、世界的な株安が重なり、そのタイミングを見失いつつある中で、ロールオーバー手続きのお知らせなどと言う悪魔の通知が来たのである。

損益通算の重要性。

 ロールオーバーしてあと5年先送りしてしまおうか…そんな考えが脳裏に浮かんだが、更に5年塩漬けさせたところで、元の株価に戻る保証などない。それどころか、今よりも安値になっている可能性すら考えられるのだから、損失が受け入れられる金額のうちに、さっさと切ってしまった方が良いのは、頭では理解しているが、いざ、損益通算できないNISAの欠点を目の前にすると、感情が邪魔をしてギリギリまで様子を見てしまうのは人間の性である。

 私がNISAで個別株を運用しなくなったのは、一度使用した枠は売却しても復活しない癖に、損切りしても利益と通算して節税すらできないデメリットが大きいと感じたためである。

 それならば、ポートフォリオが自動的に組み替えられるインデックスファンドで、基本的には長期で右肩上がりな指数に連動するものを保有していた方が、大きく勝つことはないものの、大負けすることもなく、平均的なリターンが期待できる。

 もし仮にロールオーバーして特定口座への移管を5年先送りしても、市場全体に投資するファンドであれば再浮上する期待値が、世界情勢の影響を直撃する可能性もある個別銘柄よりも高いからである。

 日本株に関してはリスクを取って個別株で運用しているから、少しでもリスクを抑えるために、通常時に2割マイナスになったら損切りすると決めている。

 もちろん、そうならないように財務諸表や有価証券報告書、決算短信、会社四季報を読み込んで、銘柄を選定するが、それでも1割くらいの銘柄は、想定と異なる値動きをすることがある。投資の世界に絶対はないのだから、想定外だと感じた時に損切りして、利食いした時に徴収された税金が還付される特定口座の方が、なんだかんだで都合が良いのである。

先行き不透明だからこそ手堅く。

 世の中が我々の予想を超えて変化する以上、未来予測したところでそれが当たる確率は万馬券と変わらないだろう。だからこそ、必要に応じて組み替えられるポートフォリオであることが重要だが、NISAの非課税枠はそれとは逆行し、資金が拘束されるリスクを負って非課税の恩恵を受けられる制度と捉えることができる。

 投資を始めるならNISAの非課税枠から使い始めるのが鉄則だが、私のように無知な頃に個別銘柄に突っ込むと、5年後に泣きを見る可能性が高いため、構成銘柄が都度最適化されて、かつ分配金再投資型で利確するその時まで税金が繰り延べられる、低コストなインデックスファンドで運用するのが間違いない。特定の金融商品を推奨する意図はないが、具体的にはeMAXIS Slim 全世界株式や同米国株式が代表格である。

 近い将来、国策で本家ISA並みに拡充されて使い勝手が良くなる可能性も無きにしも非ずだが、現状、つみたてNISAなら年間40万円、一般NISAなら年間120万円まではインデックスファンドで運用して、それを超過する分から特定口座で個別に運用する方が、NISAのデメリットが表出する確率は下げられるだろう。

 投資を始めると、大きく勝つことに意識が向きがちだが、大きく負けないことの方が重要だったりする。NISAは諸刃の剣な側面があり、使い勝手は本家に見劣りするものの、とはいえ使わないのは勿体ない。

 先行きが見通せないからこそ、自分なりに5年後に負けないと思えるような、手堅い金融商品を選定することが、夢は見れないものの、未来の自分を笑顔するためには重要な要素かもしれない。


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