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シン・エヴァンゲリオン考察

 今更感はあるが、1周年記念生特番で得られた情報などを加味した上で、新劇場版世代の私が腹落ちできる程度に、メジャーなものから、穿った解釈まで時系列順で紹介する。

 夏目漱石のような解釈の余地がある作品が好きなのだが、プロフェッショナルで庵野さんも同じニュアンスで発言されたように、現代人は分からないものを、分からないなりに解ろうとする哲学的な行為を楽しまなくなっているように感じる。情報化社会と言う時代の流れだろうか。

パリ市街戦

EVA4シリーズの名称。

 EVA44A、44B、4444Cの名称がありますが、アルファベットは劇中で出てきた順番からABC、数字の4はエヴァ4号機の個体数で、44A、44Bは2体で1ユニット、4444Cは4体で1ユニットの勘定になります。EVA44Aはよく見ると表裏でニコイチとなっています。これであれば、新劇場版:Qで登場したコード4A、4B、4Cも説明できる。

そもそもネーメジスシリーズはなんだったのか。

 結論としては、ネルフ(冬月先生)がヴィレの作戦を妨害するためにエヴァパーツで作った使徒もどき。

 しかし、新劇場版:Qの段階ではネーメジスシリーズと呼ばれ、シンエヴァではEVA4シリーズに突然名称が変わった。私は0708作戦でシン・エヴァンゲリオンの冒頭映像を見た時に違和感を感じた。 新劇場版:Qの時点では円盤に同梱されていたブックレット見ないとあれがエヴァMark.04だと分からないからである。

 恐らくネーメジスシリーズの語源は、ナディアの悪役ガーゴイル(声は冬月先生と同じ清川元夢さん)の本名ネメシス・ラ・アルゴールのnemesisから取っている。nemesisには歯が立たない敵の意味を持つ。つまり新劇場版:QでナディアのBGMが使われるシーンが3つあるが、2つはヴンダー絡みで、万能戦艦ノーチラスを連想させるように演出されている。

 しかし、「バベルの光」だけが例外で、ヴンダーが登場前のUS作戦で、あえてナディアを意識させることにより、使徒もどきを作ったのが中の人繋がりで冬月先生だと暗喩していたのである。

 シン・エヴァパリ市街戦におけるリツコの「冬月副司令に試されてるわね」がその答え合わせで、暗喩する必要性が無くなったことで、ネーメジスシリーズではなくEVA4シリーズと呼称されるようになったと推察する。

マリがシンジをワンコ君と呼ぶ理由。

 他の方の解説にもありますが、ワンコ→犬→Dog。このアナグラムがGodとなり、シンジが神になる物語であることを表している。マトリックスのネオがアナグラムでOne(キリスト教におけるThe Oneは神)となる構図と完全に一致しており、庵野監督の作品に対するリスペクトを感じる。決して庵野秀明が安野モヨコの犬であることを暗喩している訳ではない。

第3村

ジブリ感はあるが、似て非なる。

 例(レイ)の田植えシーンや、自然豊かなほのぼのした描写は、後々のヤマト作戦との対比として最良の役割を果たすのだが、庵野監督が虫嫌いが影響してか、ジブリ作品であれば描写されるであろう、トンボやユスリカなどが一切登場しない辺りが流石である。

同級生の思想の違い。

 トウジの診療所で、搬入したであろう医療機器の動作確認を行うケンスケとの会話にて、トウジが「早ようシンジもこの村に馴染んでくれりゃええんやがな」と言った後にケンスケの深刻そうな顔のカットが入る。

 同じ同級生と言う立場でありながら、シンジをエヴァとの距離を置き、第3村でほのぼの生きることが優しさと考えるトウジと、シンジをエヴァに乗るように誘導し、全てにケリを付けるのが優しさだと考えるケンスケとの間で思想が異なる様子を描写しているものと思われる。

 因みに、公開1周年生特番でケンスケが持っているビデオカメラは2014年〜2015年製のものをモデルにしており、14年後にはバッテリーが寿命を迎えているので、外部バッテリーから給電している設定で、ケーブルを垂らしながら撮影していると回答していた。芸が細かい。

土の匂い。加持さん。

 マイナス宇宙直前のシンジとミサトの会話で、「アヤナミが消えた帰り道、加持さんに教えて貰った土の匂いが〜」とあるが、時系列がおかしい。これは公開1周年生特番で、プロットの段階でカットしたシーンがあると回答されている。

ヴンダー

スイカの種子は破で加持さんが育てていたもの。

 深読みして加持少年からの贈り物と解釈している方も居るが、"Place:Tokyo-3,Japan"の表記から第3新東京市で収穫されたものであることが伺える。

ニアサーとサードは最低でも4週間以上の時間が経過している。

 青いバンダナの件でサードの回想シーンが流れるが、加持さんがミサトさんにバンダナを渡すところで、ミサトさんはギプスを装着していない。ニアサーが発生した第10の使徒戦の前段で行った、3号機の機動実験で怪我をしているから、仮に骨折であればギプスが外れるまでに4~8週間の時間経過が必要である。

 その後、加持さんはサードを止めるためにVTOLに搭乗したと思われるが、Qでセントラルドグマの爆心地に撃墜されたであろうVTOLが描写されている。

ヤマト作戦

式波タイプのオリジナルは自決を目論んだアスカの魂を救済した?

 「最後のエヴァは神と同じ姿〜」オリジナルがそう呟いた後、アスカの顔を第13号機に引き込むが、青色になる直前に使徒化したアスカの左眼が元に戻る。

 裏コード999とエンジェルブラッドを全量注入したことで、肉体は第9の使徒と化し、アナザーインパクトのトリガーとして利用されてしまうが、その後のマイナス宇宙でシンジがアスカを成仏させる際に、第13号機のプラグを引き抜いた。オリジナルが魂を救済したことによって、エヴァのない世界となった宇部新川駅でシンジやマリの居るホームの対向に姿が見えたと解釈している。

ゲンドウ、実は第13号機にエントリーしていない。

 「シングルエントリーじゃなかったの…」第13号機が再起動した直後のアスカのセリフだ。その後、式波タイプのオリジナルと足元にカヲル君らしき少年のシルエットが小さく描かれているが、実はQでDSSチョーカーが作動した際にカヲル君の魂を排除し、肉体だけを再構成している設定なのである。

 つまり、第13号機にエントリーしているのは式波タイプのオリジナルと、魂のないカヲル君の再構成された肉体と言うことになる。ゲンドウがエントリープラグを介して第13号機に搭乗する余地はないのである。

 ゲンドウが「預けていた初号機を返してもらう」と言った後も、第13号機の口に入っただけであって、パイロットとしてエントリーしていない。では、なぜゲンドウの思い通りに操縦できるのか。

 TV版第24話でカヲル君が弍号機を無人で操ったのと同じ理屈である。「魂さえ無ければ同化できる」からだ。そのためにQでDSSチョーカーによりゼーレの少年であるカヲル君の魂を排除して、肉体だけを再構築したのである。

 エヴァンゲリオンと言う物語がループしていることが、シン・エヴァンゲリオンのカヲル君の発言で明かされたことから、基本的に設定は踏襲しているものと考えて良いのではないだろうか。

真希波・マリ・イラストリアス、クローン説

 設定が踏襲されているならば、パイロットもエヴァの呪縛によって、一応14才で統一されているものと思われる。ゲンドウが搭乗していないにしても、真希波・マリ・イラストリアスは説明が付かないと思われるかも知れない。貞本エヴァの最終巻末にある夏色のエデンに登場した真希波マリさんは16才だからである。

 そこで考えられるのは、新劇場版:破から登場する真希波・マリ・イラストリアスは、貞本エヴァに登場した真希波マリさんのクローンではないかと言う解釈だ。

 真希波・マリ・イラストリアスがエヴァの呪縛に罹ったのは、破で裏コードビーストを使った際である。1998年の京都大学が舞台の夏色のエデンに登場する真希波マリさんは既に16歳で、辻褄の合わせようがない。

 そこで考えられるのがクローンである。シン・エヴァンゲリオンでは、綾波と式波型パイロットは人類補完計画のために用意されていたものだとゲンドウのセリフがあったことから、真希波型パイロットは真希波マリさんが別で用意した可能性がある。

 そもそも、新劇場版でアスカの惣流(蒼龍)と空母の名前から駆逐艦である式波(敷波)に変わったのは、駆逐艦由来のヒロインがクローンであることを暗喩しているのではないだろうか。真希波(巻波)も存在している。あえてキャラクターではなくヒロインと表現したのは、冬月先生がクローンと言うカオスな設定になってしまうため。

 それでも、冬月先生にイスカリオテのマリア君と言われた際に、超久しぶりに聞いた名前とか、Qで別レイに対して、アンタのオリジナルはもっと愛想があったと言っていることから、記憶が真希波マリさんから受け継がれている。

 これに関しては、シンジが冬月先生と31手先で君の詰みだ将棋をした際に、ユイがコアへのダイレクトエントリーを自ら被験した際に記憶が消されていると言っていることからも、エヴァの世界では記憶の操作が可能でも不思議ではない。京都大学で冬月先生のゼミに参加していた真希波マリさんである。きっとユイさんに負けず劣らずのマッドサイエンティストに違いない。

 冬月先生のゼミを通じて、ユイやゲンドウと関わった後、イギリスへ留学。エヴァやクローンの研究に携わった後、ゲンドウや冬月先生が目論む人類補完計画を阻止するために、自身のクローンをエヴァパイロットとして、運命を仕組まれた子供たちと同い年になるように調整。新劇場版:破の冒頭で、イギリス出身のユーロネルフ所属、仮説5号機パイロットとして登場するシーンに繋がっていくのが私の推測である。

 イスカリオテのマリアはイスカリオテのユダと聖母マリアを足して2で割った造語と推察。イスカリオテのユダは、新約聖書における「裏切り者」である。かつて冬月先生やゲンドウと行動を共にして、手の内を把握している真希波マリさんが裏切り、人類補完計画を阻止するヴィレ側に所属していることへの皮肉として、去り際に嫌味を言うまでがあたかも京都人らしい設定だと思えば、納得感の高い解釈ではないだろうか。

マイナス宇宙

シンクロ率、0≒∞

 旧劇場版の「まごころを、君に」のクライマックスシーンで錯乱するシンジのシンクロ率を表すシーンでも間接的に表現されている他、貞本エヴァでも分かりやすく表現されている。旧劇場版のセルフパロディと解釈して良さそうだ。

左上に注目。
右のポスターは、同時期に公開されたナウシカの「生きろ」との対比を師弟で繰り広げた結果、ギャグみたいになりました。

ほう、希望の槍カシウスと変わるか。

 初号機が再起動し、ゲンドウが操る第13号機から新造した槍を1本奪い取った際、形状が変化した際のセリフは何気に重要である。

 カシウスが希望の槍ならば、ロンギヌスは絶望の槍。

 初号機が希望の機体ならば、第13号機は絶望の機体。

 あれれ。Qでシンジとカヲル君が第13号機にエントリーして、ドグマの爆心地に到達した際、リリスに刺さっていた2本の槍は、絶望の槍ロンギヌスに形状が変化して揃っていた。初号機がマイナス宇宙で第13号機から槍を強奪した際は、希望の槍カシウスに変化した。

 つまり、槍は機体の希望・絶望に応じて変化すると推察。結果として、第1の使徒であるカヲル君がQでシンジに希望を与えたが、第13の使徒に堕とされた結果、絶望を与えてしまった。

 槍の形状と機体のナンバリング、更に使徒のナンバリングをリンクさせた見事な構図である。

ゴルゴダオブジェクト。

 「ヒトではない何者かが、アダムスと6本の槍と共に、神の世界をここに残した。私の妻、お前の母もここに居た。」ヒトを捨てたけど脳みそは拾ったゲンドウがシンジに説明したセリフである。

 神の世界に綾波ユイさんが居たと言うことは、新劇場版並びにシン・エヴァンゲリオンの世界線は、綾波ユイさんが再構築した世界と解釈することができる。どうやってユイさんが再構築したのだろうか。

 旧劇場版の気持ち悪いラストに残されていたのは、太陽、月、地球、シンジ、アスカ、そしてユイさんの魂が残るエヴァ初号機だけである。初号機は人類補完計画が、ゲンドウが望む形で終わらなかった相補性のある世界に戻る際に、宇宙空間に放り出されている。

 その初号機が何らかの方法で、ゴルゴダオブジェクトに辿り着き、初号機の中に居座るマッドサイエンティストなユイさんが、シンジのためを思って再構築したのが妥当な推察だろう。

S-DATのナンバー。

 新劇場版並びにシン・エヴァンゲリオンで、S-DATのPGMナンバーを意識する人はかなり重症である。

 新劇場版:序では25と26の間を行ったり来たりしている。この数字は、庵野秀明のトラウマ的ナンバーで、本人的にはできる範囲でやり切ったTV版25話、26話が、世間では物議を醸したことで、劇場版として作り直す羽目になったからである。つまり、序の段階では既定路線であることが暗喩されている。

 これが新劇場版:破で、第壱中学校の"屋上"にいるシンジが、パラシュートで降下していた"メガネ"をかけた"乳の大きいイイオンナ"であるマリと衝突した直後、27に進んでこれまでと違うエヴァが始まったことを暗喩している。

 新劇場版:Qでは、シンジがカヲル君にS-DATを直してもらった後に28となり、シン・エヴァンゲリオンでは、ゲンドウの独白で1からスタート、28から29に切り替わるも、最後にS-DATの電源が切れることで、エヴァンゲリオンが終わることを暗喩しているのである。

渚司令。

 カヲル君の成仏シーンで突如現れる渚司令。これは役割を碇司令と重ねることで、シンジを幸せにしたい父親像のカヲル君と、シンジを苦しめることしかできない父親像のゲンドウの構図と重ねているためである。ゲンドウがピアノが好きだと独白したことで、この推論は確度が高まった。

 また、ニアサーでゲンドウと冬月先生が失脚した際に(Qの空白の14年と目される詐欺予告を参照)、臨時で渚司令と加持副司令が指揮を取り、Mark.06を自立型に改造し、第12の使徒と巨大化した第2の使徒リリスを2本の槍を用いて封印してQの本編に繋がると解釈している。第11の使徒…知らない子ですねぇ。


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