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若者は何にお金を使っているのか?


お金の若者離れの正体。

 私事ではあるが、暦年の家計簿で支出の3割が税金と社会保険料で占めた。国民年金保険料は失業に伴う特例で全額免除の扱いとなってこの数字である。そもそもの支出が少ないのと、税金と社会保険料は時間差攻撃となるから、負担が軽くなるのは来年以降である。

 とはいえ、いざこれまで給与天引きされていたものを支出計上すると、国民負担率50%大間近の数字に嘘偽りはないと思いたくなる程度には、支出項目の中で断トツで計上されており、その次が学び直しで支払っている学費と、7月末では住居費や食費よりも高く付いているだけでなく、この2項目だけで支出全体の実に5割を占める。

 よくマスメディアで若者の〇〇離れと、いかにもシルバーデモクラシー万歳な特集が組まれているらしいが、どう考えても重税で可処分所得が減少の一途を辿っており、8050問題とか、9060問題の数字からも想像に難くないが、親からの遺産を50代、60代になって相続したところで、相続する側も高齢者予備軍なのだから、若者にお金がまわらない社会構造となっている。

 結果として、教育ローンと税金で困窮している若者が、資産と年金で大して暮らしに困っていない高齢者を支える歪な状態で、安全圏から〇〇離れとはけしからん、私が若い時は〜と説教を垂らすのは、現に恩恵を多分に受けている年金と医療費は、誰の犠牲によって成り立っているのかを理解しておらず筋違いも甚だしい。

 だからこそ、個人的には世代間扶養、賦課方式で富を再分配するのではなく、世代内で所得の多い者から少ない者へ再分配した方が、世代間格差が生じない分、まだマシだと思ってしまう。

 少子化対策の財源を現役世代しか支払わない社会保険料から捻出するのなら、年金、医療費の財源は若い時に恵まれていた時代を過ごしたであろう、高齢者間で是非とも捻出して頂きたいし、それが筋ではないだろうか。

現役世代の大半は税金に関して無頓着。

 国民負担率の計算そのものは懐疑的なスタンスではあるものの、少なくとも給与所得の2割が税金と社会保険料に消え、残り8割の可処分所得の中から、消費税諸々が徴収されている訳だから、収入の5割とはいかずとも、ざっくり3割程度は直接税、間接税含め負担しているだろう。

 しかもその社会保険料も労使折半で半額負担して貰えてラッキーではなく、経理の会計処理では会社負担分の社会保険料も人件費として計上しているため、本来ならば給与として貰える筈のお金が、見えない形で社会保険料に消えていると捉えるのが妥当だろう。

 仮に年収400万円であれば、なんだかんだで毎月10万円、国や地方自治体の財源を負担している計算である。民主主義社会である以上、この10万円がまるまるゼロにはならないものの、もし政府や行政が無駄なコストを省き、5万円になったら?パンピーの家計のやりくりの比ではない程度には助かるだろう。

 だからこそ、税金の使われ方が適切であるか否かを、国民一人ひとりが監視して然るべきだし、税法上、減税措置となるものは確定申告で取り戻せる程度のリテラシーが必要だ。

 金融教育が義務化された最近の高校生は教材を眺める過程で、重要性に気付くかも分からないが、少なくとも教える側に位置する教員含め、現役世代の大半は税金に関して無頓着で、ただただ額面だけ見て高いと嘆くだけで、何の税がいくら取られているのか?算出根拠は何か?と自分の給与明細を元に深掘りする人は少数派である。

仕組みを知ると労働意欲が削がれる社会。

 別に税理士試験に受かるレベルの税法を理解するべきと主張したいわけではない。実学として、自分に関係するものだけを掻い摘んで理解するだけでも、見える景色や税金に対する向き合い方が良い意味で変わるから、知らないよりは知っておいた方が良いと思うからこそ、こうして記している。

 税金には一定の条件を満たす人に所得や税額を「控除」する特典のようなものが存在するが、この控除の種類を知るだけでも、政府が国民に対してどのような行動を取ってもらいたくて減税しているのかが、ぼんやりと理解でき、自分はそれに乗っかるべきなのか、距離を置くべきなのかを価値尺度に従って判断すれば良い。

 日本に限った話ではないが、富が富を生む資本主義と、弱者救済の民主主義のハイブリッドな社会は、水と油のような関係である以上、どこかに制度上の歪みが出てしまう側面を持ち合わせている。

 つまり、税法をハックすることで、資本を有しながらも社会的には経済弱者の立ち位置で、合法的に税金を免除若しくは減免されるにも関わらず、便益を手厚く受けるフリーライダー的な生き方は、可能か不可能かで記せば可能である。

 長期目線ではただ乗りが蔓延した共同体は崩壊するのが定説だから、決してスマートな手法ではないものの、大した学歴も職歴も持ち合わせておらず、海外で活躍できるような優秀さを持ち合わせていない自覚がある身としては福音であり、タイタニック号同然の日本社会において賢しい選択となってしまう。

 官僚が自分たちに都合の良いように社会の仕組みを構築した結果として、大衆の労働意欲を削ぐ形となってしまった現状は皮肉そのもので、如何なものかとは思う。


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