れいわ新選組はあえて自民党の積極財政派の小選挙区に候補者を擁立せよ~自民党の積極財政派を比例復活させることで消費税廃止の実現へ~

 私は今年の3月から「池戸万作の所得倍増計画」という毎月500円のオンラインサロンをスタートして、毎週末の金曜日or土曜日の夜10時からオンラインミーティングをおこなっています。そのミーティングの際に、れいわ新選組は小選挙区に候補者を擁立するならば、どこの小選挙区が良いですか?というご質問を頂きました。

 今回はそのご質問の回答をnote上に無料で公開することで、この考え方を世に広めたいとも思い、記事を執筆しました。

 結論から先に書くと、タイトルにもある通り、「れいわ新選組はあえて自民党の積極財政派の小選挙区に候補者を擁立せよ」になります。
 無論、立憲民主党の緊縮財政派の小選挙区にも候補者を擁立して、立憲民主党から緊縮財政派を淘汰させるのが、れいわ新選組の政治的な役割だとも思いますが、積極財政を実現したければ、あえて自民党の積極財政派の選挙区にも候補者を擁立することが、実は有益なのです。
 しかし、同じ積極財政派同士で戦ったら、積極財政派の票が割れてしまって、双方が落選してしまうのでは?と思った人も多いかと思いますが、実は小選挙区の票というのは、そのような基準では決まりません。

1.小選挙区は右側チームと左側チーム内で票が動く

 この立花孝志NHKから国民を守る党党首の衆議院議員総選挙解説の動画を見て頂きたいのですが、基本的に衆議院議員の総選挙は政治左派チームと政治右派チームの戦いであり、同じチーム同士で小選挙区で競合すれば、お互いのチーム内で票を奪い合う関係となります。そうなると、反対側のチームにいる候補者の方が有利となる選挙制度なのです。

次回総選挙 自民党が立憲民主党に選挙負ける理由【政権交代がおこってしまう】

 立花孝志党首は動画の中で左右のチームを以下の通りに分類しています。

右側チーム・・・自民党、公明党、日本維新の会、参政党、日本保守党
左側チーム・・・立憲民主党、共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党

 国民民主党を左側チームに分類するのかは意見が分かれるところだと思いますが、私も立花孝志党首と同じように、最終的には立憲民主党と選挙協力、少なくとも棲み分けは行うであろうと見ています。その方が小選挙区で国民民主党の候補者が勝つためには合理的だからです。
 一方で、日本維新の会は自民党と同じ右チームに分類されるので、立憲民主党ではなく自民党の票の方をより多く奪うと考えられるのです。これは立花孝志党首の指摘通りだと私も思います。
 良く立憲民主党と日本維新の会の候補者調整を主張する人達がいますが(例.小沢一郎元民主党代表、野田佳彦元首相、橋下徹元大阪府知事、泉房穂前明石市長など)、日本維新の会は立憲民主党より、自民党の票を奪うのですから、立憲民主党の候補者からすれば、日本維新の会に候補者を擁立してもらった方がより選挙で有利に働きます。
 よって、立憲民主党は日本維新の会との候補者調整は一切不要であり、むしろ右側チームの維新には全選挙区で候補者を擁立してもらって、右側チームの票を自民党と奪い合ってもらった方が立憲民主党には好都合なのです。候補者調整を主張する人達は、この小選挙区における右側チームと左側チームの区分を理解していない人達と言えるでしょう。
 次回の衆議院議員選挙で自民党の苦戦が予想される理由も、いわゆる「政治とカネ」の問題だけでなく、同じ右側チームから日本維新の会、参政党、更には日本保守党が小選挙区に候補者を擁立して、右側チームの票が割れる可能性があるからです。対して、左側チームは立憲民主党に候補者を一本化すれば、小選挙区で当選する可能性が高まり、立憲民主党の議席数が大幅に増え、政権交代の可能性まで生まれるわけです。
 以上のように、各政党の票は右側チームと左側チームの間で動くという選挙における基本的な知識を頭に入れた上で、次はれいわ新選組が取るべき小選挙区での候補者擁立戦略について考えてみましょう。

2.れいわ新選組は左側チームに属して立憲民主党の票を奪う

 先ほど示した通り、れいわ新選組は左側チームに属します。これに対して、れいわ新選組こそ真の保守政党だと主張される方もいるかもしれませんが、あくまでも選挙分析上では左側チームに分類されます。小選挙区において、れいわ新選組の候補者は立憲民主党や共産党の票を取って行きます。一方で、自民党支持層の票はほとんど取れません。自民党支持層で、れいわ新選組に投票するのはほんの数%に留まるのです。
 よって、小選挙区にれいわ新選組の候補者が立候補しても、自民党の票にはほとんど影響を及ぼさないことになります。例え自民党の候補者がれいわ新選組と同じ積極財政を主張している候補者であっても、れいわ新選組の候補者にはほとんど票を奪われないと考えるのが妥当なのです。れいわ新選組が小選挙区に候補者を擁立した場合、影響が及ぶのは例え緊縮財政派であっても立憲民主党の候補者の方になるのです。むしろ、立憲民主党の候補者が緊縮財政派である方がより大きな影響を及ぼすでしょう。だからこそ、れいわ新選組は立憲民主党の緊縮財政派のところに候補者を擁立すべきというのが第一になります。
 以上の点を踏まえた上で、より考察を深めていきましょう。ここからがいよいよ一見すると謎の思える私の論理の本題になります。

3.次回衆議院総選挙で自民党の積極財政派は壊滅の危機

 まず、大前提の知識として、自民党内における積極財政派は2012年に安倍晋三元首相が再び政権に返り咲いた時に初当選を果たした人達が多いのです。いわゆる「アベノミクス」という政策を打ち出したことにより、自分も議員バッジを付けることが出来た人達です。だからこそ、彼らからすれば未完のアベノミクスを何としてもやり遂げたいという意志はあるのでしょう。それ自体は自民党に批判的な私からしても素晴らしいことだと思います。
 それで、その2012年で初当選した自民党積極財政派は次の総選挙で5期目の挑戦となるわけですが、このままでは5期目にして初めて大逆風下での総選挙を迎えることになります。そもそも、2012年の総選挙で初当選した自民党の積極財政派は、小選挙区で対戦相手となる野党候補者が強く、比例復活で何とか議席を獲得して来た人も少なくはありません。そうした選挙基盤が自民党の緊縮財政派よりも脆弱な人達が多いのです。
 なので、このまま岸田文雄首相のままで総選挙を迎えれば、次は、小選挙区当選はおろか、比例復活にも手が届かず、完全落選になる可能性が高い人達です。となれば、衆議院議員の総選挙後には、自民党の積極財政派は壊滅的な状態となることが予測されます。自民党の衆議院議員として残るのは緊縮財政派ばかりになり、より一層、自民党は緊縮財政を打ち出す政党になることが選挙後に予測されます。そうなると、仮に立憲民主党政権が樹立されたとしても、世論の空気は緊縮財政の方向に引っ張られる危険性があります。そうした空気の醸成を阻止する意味でも、れいわ新選組が自民党の積極財政派の小選挙区に候補者を擁立する意義があるのです。それは何故かについては、小選挙区比例代表並立制の特性を詳しく知っておく必要性があります。

4.衆議院議員総選挙の小選挙区比例代表並立制の特性

 まず、衆議院の小選挙区比例代表並立制とは、小選挙区に関しては全国に289ある選挙区で、トップになった候補者が小選挙区の議席を獲得する選挙制度となっています。1票でも多く取った候補者がその小選挙区での議席獲得となります。いわばトップになった人が首長となる、首長選挙と同じだと考えて頂ければ分かりやすいかと思います。
 にも関わらず、小選挙区で負けた人が何で国会議員になるの?と不思議に思う有権者がほとんどだと思いますが、それが比例代表並立制の特色です。
 比例代表並立制においては、各党の比例票数に応じて、ドント式で定数の議席が割り振られて行きます。詳しくは前回の衆議員議員総選挙前に書いたコチラの記事をご参照頂ければと思います。

 その割り振られた議席が各党の名簿順位に応じて順番に当選者が決まって行くことになります。そして、その名簿順位は自民党・立憲民主党・日本維新の会は、基本的には小選挙区の候補者が全て並立1位候補者となり、小選挙区での惜敗率の高い順に比例復活で国会議員になることが出来ます。惜敗率とは、その候補者の得票数/当選した候補者の得票数で算出され、小選挙区では接戦で負けた候補者ほど100%に近くなり、比例復活出来る可能性が高まります。逆に言えば、大差負けすれば比例復活も無く、完全落選となります。
 また、どんな岸田自民党政権が嫌われていたとしても、自民党は比例票を1500~2000万票は獲得出来るだけの基礎的な組織票がありますから、比例議席は少なくても50~60議席は次期衆議院議員選挙でも獲得出来ると考えられます。全国で11ブロックありますから、各ブロックで平均5~6議席は、自民党の候補者が比例復活出来る議席があると考えられます。

5.れいわ新選組の候補者擁立は自民党候補者の惜敗率を引き上げる

 こうした基礎知識を踏まえた上で、何故、れいわ新選組は自民党の積極財政派の候補者の小選挙区に候補者を擁立した方が良いのか考えてみましょう。例えば、自民党と立憲民主党の一騎打ちだったとすると、以下の通りになる小選挙区があったとします。

立憲民主党の候補者 15万票
自民党の候補者 10万票

 この小選挙区では、まず立憲民主党の候補者の票数の方が圧倒的に多いので、立憲民主党が議席獲得となります。対して、小選挙区で敗れた自民党の候補者の惜敗率は、10万票÷15万票≒66.7%となります。惜敗率66.7%では、恐らく自民党内でも比例復活の議席が回って来ず、この自民党の候補者は完全落選となってしまうことでしょう。

 では、この小選挙区にれいわ新選組の候補者が擁立されたら、どう変化するでしょうか?前半部分で述べた通り、れいわ新選組は左側チームに属するため、れいわ新選組の候補者は自民党候補者の票はほとんど取らず、立憲民主党の候補者の票を奪い取ることになります。
 また、れいわ新選組の候補者の小選挙区での票数は、前回の衆議員議員総選挙の結果から、概ね2~3万票程度と考えられます。すると、この小選挙区の得票数は以下のようになります。

立憲民主党の候補者 12万票
自民党の候補者 10万票
れいわ新選組の候補者 3万票

 れいわ新選組の候補者は立憲民主党の候補者から3万票を取りましたが、それでも立憲民主党の候補者は12万票もあり、この小選挙区ではトップなので、立憲民主党の候補者の当選には変わりありません。ここで変化が生じるのは、自民党の候補者の惜敗率となります。
 自民党の候補者は先ほどの例では惜敗率は66.7%でしたが、れいわ新選組が候補者を擁立した選挙区では、惜敗率が10万票÷12万票≒83.3%ということで、実に16.6%も上昇するという変化が見られました。惜敗率が83.3%であれば、自民党の比例復活枠の議席に引っ掛かる可能性も出て来ます。
 なお、比例復活はあくまでも自民党内での惜敗率争いですので、別に自民党の議席が増えるわけではありません。ただ惜敗率が高い候補者が、比例復活した自民党の国会議員として、バッジを付けることになるだけです。
 だから、自民党の国会議員としてバッジを付けてもらうならば、緊縮財政派よりも積極財政派の方がれいわ新選組にとっても好都合というのが、今回の選挙戦略の狙いとなります。
 つまりは、自民党大敗が予想される次回の衆議院議員総選挙においては、小選挙区に候補者擁立で立憲民主党の票を奪う機能を持つれいわ新選組は自民党内の惜敗率争いを操作することが出来てしまうのです!
 ちなみに、これが逆に自民党に追い風の選挙であれば、単に立憲民主党の候補者が落選するだけなので、意味はありません。そういった選挙においては、逆にれいわ新選組は立憲民主党の緊縮財政派を落選させる機能も持ち合わせているとは言えます。

6.自民党の積極財政派の小選挙区におけるれいわ新選組の候補者擁立は”三方よし”

 以上が、れいわ新選組が小選挙区に候補者を擁立する意義となります。ちなみに、この場合ですと、選挙区全体の票数は25万票で、れいわ新選組の得票数は3万票ですので、3万票÷25万票=12%で、れいわ新選組は小選挙区での供託金300万円も返って来ることになり(得票率が10%を超えると供託金は返還となります)、選挙区での獲得票数は1票につき70~80円程度、毎年の政党助成金として跳ね返って来ますので、3万票×80円=240万円を次の衆議院総選挙まで毎年受け取ることが出来ます。
 しかも、こういう立憲民主党の候補者が強い選挙区であれば、左側チーム票もそれなりに多いリベラル地盤となりますので、得票率も高まる期待も持てます。結局、この選挙区は、

・立憲民主党からすれば、候補者が当選した良い選挙区。
・自民党からすれば、候補者の惜敗率が高まって、何とか比例復活は出来た選挙区。
・れいわ新選組からすれば、得票率10%達成で、供託金も返還出来た選挙区。

 ということで、立憲民主党も自民党もれいわ新選組も、全ての政党が得をした選挙区となるわけです。つまりは、自民党の積極財政派の小選挙区に、れいわ新選組が候補者を擁立すれば、一挙両得どころか一挙三得にまでなるのです。三方よしの小選挙区と言えるでしょう。

7.記事のまとめ

 最後に今回の内容を簡潔にまとめておきたいと思います。

・小選挙区制は左側チームと右側チーム内で票を取り合う制度。
・れいわ新選組の候補者擁立は自民党の票は奪わず、立憲民主党の票を奪う。
・自民党の積極財政派は選挙地盤が弱い。大逆風下では完全落選で、自民党内の積極財政派は壊滅の危機。
・基本的に政党内の比例復活の議席は小選挙区での惜敗率が高い順に決定される。
・れいわ新選組の候補者擁立は自民党内の惜敗率争いをコントロールすることが出来る。
・よって、れいわ新選組の候補者擁立で自民党の積極財政派を党内に残すことが可能となる。

 こうした小選挙区比例代表並立制の仕組みを理解出来れば、より多くの積極財政派を国会議員として送り込むことが出来るのです。そうすれば、れいわ新選組の政策の一丁目一番地である「消費税廃止(減税)」の政治的実現もより近付くのです。是非、こういった小選挙区比例代表並立制の仕組みを活かした選挙戦略を、積極財政を党是とする、れいわ新選組には取って頂きたいと思う次第です。

 最後に宣伝にはなりますが、こんな感じで、私のオンラインサロンでは毎月500円の会費で経済財政の知識を身に付けるだけでなく、積極財政を政治的に実現するための道筋や選挙戦略についても詳しく考察しており、選挙に関するデータも取り上げています。
 また、毎週末のオンラインミーティングでは、私に直接質問することも出来ますので、もし宜しければ、ご支援も兼ねてご入会頂けますと幸いです。ご入会は下記のページから出来ますので、何卒、宜しくお願い致します。

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