好きなものだけを語って
オバハンを4体、一ヶ所に集めるとそれはまあうるさい。
オッサンを4匹連れてきても不機嫌そうにクッチャクッチャ舌を鳴らしながら互いには一瞥もくれずに競馬新聞を読み耽るだけだが、おばさんを集めると連鎖反応が生まれる。マジでうるさい。
先々週に松本から東京へ向かう特急は酷かった。何がひどいかって四婆の囀りよ🐦🐦🐦🐦
普段は劣悪な環境の高速バスで移動している身なので、久々にゆとりのある席、少ないロードノイズの指定席に乗れてさあ寝るぞぉ😴って体制を整えた俺の耳にぶち込まれるのは年配の女性の話し声だった。、
「あ、あとこの前アレしたら美味しかったんよお?」
「聞いてみたら生姜と一緒に煮込むのがコツなんでしてね」
「生姜と言ったらこの前、、、」
ずーっと。延々と。「この前食べて美味しかったもの&それの作り方」について爆音で語る集団ありけり。
しかもおかしいんだ。2人がけシートの車両なのに4人での会話が成立している。
怖くて声のする方向を覗いたら席がクルンッって回って4人がけのボックス席になってた。
ババアの席だけ。
5年使ってるけどそんな機能知らなかったよ。
まあとにかく、4人の貴婦人がずーっとずーっとずーっと煮物に隠し味に生姜を入れたことやら山菜のあくぬきのことやら何かに蜂蜜を入れるとまろやかになるやらずーっとずーっとずーっと美味しいものについて語っていた。
いや、語ってはないなかった。
4人とも相手の話は一切聞かず自分の思い出した「美味しかったエピソード」を押し付け合っていた。
会話のキャッチボールなんて健全なものではない、それはまさしくバトルドームだった。
生姜をババアのゴールにシューーウウ!!
ほぼ満員の車内だったが、四婦人以外に会話をするものはいない。
ババアは無差別かつ一方的に他の乗客の鼓膜へ山菜や蜂蜜をシューー!!していたのだ。
まあ地獄だった。
そして怖かった。歳をとっても美味しさへの執着から逃れなられないことがだ。
私は食事は毎食毎食がおいしい必要はないと思っている。何時にいちど美味しければ良い、必要な栄養さえ取れれば問題ない。そう思ってはいても、おいしそうなものを選んでしまう。自分にがっかりしていた。加齢ともにグルメ欲のようなものは落ち着いてくると思っていた。
そんな事は無いことをババァどもが証明していた。
まぁしかし羨ましくもある。
自分の好きなものをこんなマシンガンのごとく乱射できることにだ。なかなかできないよ、ポジティブなマシンガントークは。
私も「その場にいない人の悪口」だったら夫人たちのごとく乱射できるだろうが、いいところがあったら1つも出てこないだろう。5分ぐらい迷って、……ええと、優しいところ。って答えるのが限界だろう。
それぐらい、プラスの言葉を無尽に吐き出すのは難しい。真似しようと思ってもできない。
そう、ババアのバトルドームは素人には手の出せない手練れのみが参戦可能な戦場だったのだ。
俺も語るなら好きなものについて話すべきなんだ。
おわり
この部分がビビッと来て大好きな歌詞なんだが、まさか5年後に米津玄師にパクらオマージュされるとは誰も思うまい。
ま、まあ米津玄師はピープル好きなの公言してるからね、影響受けてるんだろうね。
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