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チワワ

 ça va!? 元気かい?

 私はね、今週末に予定している名古屋への遠征へ向けてホテルを取ったし、特急の席を予約してゴールデンウィークに向けて準備万端だ。

 わざわざ名古屋へ何をしに行くかというと、THE1975の来日公演を観に行くのだ。

 THE1975。

 全英ヒットチャート1位常連で2010年代以降のシーンを牽引する大物バンド、彼らこそが世界的に衰退しつつあるバンドカルチャーの救世主と言っても過言のない、バンド界隈の超大スターだ。

 私も去年から、一般的に集客が難しいとされるから取りやすい名古屋公演のチケットを握りしめてその日を今か今かと待っていたのだ。

 だが、


 ヤツは“やってくれた”、やりやがった。

 2023/2/10に収録された、イギリスのコメディアンたちによるポッドキャスト『The Adam Friedland Show』に出演したメンバーのMatthew Healy(以降は摩周)が日本人を侮辱したとして炎上したのだ。

 まあ詳しい話は調べてほしいが、燃えたよ!って説明だけだと極端だし不公平なので補足しておくと、番組内で摩周が積極的に日本人をバカにしたわけでない。日本人を(だけでなく実際はハワイ人の方言や女性の月経も)茶化したのは司会者であり、摩周はその場にいて同調していたにすぎない。そして日本をフォローしたような発言もしてはいる。主犯はあくまで司会者だ。

 でもまあしかし、好意的には見れない。

 というか見てはいけないと思う。どころか、もっと我々は怒るべきなのだと思う。しかも日本人だけでなく他の地域やルーツの人々もコケにされたのだ、なおさら批判されなくてはならない。

 しかし元々素行不良気味でメンヘラの炎上常連男であることや、(バンドシーンが衰退してることもあってか)有名人ではあるが、世界でダントツで知名度のあるスターではないこともあってか、ポッドキャストの燃え具合はなんとも中途半端だ。界隈の反応は「またかー」って感じ。

 しかし私は大いに打撃を受けた。なんて酷いんだと。しかも炎上後に発言の謝罪も撤回もないので、私の脳裏によぎったのは“いかない”という選択だ。

 買ったけど行かない。キャンセルする。参加しないことで態度で示す。

 これも一つの正解だと思う。

 我々(大雑把で申し訳ないが)日本人は、島国で(あくまで傾向として)単一民族国家であるゆえに差別を受けることがあまりない。ニュースや歴史の授業等で差別や偏見のエピソードを目にし、「へー大変なんだなあ」程度の受け止め方しかできていない。それが悪であることもわかってるし、許せないが実感は伴ってはいないと思う。自分もそうだ。

 しかし、複数の文化や人種の交わる場所では私の生まれるずっと前からこういった理不尽に立ち向かう人々は存在していたわけだし、当事者でなくてもそれらに心動かされて考えを変えてきた人々もいる。その物語の知識はある。

 そもそも我々が無自覚に加害者になってしまう状況だってたくさんあるし。

 だから行かないことでNOを示すのも一つの選択肢だ。オオカミのように孤高の道をゆくのも正しいと考える。

 私も2月時点ではそのつもりだったんだが、恐ろしいもので、2ヶ月経ってしまうとだんだん怒りが薄れてしまうのだ。

 怒りを覚えたのがその一回で、日常的な苦しみがないと人はなかなか覚えていられない。怒りや反骨心の鮮度を保つのは難しい。だってそれ自体が苦しいんだからさっさと放り投げてしまったほうが生きやすいから。

 だから日が経つにつれて「せっかくチケット代払ったんだから」だとか「それはそうとして新譜の曲を生で聴けるチャンス」だとか「音楽に罪はない」だとか。

 私の中のオオカミは日に日に体躯が衰え今ではチワワのようだ。(まるで数年前のカロ藤浩次)

 だから、人前でおねしょしろ💢だとか、先生をお母さんと呼び間違えろ💢だとか、小型犬に噛まれろ💢だとか、しょぼい呪詛を安全な長野の山の中から英国へ送ることしかできない。

 そう、まるで飼い主の腕に抱かれながら威嚇するチワワのように。

 そして4月にも入ると愚かな発想に至る。

 そもそもの話、
 艹
 央国人が紳士なわけがないだろう!


 ゲフンゲフン

 うん、これはただの私個人の偏見だ。それに酷い決めつけ。

 個人と国家を一緒くたにしてしまっている。この思考は明確に間違いだ。そしてこれは別の視点につながる。

 今の私は摩周個人とバンド自体を一緒くたにして考えてしまっている。

 重要な話、摩周のポッドキャストは勿論クソだが、他のメンバーは参加していない。そう、私は摩周がギターボーカルで目立つから彼≒バンドみたいに認識してしまっているが、個人とチームは別人格だ。摩周が気に入らないからバンド全体をキャンセルするのも極端な話ではある。

 とはいえ、やっぱ一番目立つやつがその団体のイメージを背負うのもまた真実。

 はあ、俺はどうしたいい?

 このモヤモヤをいったいどうしたらいい?

 消化不良のまま、ホテルと電車を取り今に至る。せっかくだからいくけど。何が最良なのかは分かっていないし、結論なんて出るものではない。

 だから、何も伝わる文章でもないけれど、今思ったことを直感通りに文章にしてみたんだ。(デリケートな話で危ういから浅い話しかできないのはすまない)

 どうせ楽しむけど差別は容認しないし、この野郎!って思うけど曲は聴く。矛盾。

 いじめをするヤツは外でゴミを拾おうがクソ野郎だし、行為者がクソ野郎であろうとゴミ拾い自体は善行だしね。うん、悩むよ。


 ちなみにこれはウチの犬。
 (情けない動物の例えに人様の犬は使えまい)

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