『五匹の子豚』アガサ・クリスティー


クリスティーはほんとにキャラ造形が魅力的。通り一遍のキャラしか描けないという批判もあるようだが、そういう意味じゃマンガ的なのかもしれない。ある程度記号的でありながらなお印象的な人物達。


16年前の殺人事件の真相を解き明かしたいという依頼にまんまと乗せられるポアロ、5人の人物に話を聞き手記を書いてもらい真相に辿り着く。死んでしまった人への思いはそれぞれ違い、同じ事象が違うように見え、それが解決への手がかりにもなっている。同じ言葉なのに違う意味。人の思い込みと証言に混ぜられる嘘の境目が曖昧。記憶の中で残るのは自分の思いに過ぎないのかもしれない。


【こっからネタバレ】

  • 英語の聞き違いは日本人読者には「フェアじゃない」かもしれないけどしょうがないね。そういう意味で言ったら海外古典ミステリーってのは最初っから、あらかたの日本人読者には「フェアじゃない」。時代の常識がわからないからね。いっつも犯人当てなんか最初から放棄して読んでるよ。

  • 「セーターを取りに行く」のが3回くらい出てきて混乱した。いい目眩まし。

  • 「今日はどれもいやな味がする」空き瓶どうなったのかな?

  • 記録と記憶の食い違い、私が見つけたのは、事件前日の居間での大ゲンカ後でのフィリップ・ブレイクの行動のみ。他にもあったのかな。

  • 思い出ってのは人の生き方に依拠するのだな、と思った。同じ場所に居てもそれぞれの心の中に残るものは違って、みんな違うものを見ながら同じものを見たって信じて死んでいく、いいじゃないか。



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