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Vol.29 都市機能の分散とは?(中学生編)

先日、ある中学校の先生から、このような質問がありました。

「東京への人口の一極集中による都市の過密状況を是正するために、さいたま新都心のような近隣県への都市機能の分散について授業で取り上げました。でも、生徒にはピンとくることがなかったようで、どれだけ理解してくれたのか・・・。実際にさいたま新都心で働いていることでお気づきの点はありますか?」、と。

なかなか難しい問題ですね。

一般的には、都市機能の集中により、自然災害や疫病・テロなどの被害が起こった際に、都市に機能が一極集中していると、一気に事業の継続が不可能になる、また交通の混雑、物価高などの問題が挙げられるのではないでしょうか?

でも、これをそのまま伝えても、なかなか中学生には理解しづらい問題ではないかと思い、少しでも自分事化してもらえるようなデータをRESASを中心に探してみました。

<物価について>

では、まずは物価について見ていきます。

【土地の取引価格(取引面積㎡あたり)】

出典:国土交通省「土地総合情報システム 不動産取引各情報」

このグラフは、㎡あたりの住宅地の土地取引価格になりますが、「埼玉」「千葉」「神奈川」の近隣県と比較しても「東京」の住宅地の取引価格が圧倒的に高いことが分かります。

【消費の傾向(POSデータ)】

こちらのデータは、地域のスーパー、ドラッグストアのレジのPOSデータを基に、「化粧品」「日用雑貨」「生鮮・惣菜」「加工食品」「菓子類」の購入単価(商品分類別)となります。

出典:True Date by 株式会社True Date

これを見ると、全ての項目において東京の購入単価が、近隣県よりも高くなっていることが分かります。

先に見た土地の取引価格も、今回の商品の購入単価もそうですが、これら金額は当然ですが、需要と供給のバランスにより成り立っています。
つまり、人が多くいることにより、これら物価高が起きていることは間違いありませんよ

厚生労働省が発表している「令和3年度地域別最低賃金改定状況」によりますと「東京:1,04円」「埼玉:956円」「千葉:953円」「神奈川:1,040円」となっており、東京が一番高くなっておりますが、住宅土地の取引価格を見てみても、2番目の神奈川の2倍以上、一番安い千葉に関しては、約6倍もの開きがあり、物価高による生活は厳しいことが想定されるのではないでしょうか?

<通勤について>

では、次に「東京」「埼玉」「千葉」「神奈川」における通勤状況を見てみたいと思います。

【通勤者の流入者数・流出者数の地域別構成割合(東京都)】

出典:総務省「国勢調査」

これを見ると、「埼玉」「千葉」「神奈川」から240万人以上と非常に多くの方が、東京都内に働きに来ていることが分かります。
京都府の人口が、約250万人なので、京都府の全員が東京都内に一挙になだれ込む感じですね。そう考えると凄いですよね。

また、逆に東京都から埼玉、千葉、神奈川に通勤している人も約40万人いますので、この4県の中で、毎朝毎晩280万人くらいの方々が、通勤による移動が発生していることになります。

この移動コストなるものは、どれだけになるのでしょうか?

【家計を主に支える者の通勤時間】

では、次に、上記で見てきた「東京」「埼玉」「千葉」「神奈川」における家計を主に支える者の通勤時間について見てみたいと思います。
※構成割合が20%以上のところを赤字にしてあります

出典:e-stat「平成30年度住宅・土地統計調査」

こちらを見ると、全国平均では、30分未満の通勤時間の方々で56%以上を占めていますが、今回調査している関東圏内4県に関しては、30分~1時間30分未満の層に多くいることが分かります。

更に、構成割合こそ5%台となっておりますが、1時間30分~2時間未満の層に関しては、全国平均の倍以上の構成割合となっており、通勤による負担が大きいことが分かります。
通勤時間の中位数で見ても、全国では「26.8分」となっておりますが、関東圏内4県は40分以上かかっています。

【1日当たりの通勤等の時間(2016年)×合計特殊出生率(総数)(2019年)】

最後に通勤時間と合計特殊出生率との関係性について見てみたいと思います。

出典:厚生労働省「人口動態調査」、総務省「国勢調査」

このグラフは、1日当たりの通勤等の時間(X軸)が長くなると、合計特殊出生率(Y軸)が低下する傾向があることを示しています。

全国平均の1日当たりの通勤等の時間(2016年)は「70.30」、合計特殊出生率は「1.45」(2019年)でしたが、関東圏内4県は、1日当たりの通勤等の時間は、一番短い東京でも「97.00」、それ以外の県は「100」以上となっております。

そして、それに伴う形で、合計特殊出生率は「1.30」以下になっており、やはり全国平均よりも大幅に低い値になっております。

<まとめ>

今回は、ある中学校の先生の質問から、生徒さんに対して「東京への人口の一極集中による都市の過密状況を是正するために、近隣県への都市機能の分散について」を説明する際に使えるのではないかというデータを、私なりに探してきたつもりです。

物価については、土地の価格やPOSデータによる消費購入単価について、近隣県との比較について見てみました。

通勤については、どこからどこへ人がどのくらい移動しているのか、また、その移動時間や、その移動時間が、合計特殊出生率にどのように影響しているのかを見てみました。

出来るだけ中学生の生徒さんでも興味を持ってもらえるような資料を用意したつもりでしたが、実際はどうなんでしょうか?
もし、お子さんや、ご家族等で、中学生や高校生の方がいらっしゃいましたら聞いてみて下さい。
私も、息子と娘に聞いてみようと思います

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