エシカルは深まっていく[Footwork &Network vol.27]
はじめに
最近のエシカル
「倫理的な」という意味を持つ形容詞「エシカル」。商品の購入や社会的活動など、様々な場面で聞くようになりました。ゼミ内でも、鎌倉フィールドワークにてエシカルショップのプロデューサの方にお話を聞いたり、ゼミ生同士で意見を交換し合ったり。次第に、諸手を挙げて賛同するよりも、そもそも私の理解・共感レベルってどのくらいなんだ、この場合のエシカルはどんな文脈なんだろうなぁと商品ラベルをチラ見する、というような癖がつきました。
今回は、昨年12月から少しずつ通っている「Rinne.bar(リンネバー)」についての記事にしようと決めました。
お気に入りのお店
あらためてRinne.barを紹介
Rinne.barは、私が通いお世話になっている東京都台東区小島に所在するお店です。
アップサイクルとは、本来はゴミとして捨てられるはずの不用品や廃棄物に別の価値を与えて、新しい製品に生まれ変わらせる、アップグレードすることを指す言葉で、創造的再利用とも言われます。「再」が表すように、店名の「Rinne」には仏教用語の「輪廻」の意味が込められているそうで、ものづくりメニューを通してモノが輪廻する(循環する)瞬間を体験できます。このように、コンセプトを大切にした、とても大好きなお店です。持ち物要らずなので、ぜひ一度図工の時間のような気持ちで楽しんでみてください。
(現在、周辺地域を対象に「下町そぞろめぐりスタンプラリー」が開催されているので、そちらも併せると楽しいと思います。2025年1月31日まで。)
前回執筆したF&Nでは、店員の一人であるちひろさんという方を紹介しました。その記事では、「「環境にいいことを」「SDGs」などとけしかけられるから頑張るのではなく、なぜやるのか、どのように・どのくらいやるのか、自分の暮らしに対して何らかの思いを抱く。」ことから始めてみようとまとめてみました。今回の記事では、私の中で一段階深まったものを綴ってみようと思います。
素材とコミュニティ、RINNE CLUB
2024年4月6日(土)、「RINNE CLUB(リンネクラブ)」が始動しました。RINNE CLUBとは、Rinne.barのサポーター(お手伝いをする仲間たち、ファンのような方々です)が集い会話しながら、全国から寄付で届く素材の整理や仕分けを行います。基本的に、月一度の土曜日13:00〜開催されています。第一回目には、アップサイクルに関心を持つ高校生、同じ大学の他学部生、退職して島への移住を控えた方など、5〜6人が集合しました。
全国から届く素材というのは、例えば手芸を趣味にしていた方が収集したビーズ、色糸、華やかなデザインの釦。はたまた、不要になった持ち物の有効活用を望む方が、和服を生地として送ってくださったりもします。
二人目の嬉しい出会い
次に、店員のあかりさんを紹介します。あかりさんは、ちひろさんの大学生時の同級生だそうで、「SDGsマガジン ソトコト」でRinne.barの記事を発見したあかりさんがちひろさんを誘い二人で来店、その後インターンを開始し今に至ったという経緯だそうです。普段からもお着物の着付けを続けられていて、お店では和装姿で会うこともあります。
インターン期間中には、米国ポートランド(アップサイクルの取り組みが盛んな地域)やマレーシアに研修・留学していた経験があるらしく、そのお話ももっと引き出せたらなと思っています!
RINNE CLUB始動前のある日、素材について色々と教えていただく場面がありました。寄付元である方々「Rinne Mothers(リンネマザーズ)」から送られてくる段ボール箱いっぱいの素材を実際に見せてもらうと、それらは色/大きさ/種類等によって丁寧に仕分けた上で梱包されていました。お手紙が添えられていることもあるそうです。どのような背景を持った素材なのか、どんな想いで送るのかなど、とても気持ちがこもったものです。 Rinne.barではそれらの詳細情報を帳面に記録しているようで、それを開きながら素材を一緒に見つめました。
そして、その想いがものづくりを通じて伝播することを目指して、どんなものづくりメニューを展開しようか、取り組みをしようか考えるのだそうです。
私はいつも、あかりさんはそういった想いをしっかり受け取めているのだな、と感じます。何故そう感じるかというと、あかりさんご自身が温度を持った言葉で私に色々なことを説明して伝えようとしてくれることが分かるからです。だから、アップサイクルやクリエイティブの世界と繋いでくれるような方です。私もしっかり伝播された一人なのでした。
根底を支える考え方
また、Rinne.barでは、「三方良し」という考え方を大切にしているそうです。Rinne.barに関わる主に三つの主体、①素材の寄付元である「リンネマザーズ」、②来店してアップサイクルを楽しむ「お客さん」、③「RINNE CLUBサポーター(これは「環境」など他の主体に置き換えても◎)」の皆が嬉しくなれる、笑顔になれる繋がりを生むことを目指しているのだと教わりました。
例えば、デザインを重視した小物を作ることを追求し過ぎてしまうと、それはもはや芸術の分野になってしまい、素材を存分に活かすことやお客さんが楽しめることが二の次になってしまいます。それは望ましい三角形ではないということです。
さらに言えば、お客さんへ一途になりすぎてしまうと、RINNE CLUBのコミュニティに楽しさが欠けてしまうということでもあるのだと思います。つまり、「どれも大事にしていこう」というサステナブルを感じる考え方がこの「三方良し」なのです。
加えて、「クリエイティブ・コンフィデンス」という概念も教わりました。日本語訳をすると「自分の創造力に自信を持つこと」。日々、正解や最適解を求められると、「こうしたい」という率直な思いに躊躇してしまう。しかし、それに自信を持つことができれば、典型的で固定的な環境はより良く変化させることができるだろうという考え方なのだそうです。
この言葉を持ち帰って検索して、大学の講義内で知った概念の「成長的能力観」や「自己効力感」とはこれのことでもあるのかと納得でした。
深まるもの
はじめは、お客としてひとえに素敵に思えて仕方ありませんでした。素材たちは綺麗均一というわけではないけれど、光沢のある石の釦や華やかな柄、レース、色、形が溢れているので、これはどんな素材なのとよくよく見ようとし、作れないだろうかという思索タイムが生まれます。それは、ひたすら「黙々」でもあり「ワクワク」の時間でもあります。統一感・紋切り型から解放して、ものを捨てる=価値を捨てる思考停止から一歩抜け出す感覚のように思います。(↓昨年6月開催のカフェゼミ内ポストを思い出した)
また、購入と廃棄の目まぐるしい代謝に追われ、持っている=満たされているというような価値観が未だ根強い暮らしの中でその不健全さに違和感を覚えて、自分を取り巻く人・モノ・環境にやさしくあれることを求めている人って多いのだなと感じました。そして、大きなことはできずとも前向きに楽しく朗らかに、自分の行動に影響力を持たせられはしないだろうか、何かに共鳴できないだろうかと小さな志を胸で育んでいるような方が沢山いるんだなと、Rinne.barに来られるお客さんやサポーター仲間、そしてあかりさんとちひろさんたちを見ていて思いました。実際、男性や外国人のお客さんも多かったり、リンネマザーズの中には北海道から素材を送ってくれる方もいるそうです。好きで通っている自分だってその一人なのかなとも。
だからこそ、今は散在している沢山の気持ちたちが集合できて、尚且つ「不器用だから」「作るとはいっても何をすればいいのか分からない」といった戸惑いを自然と取り除ける場所って、Rinne.barってさらに素敵じゃないかと思ったのです。
はじめは、ゼミ活動の一環として社会的テーマに触れるふんわりとした動機で始めたものでした。しかし、色々眺めたりお二人の言葉を聞く・読む(ZINEも発行されています!)にしたがって実感が湧いてきたというか、ちゃんとメンバーとなりつつあるように思いました。みんなで作って認め合う「クリエイティブ・コンフィデンス」の空気につい巻き込まれていくうちに自然と主体の一人になれる。意義を見出すことや気持ちが強まることにおいては、その巻き込まれる過程の方が結果的に肝心だったなと振り返ります。
そんな反対の因果関係というか、実はもう一段階あったのだということが腑に落ちました。だから、関心外のことには可能性があるんだろうと思います。以前の自分と比較しても、やっぱり「エシカル=倫理的な」事柄たちはそういうふうに深まっていくのが、やわらかくかつ安定感があっていいなぁと思いました。
おわりに
色々なイベントも控えています!
あかりさんもちひろさんも年齢が近いお二人で、お話ししていていつもアップサイクル以上のものをもらっています。周辺のお菓子屋さんを紹介してもらい足を運んでみたり、ワインと料理のお店に行ってみる楽しみだったり。また、9月21日(土)・22日(日)に開催されるMaker Faire Tokyo2024の出店お手伝いにも声をかけていただき、準備を進めている最中です。その他、墨田区で開催されるイベントなどもあります。通い続けたい!
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