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【CM考察】ミスドの“手作り”訴求CM

今回はミスドの新作CMから考える

ミスドのCM「AIにできないことを。」が先日からO.Aされています。
昨日たまたま見かけたのですが、いろいろと考察できる題材でしたので、今回はこれを取り上げて、CMの狙いなどを考察してみたいと思います。

「お店で手作り」は某社とも被るが...

ミスドの新作CMはこちら↓です。

パッと見た印象として、「お店で手作り」の訴求に力点が置かれた、これまでのミスドにないアプローチのCM、と感じました。

そして、“外食×お店で手作り”といえば、丸亀製麺と被ってるなとも…。

↓丸亀製麺のCM

丸亀製麺は、USJにいた森岡氏の「刀」がコンサルとして入ったことで、近年の外食産業におけるV字回復事例としてよく取り上げられています。
特にこの「すべての店で、粉からつくる」ことを訴求したCMは、丸亀製麺の資源を再発掘して活用したことで、来店意欲を高めた事例です。

この事例を見て、ミスド側が「うちも手作りしてるからそれ使おう!」と考えたのかは定かではありませんが、キーメッセージは似ています。

その一方で、両社の間では「手作り」を受けての展開が異なります。

丸亀製麺
 訴求点:すべての店で粉から作る
 だから…:いつも出来たて、噛み心地がいい(=おいしい)
ミスド
 訴求点:お店で手づくりしている
 だから…:考えて、工夫して、こころを込めて(AIにできないことを) 

CMの目的として、丸亀製麺が「うまそうだ」「食べたい」という認識を獲得しようとしているのに対し、ミスドは「心温まる」「好きだ」という認識の獲得を目指しているように見えます。

ここからは個人的な見解ですが、飲食店や食品・飲料系のCMでは、いかに「うまそう…!」の認識(食欲)を掻き立てられるかが肝だと考えます。
(R-1や特茶など、機能的な食品は一部異なりますが。)

それを踏まえると、ミスドは『手づくり』の資源を十分に活かせておらず、このクリエイティブからは『食欲』に繋がらないのでは、と感じます。

このCMの本当のターゲットとは?

ここまでミスドのCMを「食欲に繋がらない」と批判的に見てきましたが、これは丸亀製麺をベンチマークとした場合の話。
少し視点を変えてみると、このCMの見え方がガラッと変わります。

それは、大きく以下の3点です。

 ①小さな子どもとその親の視点
 ②働いている従業員の視点
 ③働きたい従業員候補者の視点

まずは、①の小さな子どもと親の視点に立ってみます。

子どもとしては、たとえ画面越しでも、ドーナツが作られている「裏側」を見ることは非常にワクワクする、テンションがあがるもの。
加えて、このCMでは音楽やフォントが「プロ的」ではなく「お手伝い的」に展開されており、よりワクワク感が強まります。
また、一緒にCMを見る親としても、優しいトンマナと相まって『手づくり=安心』の印象を受け、ポジティブに記憶に残るものと思われます。

ひとつ物足りないとすれば、このCMを見ただけで満足してしまい、「店舗に行こう!」という意欲が喚起されないこと。
もし「こういう工夫をしているけど、実際にお店で確かめてみてね」というポイントがあれば、小さな子どもの来店動機(=親にとっての強い来店動機)が発生し、一気に来店まで結び付けられると思います。

次いで、②は「働く人」の視点です。

ミスドで働く人にとって、「お店で手づくり」のCMが流れることはいろいろな意味を持つと想像できます。
「自分の仕事がCMになっている」「しっかり作ろう」というポジティブな面、「品質不良などのクレームが多くなるかも」とうネガティブな面などさまざまですが、概ねポジティブな認識を持つ従業員が多いのではと推察します。

加えて、「お店で手づくりしていること」は、アルバイトを検討している人にとっても、職場を選ぶうえでの参考情報になり得ます。
これが③の「働きたい人」の視点です。

もし「ミスドは好きだがファーストフードのアルバイトに良い印象がない人」がいた場合、「お店で手づくりしている」ことを「優しい雰囲気で」伝えられたら、ミスドに対する印象は以下のように大きく変わると予想されます。

事前の認識ファーストフード=忙しい、汚い、オペレーションに支配される
事後の認識ミスド=自分で作れる、オペレーションに支配されない

そしてこれが、冒頭の「AIにできないことを」のコピーに集約されていると考えられます。

まとめ

大きく「丸亀製麺との比較」「視点を変えた考察」の2点からミスドの新作CMを見てきました。
考察した内容に加え、外食産業での近年の人材確保難なども考えると、おそらく最後の③「働きたい人」の視点が、オリエンの際には最も重視されていたのでは、と考えます。

初見ではよくないと思ったCM(少なくとも私は思いました…。)でも、実は視点を変えて考察すると腹落ちする、という事例でした。

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