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2通目 からだまるごと

典子さんへ

お変わりありませんか。『よはくや』に集った昨年秋のこと、つい最近のことのように思い出されます。

2018年に少しずつ制作を再開してから(長男出産と育児で約3年ほど制作をしていませんでした)「ふれる」ということを強く意識して手を動かしていたので、実際に触れることが難しくなっていく状況の変化に、戸惑いながらの一年でした。

オンライン展示や在廊を見送って作品だけ遠くに送り出すことがその時々の最良だと理解はしていても、どこか少し満たされない気持ちもありました。

現地に足を運ばなくても見て知ることのできるインターネットやSNSの便利さを、もちろん私も享受してはいるのですが...

9月に開催した個展は、自宅からも近いカフェが会場でした。可能な限り在廊して人の出入りする空間に身を置くと、「からだで感じること」の貴重さをこれまで以上に感じました。

時間毎で変化する光や音や空気や気配...それらは、からだまるごとで記憶するものだなぁと。

そのお店は少し歩くとすぐ目の前が海で、窓を開けると水平線が見え、波の音と街の音が聴こえました。

会期中に波打ち際まで降りて、小石拾いをしました。目の前にある小石も長い時間をかけてそこにあるということ、変わらないようで変化の途中にあるということ。拾うことで石の時間と私の時間が重なるような。そんなことをぼんやり考えながら、手に取り持ち帰りました。身近なところにおいて、時々手のひらに乗せたりしています。

典子さんは最近、からだまるごとで感じたこと、何かありますか?

章子

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