オレとそら #3「胴長短足」
オレは「兄弟で、どちらもオス犬ならば、どちらでもいいのではないか」と言った。
猫だと色や模様が違うことはよくある。どうせその程度だろうと思った。
だが、どうも事情が違うらしい。
二匹の兄弟は、一匹はどうみても「トイプードル」、もう一匹はどうみても「ミニチュアダックスフント」らしい。
どうやら風貌が全く違うようだ。
トイプードル風の犬は白色の毛でモジャモジャで顔がぺっちゃんこ、ミニチュアダックスフント風の犬は茶色の毛でストレートで顔がとんがっている。
母親が「トイプードル」、父親が「ミニチュアダックスフント」で、そのミックスだが、それぞれ親のどちらかに "振り切れている" らしい。
「え、二匹は違う種類の犬なのか?」
なるほど、胴が長くてモジャモジャで顔がぺっちゃこ、という犬は確かに見たことは無いな。
オレは勝手に納得した。
そうなると、どちらに似た犬種が良いか、ということになる。
正直、こうゆうことは苦手だ。天に任せてしまいたい、と思った。
でも、今の時代、ネットで大体のことは調べることができる。
違う種類ならば、それぞれの特性を知っておきたいと思った。
ミニチュアダックスは良く吠える、季節による毛の生え変わりがある、もともと寒い地域の犬種なので寒い所でも比較的得意、逆に暑いのはダメ、腰を痛めるので階段の上り下りはダメ、餌もこだわりがある・・・
トイプードルは、季節による毛の生え変わりは少ない、寒い所が苦手、寒暖差は苦手、階段はダメ、餌も結構細かい指定がある・・・
兄弟なのに、まったく性質が違うではないか。ネットの情報を鵜呑みにすることは良くないが、どちらも外で飼えない、病気になりやすい、餌も選ぶなど、どこかしら弱弱しい印象を受けた。
正直、どっちも手間がかかる犬だな、と感じた。
残飯が主食だった昭和の番犬とは違うのか。
その日は、答えが出なかった。
横になりながら、ふと思った。ミニチュア犬なんて、子どもの頃にはあったかなぁ・・・。オレが知っている小さい犬と言えば、そう、マルチーズ。そのあとはチワワがテレビで流行ってたような・・・。
なんなんだ、ミニチュア犬って・・・。猫サイズの犬なのか・・・。
翌日、まだ答えはでていなかった。
その日は用事で車に乗っていた。道路沿いにはいろいろなロードサイドのお店がある。その時、あるものが目に飛び込んできた。
某焼肉屋の看板のロゴ。
「1□□□」
目の錯覚か、胴が長くて脚が短い犬のように見えた。
胴長短足・・・。
宿題の回答を妻に持っていこうと思った矢先、先に口火を切られた。
「友達は白いトイプードル風の犬の方がいいななぁ、って思っているらしいけど。残った方でいい?」
オレはうなずいた。
少しにやにやしながらうなずいた。
第3話「胴長短足」
次 第4話「犬が来た」
https://note.com/repo5/n/n845005538506
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