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オレは「道端に落ちてる500円玉でありたい」そう思った

そこにあるべきものがあるべきところにあっても誰の心も動かさない。
だけどその意外性にふと心が躍る。
オレはそんな存在でありたかった。

ありふれた日常、ありふれた人々の中。
ここがオレの居場所だった。
不満はない、そう思い込んだ。

「ありふれていながら輝いていたい。」

身の程を知った自分の精一杯の強がり。
それが「強がり」ということさえオレは気づかないで。
人より少し輝いてる、それでいい、と。
こなすだけの日常を流されるまま何となく生きた。

オレは怖かっただけなのかもしれない。
「安定」という名の鳥カゴに自ら閉じこもって
「安心」を飼っていた。
怖がってることすら認められずに。

でも
鳥カゴの中でさえオレは
周りと比べて劣っちゃいけない
人に嫌われちゃいけない
嫌でも働かなきゃいけない
世間に合わせて
自分を枠にはめ続けた。

窮屈に窮屈に窮屈を極めながら
「輝きたい」
なんて我ながら笑える。
だけど
オレは知らなかったんだ。
鳥カゴの外の世界に羽ばたいてもいいということを。
それが本当は
とても簡単だという
この世の真実を。

「つまんねぇな」

ありふれた日常で困ることはない。
街を行き交う人々だって、オレと同じ。
仕事・家族・友人・恋人・・・
それなりにやって皆生きてる。
そういうもんだ。

「つまんねぇな」

食いたい物はだいたい食える。
欲しい物はそこそこ買える。
行きたいとこにはぼちぼち行ける。
まぁ、悪くない。

「つまんねぇな」

自分の頭の中を調教し続けたって
いつだって心の奥底から聞こえる声。

「つまんねぇ」

何のあてもなく
何に向かっていいかもわからず
意味も見つからず
彷徨うように生きることにイライラした。

抜け出せぬ鳥カゴを霧の中
ただただ彷徨うことに何の意味があるのだろう。

「つまんねぇな」
ぶつけるようにベースを弾いた。
弾いてる間は何もかも忘れられる。
オレがオレでいられる瞬間。

もっと寝てればいいものを
出勤までのわずかな時間も惜しんで弾く。
昨日のオレを超えられる
唯一の生きてる実感。

それさえも
「たいしたもんじゃない」
自分で自分を見限った。

このオレが
「人生を変える出逢い」
なんて使い古された言い回しを
これほど重く受け止めることになるとは思いもしなかった。

その人はいつも
オレの瞳の奥を見て
オレが泣いてる
と表現した。

でも
オレを変えたその人は
オレを変えようとはしなかった。
「道端に落ちてる500円玉でありたい」
そう望むオレの心の在り様が好きだと言った。
「ありふれることに悲観せず、ありふれていながら誰より輝ける人。」
「そこにあるだけで幸せをくれる500円玉だね。」
そう言った。

だから
オレは変われたんだ。

上手いこと取り繕われたオレだって
強がりに気づきもしないオレだって
臆病と怒りを封じ込めたオレだって
それでいいと。
心の奥底に
伝えてもらったから。

小さな一歩だったと思う。

誰にも見せたことのないベース動画。
その人になら見せる勇気が持てた。
「たいしたものじゃない」はずが。
その人にかかれば
「国民的大スター」になった。

期待じゃなく確信を持って
「あなたはスター」
と言い続けてくれた。
壁の前で立ち止まる度
リミッターを外してくれた。

オレはすべて何もかも
オレそのままでよくて。
そのままでサイコーなのだと
自分を信じられた。
究極の「自信」だった。

「圧倒的オレ感」

無敵の武器を手に入れて
SNSでベース動画を発信し続けた。
人の評価なんて
もう怖くなかった。

寝不足で傷だらけで
馬鹿みたいに真面目な自分も
サイコーだと思った。

オレがオレであって
やりたいことをやっている。
それに共鳴してくれる人達がいる。

今までに感じたことがない
喜びが心の奥底から湧いた。

「自分の価値は自分で決める」

そこにはもう
あの頃のオレはいなかった。

壁に向かって一人弾いてたベースが。
画面の向こうにはたくさんの観客がいてくれて。
今では対価までもらえてる。

ここまで
たった一年。

本当は鳥カゴなんてなかった。
そんなものはないと
自分が決めればいいだけだったんだ。

霧はスッと晴れた。
オレは今
真っ青な大空を羽ばたいてる。

こんなことあるのだろうか?
こんな簡単に?
オレを変えたその人は
オレに魔法を掛けたのだろうか?
いや
学校では教えてくれないこと。
生き方の裏技みたいなこと
寄り添って伝えてくれたんだ。

「それが私の役割だった」
とその人は笑って言った。

同じ時間軸にいるとは思えないほど
人生がサイコーに楽しくなった。
このウソみたいな体感を
あの頃のオレみたいに
言いようのない苦しさの中にいる人がいるなら
オレも本気で伝えたい
そう思った。

偉そうなことは言わない。

オレと一緒に行こう!

どうせなら
より満足のいく人生ってヤツを
思う存分やってやろうぜ!


~リプレイズプロアクションstory~




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