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不倫が自由を灯すとき

不倫相談にのりながら、所々で一般女性Sは頷き、水をたくさん飲んだ。話が盛り上がりすぎてカフェオレをおかわりして、さらに水を頂戴した。

不倫。漠然とした問題ですね。まるでドアのない部屋に閉じ込められているような。不倫相手である彼には妻子とマイホームがあって身長も高くて男前ですよね。そう、何が悲しくてあなたを困らせているのか、ええ全くもってわかりませんね。
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そんな感じで、Sはオブラートに包みながら、同調と同情を牛乳に溶かしたようなマイルドさで返答した。牛乳とレモンが分離して膠着したカタマリのようだ。この恋愛には目標地点が無いし脈もない、途方もない話を聞いているうちに睡魔が襲ってきた。お金の為にSは金曜日と土曜日の夜は関内でホステスをしていた。このことは目の前で道徳から外れてしまった彼女にも伝えていない。

一般的にしてはいけないことは一体どちらなのか不明だ。共に正月やお盆が寂しいことには変わりはない。

Sと不倫女性と不倫相手は同じ職場の同じ部署であった。Sが何もガサ入れする気はなかったのは本当だったが、好奇心からたまたま飲みの席で隣になった不倫している男性であるユキヒロさんに「最近いつセックスしましたか?」と尋ねてみた。

飲み会で、「てめぇはアホか!」とSは頭を軽く叩かれたがオチをつけるように「4日前です」とユキヒロさんは答えた。なんだ、奥さんとラブラブじゃん。全くもって意味がわからない。
その飲み会の最後のあたりでユキヒロさんが既婚なのにある女性からアプローチを受けていて本当に困っているという話になった。

コース料理の締めで鍋にうどんが投下されてもつ鍋の出汁とうどんがコテコテに煮込まれて美味しい。真実は小説より奇なりという感じだ。本当はユキヒロさんは不倫していなかったし、それをなんとなく嬉しく感じた。もう一度男という生き物を信じたくなった。


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