広島帰省だより⑤ フジグランの抹茶ソフトクリーム
カープを観るためだけに帰省していました。そのときのことを忘備録として書いています。
カープ観戦から2日後。
地元に帰ると、無性に記憶を舐めまわしたくなる。
舐め回す、というのは、言ってみれば再現だ。
幼い頃に行った場所、よく食べていたもの、遊びを、この年になってまた体験してみたくなる。
中四国ではおなじみのスーパー「フジグラン」の抹茶アイスクリームは、その筆頭にある。フジグランは中四国限定の小さなイオンモール、と思っていただけると想像がつきやすいかもしれない。食材のほか、衣料品やチェーンの雑貨屋などが入っているショッピングセンターだ。
絶品抹茶アイスクリームを販売しているのは、菓匠茶屋というお店。
お茶屋さんで、緑茶はもちろんほうじ茶など様々な茶葉の取り扱いがある。
そこに大判焼きとアイスクリームがありましてね。
ここのお店で、小さい頃によく抹茶アイスクリームを食べていました。
私がよく行く店舗はフジグランの1階に入っているのですが、この抹茶屋の香りがものすごく良い香りなのです。
抹茶の香りと、なによりほうじ茶の香り!!!
このほうじ茶の香りが、なんと1階のほぼ1/3のエリアまで広がっているのだ。ほうじ茶なんかどこにも売ってあるじゃん……と思われるかもしれないのだが、ここの茶葉の香りは一度嗅ぐと忘れられない。昔付き合っていた恋人の香水はもはや思い出せないが、ここのほうじ茶の香りは嗅ぎ当てられる自信がある。あの香りを形容するのにぴったりな言葉が見つからないのが惜しいくらいだ。
焼肉屋へ行くと、たまに通行人の食欲をそそるようないい香りを店の外に放出している店がある。ここのお茶屋もそうなんじゃないか、つまり我々はまんまと罠にハマってしまっているんじゃないかと思ってしまうくらいには、香りがはみ出ているのだ。焼肉の香りは時と場合によりけりだけど、ほうじ茶であればいつでも大歓迎。
幼い頃はここの香りを嗅ぐと無条件にソフトクリームを食べたくなっていたので、今でも染み付いている。今回の帰省でもまたこの懐かしい香りを嗅ぎに行った。
写真を撮っていないのが悔やまれるが、今回は白玉抹茶のソフトクリームを注文。なぜかというと、それにだけ八橋(焼いたほう)がトッピングされていたから。この八橋トッピングも大好きでねぇ。香ばしいほうじ茶葉と八橋のなんともいえない奥ゆかしい香りは、確実に私の幼少期を牛耳っている。申し訳ないが、京都で食べた抹茶ソフトクリームよりもこっちの方がおいしかった。
ひと口食べると、あっという間に口に広がる濃厚なお抹茶の香り。
ここのソフトクリームは甘いだけではなく、程よく苦味があるのも良い。苦味といっても小さい子が食べられるくらいだ。
その後買い物を済ませ、ホットプレートを買いに行った両親を待つまでの間、2階にある喫煙所で一服した。子どもの頃にはありえない動線だ。懐かしいソフトクリームを食べた後の一服は、背徳感も相まってより一層おいしく感じられた。
2階の広場には、客から提供されたフジグランの昔の写真がパネルで並べられていた。私の地元にあるフジグランは、私が生まれる前に小さな遊園地とプールがあったらしい。採算が合わなくなったのか今はもう無くなってしまったのだが、当時の様子を写真に撮っていた地元の人がいるらしく、それを並べて、これまでの軌跡として紹介されていた。
こういうの、とても好き。
30年前には観覧車、簡単なジェットコースターもあったらしい。馴染みの風景に見たことのない遊園地がある様子は、不思議な気分にさせた。写っている子どもたちは、皆どこで何をしているのだろう。写真の中の自分と同じくらいの年齢の子どもを育てている人もいるだろう。
極め付けは、しれっとキャンディーズの写真も掲載されていたこと。地方営業なのか、この広島西部に全盛期のキャンディーズがライブをしにやってきていたそうだ。なんだかすごい時代だ。
今は少子化なのかこのフジグランも夕方になれば早くも人がまばらになり、各テナントは入れ替わりも激しいようだった。私が小さい頃からあるお店はほとんどない。
特に2階なんかは2テナント分をむりやり1つの婦人服売り場でなんとか持っているような状況が目立ち、現に喫煙所になっている場所はもともと別のお店だったと記憶している。壁はすでに黄色っぽくなっていて、随分前に喫煙所に変わっていたことが伺えた。
私が小さい頃から変わっていないのは、おじいさんがひとりでやっている時計屋と、この時期はいつも綺麗な浴衣を売っていた着物屋さんだけだった。しょうがないことだが、やっぱり少しせつない。
家に帰ってからはおうち焼肉をすることにした。
学生時代にそこそこ値のはる焼肉店でアルバイトをしていた弟が肉のセレクトを担当した。両親が買いに行ったホットプレートはこの焼肉のためだ。
そしてリビングで思いきり焼肉。
こういうとき、長年タバコを吸っている父親が一番ニオイに敏感になるのが本当に解せない。焼肉はソファに匂いがつくとか、着替えてくるとか、ぶつぶつ言っていた。今さら何を?と思う。小さい頃からそうだった。
すると弟が卓上に焼肉のタレをこぼし、真っ先に父親が「何をしよんかいな、ほんまァ〜!」とキツめの方便でイライラしはじめた。父親はタバコ以外の匂いがつくこと、何かをこぼすことが生理的に無理なのだ。
そういえば、昔キッチンの床に牛乳パックを丸ごとひっくり返したことがあった。そのときも散々怒られた。その時は「レオニーの拭き方だと、牛乳の匂いが逆に広く床に染み込むけぇ! まずはペーパータオルで水分を染み込ませんと!!!」と怒られた。こっちは一生懸命反省して拭いてんのに、その誠意すら怒るんか!!!と思った記憶。
とそんなことがありましたが、今回は久しぶりに帰ってきている子どもに甘んじたのか、意外にも父親のイラつきはすぐに収まり、焼肉の会は穏便に終わりました。
夜はまた人生ゲームを取り出してきて、再び私が1位の億万長者でフィニッシュ。マジで現実でもそうであってくれ!!!