かんげきろく。3『はじめての繭期2020(グランギニョル、マリーゴールド)』+LILIUM※ネタバレしかない

刀ステの一斉配信の間、TLに流れてくる感想でちらほらと聞くタイトルがあった。

悲伝の悲しみに浸っていたときに、あれよりはまし、と流れてきたのが最初だったような気がする。

それが私と『TRUMP』シリーズとの出会いであり、繭期にずぶずぶと絡め取られるきっかけであった。

いきなり知らないタイトルのDVDを買うのが荷が重い、と思っていたところに、『はじめての繭期2020』による配信のお知らせ。

ハマれそうなら円盤を買おう、そう思って配信を見始めた。

とはいえTRUMPの時は用事があって見ることができず、TLの悲鳴から「これはとんでもない作品なのでは?」と思うだけだったのだが。

なので、最初に見た作品は『グランギニョル』だった。

本当にとんでもない残酷劇を見せられた。


・『グランギニョル』

シリーズの他作品を見てない当時の私にとっても中々の残酷劇であったし、シリーズを見てから内容を思い返すとさらに残酷が跳ね上がっていた。

最初は素直にOP(後からキャストパレードという言葉を知る)がかっこいいと思った。

暗闇からスポットライトで浮かび上がる人々。その照らし方は後に関わりのある人々でまとめていることに気づき、テンションが上がった。刀ステのOPは全体が明るい中、どちらかというと一人一人か全体を照らすことが多かった中、TRUMPシリーズは全体的に関わりのある二三人を暗い中から照らし出すという見せ方をしていると今でも思う。

吸血鬼の名門貴族デリコ家の当主ダリは、人間の女性スーとのスキャンダルのために謹慎させられた……と見せかけられ、失踪した子供達を探すことになる。

その失踪した繭期の子供達、キキ・オズ・アンリの三人組は敵として出てくるが彼らにも事情があり、見守りたい気分にさせてくれる子供達だった。

繭期の症状で誰も彼も愛してしまい、愛したまま殺せてしまうキキ。

予知能力に目覚めたが、何もかも僕のせいだと言ってすぐに泣くオズ。

不老不死を目指して体をいじられ、不死にはなれたが不老にはなれない死にたがりのアンリ。

彼らにはどうか生き延びて大人になってほしいと、そう思わせるところがあった。『繭期の子守唄』も素晴らしかった。

そして、フリーダ様。TLでフリーダ様が好きになるという言葉を聞き、この人が、と思って見ていたのだが、本当に美しく気高い貴婦人だった。

その最期まで妻として母として美しく、息子のラファエロを案じていた。

ダリの愛人とも見られていた人間のスーにも優しく、彼女と子供も守っていた。

なるほど、これはフォロワーさんがフリーダ様を皆好きになると言っていた理由もよくわかる女性だと思った。

ヴァンパイアハンターの春林と歌麿の二人は、イニシアチブというものに対して「こんな使い方もできるんだ」という一つの回答を見せてきた。

最初に見たときはあまりわからなかったものの、他の作品も見てきた今、あの命令がどれほど貴重で尊いものかがよくわかる。

赤子のウルは実の父に呪いの、養い父に願いのイニシアチブをかけられた。

そうして微かに残った希望も、TLの様子を見ると無惨に踏み潰されるようで、やっぱりTRUMPを見ない手はないと思わせてきた作品だった。


・LILIUM

マリーゴールドの前にぜひ、と薦められた『LILIUM』がU-NEXTで見られると知って、無料登録して見てみた。

その日に『SPECTER』を放映するのはわかっていたけれど、薦められたからには見ておきたかったし、二本見る体力は自信がなかった。

だから泣く泣く『SPECTER』を見送ったのだが、現在、キャストパレードの素晴らしさに見ておくべきだったと後悔している。

とはいえ、LILIUM自体は素晴らしい作品だった。

今もシリーズの中で一番好きだと言える。

当時のハロプロ事情を知る妹を巻き込んで二人で見た。


雨降る森のサナトリウムで、消えた少女シルベチカ。演じた彼女はこれが初めての舞台だというから驚きだ。

リリー以外はシルベチカを知らないという。『シルベチカなんて知らない!』と不気味に踊る少女達は、明るいテンションに不穏さを隠していた。

監督生のお姉様達による授業……という体裁で一曲歌われて、世界観が改めて提示される。

後になって思えばこの時にも仕込みがあったわけだが、当然気づけなかった。

妹から「この子は作詞家に転向して、この子は芸能界やめちゃって、この子は正式デビューする前にやめちゃった」と演じたハロプロの女の子達のことを聞きながら見ていると、何度も語られる「永遠に咲き続ける花なんてない」「どんな花もいつかは枯れる」「それでも私は確かに咲いた花」という言葉が、ただ吸血種の少女達を示しているのではなく、演じたアイドルの少女達自身のことを言っているようにも聞こえてくる。

明るくギャグを交えた少女達の日常と、そこから転がり落ちていく展開、そして最後の絶望まで。あっという間の時間だった。

一番好きな曲は、『共同幻想ユートピア』だ。当時の私は「ソフィー・アンダーソン」の名前が持つ重みをなんとなくしかわかっていなかったが、『TRUMP』も見た今となっては、ソフィーの狂気と変貌がただただ悲しい。永遠を拒んだ少年はどこにもなく、かつて自分が辿らされた道をリリーに辿らせる。

しかし彼は、リリーが不老不死であることを知らないのだ。

きっと今もどこかで同じようなことをして、共同幻想ユートピアを作り上げてるのだろう。

その繰り返しがいつか、クラウスを見つけて終わらせられるといいのだけれど。

あと、好きなキャラクターにカトレアがいる。

彼女はいつも退屈だ退屈だと呻き、クランを他の少女達と探検している。一気に物語を押し進めたのは、彼女達の探検がきっかけだ。

カトレアは、スノウやリリーほどはっきりしていなくても、この繰り返しに気づいていたのではないかと思っている。

もちろん繭期の症状かもしれないが、彼女はいつも退屈して刺激を欲しがっている。

もしもそれが、この永遠をうっすらと自覚しているが故のものだとしたら。

彼女は予想しうる出来事ばかりに囲まれていて、人の入れ替わりに伴う刺激にも飽きていって、リリーによって解放されて初めて退屈ではなくなったのではないだろうか。

考えすぎかもしれないけれど、こう思ってしまうことがある。


・マリーゴールド

こんな地獄があるか。

なんてことをしてくれたんだ。

LILIUMの前に見るべきと言われた理由はわかったけれど!

ダンピールの少女ガーベラと、その母の物語。

舞台全体に咲き誇るマリーゴールドの花が美しいし、そこから始まるキャストパレードはものすごく不穏だけどこれもまた美しい。

明らかにLILIUMで見た少女たちがいたと思ったら、ごりっごりにLILIUMと接続してきた!シルベチカも来た時には「ひゃっふぁあああああ!?」と叫んだ。時系列がちょっとわからなくなったけれど。

……なんて残酷なグランギニョルだろうか。マリーゴールドがLILIUMで語っていた母についての話と、アナベルの姿が全く噛み合わなかったのに。

噛み合ってしまったその時、本当になんて残酷な劇を見せてくれたんだと叫んだ。「ウル」と「ソフィ」の正体が明かされ、イニシアチブの操り人形が操られるままに恐ろしい劇を上演していく。

TRUMPを見た後に、もう一度見たいと思っているミュージカルだ。

最後にガーベラはその名を捨ててマリーゴールドとなり、彼女は永遠の繭期があるサナトリウム・クランへ入る。

ここに一筋の希望があるように見せかけてはいるが、その後に待っているのはLILIUMだ。……本当に救いがない。


すっかり沼に落ちて『デリコ・トリロジー』と『LILIUM』を買い、他の円盤もまじめに検討している。『TRUMP』も先日無事に見られたので、近いうちに感想を上げたい。

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