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投稿記事のコンセプト

私は、普段、精神科クリニックと私設のカウンセリングオフィスにて心理相談をしています。この領域で働き始めて20年が経過しました。普段の仕事は、当事者本人へのカウンセリングや保護者や学校の先生、企業の人事担当者へのコンサルテーションなどの相談業務が中心です。

ただ、これまで何千人の方から相談を受ける中で、全く同じ悩み相談を受けたことはありません。当然と言えば当然ですが、生き方、考え方は十人十色です。

悩みも考えも十人十色

例えば、同じ診断名でも、症状や問題は十人十色です。

女性に多いパニック障害。多くの方が過呼吸発作を恐れているという共通点はありますが、発作が怖くて外出できない人がいれば、逆に自宅で1人になるのを避けて外出できる人もいます。
繰り返しの儀式行為が特徴的な強迫性障害の場合でも、施錠の確認に何分も費やす人がいれば、手洗いに費やす人、「自分が悪いことをしていないか」を家族に確認することに時間を費やす人までやはり十人十色です。

このように同じ診断名でもその特徴はいろいろなのに、その上、一人ひとりの個性や考え方が合わさって、「まったく同じ内容の相談はない」と言えます。

薬に対する考え方も十人十色です。薬に対して盲目的に医師の処方を信じて、服用を続ける人たちがいれば、その対極には、服薬を一切拒否したり強く抵抗したりする人たちもいます。
精神科医療においては、長期かつ多剤処方が問題視されていますが、前者の方たちの中にな、長期間たくさんの薬を飲んでいる人たちが多くいます。
後者の方たちは、精神科医療や服薬を極端に嫌います。すぐに薬に頼るよりも望ましいことかもしれませんが、その姿勢が役立つこともあれば、足を引っ張ることもあります。

エビデンスに基づく実践

さて、話が少し変わります。

毎年、流行りすたりが激しいダイエット方法のように、カウンセリングの分野にも流行りすたりがあります。現代では、認知行動療法が流行しています。

認知行動療法は「エビデンスに基づく」という点が売りです。エビデンスとは、実際には集団の平均値を比較した研究が大半で、典型的には、「認知行動療法を導入したグループと、導入しなかったグループを比較して、その研究が指標とする平均値に差が出るかどうか」を検討します。

平均値というのは、グループ内の個々のさまざまな数値を、平均値でまとめてしまうので、上で説明した十人十色な人たちの個性をぼかしてしまいます。

つまり、現在の心理療法のエビデンスは、個人についての詳細な検討をしないまま、「科学的な根拠がある」と判定しているのです。これを、「科学的根拠があるから、多くの人にそのまま適用可能」などと考えてはいけません。
※詳細はこちらの文献をあたってください。

少し考えてみれば当たり前のことですが、日々の臨床現場では、平均的な人など存在せず、「エビデンスに基づく」方法が通用しないことなど山のようにあります。

心理臨床の専門家に求められているのは、十人十色の個人、個性に合わせた効果的な方法を提案する力であって、発表されているエビデンスを盲信することではありません。そう考えると、日常生活に悩みや問題を抱えた人に対して、現代の「3分診療」で治療ができるとは思えません。

「精神科」「心療内科」に通っていたり、認知行動療法などのカウンセリング受けたりしているけれど何かうまくいかない。そんな思いを抱えている方が、次のステップを見つけるための情報提供がこのnoteのコンセプトです。


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