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法人COTEN CREWに参加する理由

(約3,000字)

歴史を面白く学ぶコテンラジオ(以下「COTEN RADIO」という)は、株式会社COTEN(以下「COTEN」という)が運営する、学校の授業では中々学べない国内外の歴史の面白さを学ぶインターネットラジオです。

この度、hicardは月額5万円(税抜)のサポート費をCOTENに支払い、法人COTEN CREWに参加することにしました。

参加特典は以下の通りです。

  • COTENコーポレートサイトへのロゴ掲載

  • COTEN CREWアイコンの使用権

  • 法人COTEN CREW向けコミュニティへの参加権

  • 法人COTEN CREW向け勉強会・イベントへの参加権

  • COTENメンバーとの対談記事作成

一見、よくあるスポンサー支援のようですが、hicardにとってはそれ以上の意義がある活動と捉えています。その内情と今回このような取り組みを実施するに至った背景を共有するために、COTEN RADIOとCOTENについて、もう少し踏み込んだ話をします。

COTEN RADIOは2018年の配信開始以降、歴史というコンテンツを通して多くのリスナーにメタ認知のきっかけを与えてきました。2022年には、日本最大級のクリエイティブアワード「2022 62nd ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」において複数部門で入賞するなど、年々注目度が高まっているCOTEN RADIOですが、その最も興味深い点は彼らのメディア運営方針にあります。それは、従来の市場経済とアテンションエコノミーのゲームルールにはあえて則らないという姿勢です。

彼らは、再生数を狙った扇動的なタイトルを選ばず、広告案件を受けることをせず、より良い学びにつながるのであれば一回30分以上のヘビーなコンテンツを進んで作成します。他の多くのメディアがそうするように、短期の金銭的利益を得ることができる手段は世の中にありふれていますが、彼らはコンテンツの質に影響が出てしまうようなそれらの取り組みを採用しません。まさに、人類にとって価値のある人文学コンテンツとは何か、に真摯に向き合っているメディアです。

そんな中、法人COTEN CREWの取り組みは、現代社会の当たり前に沿わない上記のような方針を貫きつつも、資金繰りの問題を解決し事業の持続可能性を高める目的で始まったものでした。加えて、現代の市場経済の構造上、ビジネスに結びつきにくい人文知領域の事業に対して人材と資金の投資がほとんど行われないという課題感から、ポスト資本主義的な投資活動をリスナーに提案するという文脈を含んだ取り組みでもあります。

詳しくは「資本主義・ポスト資本主義」シリーズを聞いてみてください。資本主義と彼らの考えるポスト資本主義的な活動について深く理解することができます。(忙しい人はシリーズ最終回だけでも)

また、COTENはCOTEN RADIOを運営しながらも、メイン事業として世界史データベース(2023年10月現在未リリース)を開発している企業でもあります。

歴史を参照することが現代に生きる人々にとって如何に有意義であるかをCOTEN RADIOを通して学んでいる僕は、世界史データベースの必要性をもちろん強く感じていますし、世の中の多くの人も必要か不必要かで考えると必要であると考えるはずです。

しかし、先述したように、ビジネスに繋がりにくい人文知や歴史領域の事業は投資対象としての魅力が乏しく今までほとんど発展することがありませんでした。コンピュータやスマートフォンやAIチャットツールを誰でも使えるようになりひと昔前と比べるとはるかに豊かになった2023年においても誰でも使える世界史データベースはこの世に存在していない、というのが現状です。世界史データベースに代表されるような人類にとって必要と考えられるモノに対して必ずしもリソースが配分されるわけではないという現代社会の構造上の問題は、資本主義を前提としたゲームルールの限界を浮き彫りにしています。

最近、そんな社会構造に逆行するかのように、COTENがおよそ1.2億円の資金調達をした、そしてそれは既存の資金調達とは全く異なるスキームで実施されたものである、というニュースがタイムライン上で話題になりました。
本件は、複雑な前提の上に成り立っている上に他に類を見ない取り組みであるため、短い文章で的確に言い表すことは難しいのですが、今回行われた資金調達をざっくり表現するのであれば、投資家へのリターンのために事業を大きくするという現代の投資環境における当たり前の慣習を、事業の目指す理想のためにあえて無視するという条件で実施されたものでした。それはつまり、短期的な投資リターンを考慮した企業経営を行わないということであり、市場価値を最大化させるための思考回路を放棄するということです。

詳細については、ここで説明をすることで逆に誤解を招くようなことがあっては困るため、関心がある方はCOTEN RADIOの「株式会社COTENの資金調達 〜ベンチャーキャピタリストと語る現代の呪術〜【番外編#93】」を聞いてみてほしいです。

以上のことを踏まえた上で、今回、法人COTEN CREWへの参加を決めた理由は、ここまで述べてきたように、COTEN RADIO及びCOTENの運営方針は、市場経済の中に身を置きながらも、そのゲームルールに左右されることなく自身のあるべき姿を模索し続けているという点において、クリエイティブ業界でhicardが目指すものに限りなく近いからです。

この文章を読んでいるクリエイティブ職の方が日頃感じているように、クリエイティブ領域の現場では多くの課題が顕在化しています。クリエイティブ職不足、健全な教育環境の不足、発注側のリテラシー不足、20世紀的な価値観や慣習への固執など、クリエイターたちが安心してモノづくり自体に集中することができる環境とは程遠い社会で僕たちは生きています。

一方、この10年間で、特に先進的な取り組みが発生しやすいスタートアップ系デザイナー界隈を中心に情報産業に近い領域におけるモノづくりは大きく発展しており、クリエイターを取り巻く環境は着実に改善に向かっていることも事実です。

しかし、それは、この社会のシステム上、自然発生的にリソース配分が行われやすい分野、つまり、経済的成功が短いスパンで見込めるような分野に限定されています。今まで満足な投資が行われてこなかった人文知領域の事業と同じように、現代のモノづくり環境においても、クリエイターにとって重要ではあるがビジネスに繋がらないような分野は後回しにされてしまうのです。そのような分野に意識的に向き合っていくことは、多くのクリエイターがこのような問題に自覚的でない現代社会において必要なことですし、hicardが取り組むべきことでもあります。

このような背景から、今回の法人COTEN CREWへの参加は、hicardという組織はモノづくり領域において本当に意味のある活動を社会の規定に縛られることなく行なっていく、という社内外への態度表明としての意義があります。

とはいえ、僕たちもまだ手探りで今後の活動のための土台を築いているフェイズです。同じような価値観を共有できているCOTEN CREWの皆さんと共に、このようなポスト資本主義的な企業経営の可能性を模索し、何か有意義な気づきを、まずはこの国のモノづくり環境に持ち帰ることができれば本望です。

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