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2022年5月の記事一覧
小説|不思議の国のカギ(22)
アリスは先程よりも強く、その言葉を繰り返した。まるで、自分自身にも言い聞かせているかのように。
「私は、貴方を憎んでなんかいない」
これは全て、私のせいで起きた事だから。
私がアリスでなければ、両親が死ぬ事はなかった。私が箱を開けなければ、皆が傷つく事も、イカれ帽子屋が死ぬ事もなかった。
『これを開けちゃだめだよ』
白ウサギの言葉が頭を過る。
アリスはぐっと口を引き結んだ。
…………ちゃんと、
小説|不思議の国のカギ(21)
あれは10年前のある夏の日。
不思議な穴を見つけた次の日の事だった。その時誰かに出会った気がするが、その記憶は頭の中からすっぽりと消えていた。まるで少年が初めから"この世界"に存在しなかったかのように。
けれどアリスはあまりその事を気に留めていなかった。今日は単身赴任している父が久々に帰ってくるので、一緒に森に出掛けられるとあって嬉しさが勝り、昨日の出来事など些細な事に思えたからだ。
そういうわけ
小説|不思議の国のカギ(20)
闇が支配する森を、アリスは脇目も降らずにひた走る。昨日は闇雲に扉を探すだけだったけれど、今は自分の直感がこちらだと訴えてくるのだ。
「……………………」
アリスは一度だけ、後ろを振り返った。最後に見た白ウサギの背中が頭から離れない。
『…………を…………め……』
瞑目すると、脳裏を一瞬だけ過る姿がある。彼もまた、同じように自分に背を向けていた。
「……大丈夫、だよね」
……それは何に対して言っ
小説|不思議の国のカギ(19)
そこから暫く歩いた所で、チャシャ猫の膝が崩れる。
それでも何とか立ち上がろうとするチャシャ猫の視界に、チカチカと光る物が目に映った。
目を細めて、それが何なのかを確かめる。暗闇に慣れているチャシャ猫の目は、その正体をハッキリと認めた。
「…………アリス……」
十数メートルほど離れた所で弓矢を構えたアリスが、矢の先をこちらに向けている。そして自分の後ろには、片手で剣を持った白ウサギの姿が映った。
「