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歌詞とセルフライナーノーツ

「労働の自由」

作詞·作曲:澤田礼央

ハローワークの窓口で
「何か資格はお持ちですか?」
え?働いて生計を立てる資格って
誰にでもあるんじゃないんですか?
会計士とか危険物取扱とか自動車整備とか
そういうのが有利?
「精一杯誠実に頑張ります」
口だけじゃねぇって
···それじゃダメ?経験がモノを云う?
スピードが命?初心者お断り?

あぁ なんてこった
中学の時、勲章だった英検3級が
社会では全く役に立たないなんて!
このままでは最終的に金持ちのババァを
抱くしかないのかな?
···嫌だ!

こんな世の中に誰がした?
バブル景気の時に
おいしい思いをした連中がしたんだ!
大学の入学祝いに親から車を買ってもらって
ジュリアナ東京で朝まで踊って
1万円札を振ってタクシーを
止めてた連中がしたんだ!
確かな情報ソースがあるわけじゃないけど
「たかじんのそこまで言って委員会!」
毎週見てる僕が言うんだから間違いないよ!

ところで話は変わるけど
社会的地位の高い男とするセックスの方が
女は感じるんだってさ
これだから女はバカって言われても
仕方ないんだよ
でも、無意識に優秀な遺伝子を
選別してるってことだから、むしろ賢いのか?

ねぇ、つまり君はさ、
僕が才能溢れるミュージシャンだから
僕と寝たんだろ?
例えばもし僕が将来性の全くない
ただのフリーターだったら
こんなことしないだろ?
僕は至って真剣だよ
君と結婚したいと思ってる
でも君はより才能豊かなミュージシャンとか
芸人とか俳優を追いかけるんだろうな
やっぱり君はバカだよ!

長いセルフライナーノーツ

15年くらい前に作って、ライブでもよく演奏していました。
音楽評論家の岡村詩野さんがパーソナリティーを務めていたradio kittenという番組でオンエアして頂いたこともあり(ピカレスク澤田の音楽活動中、唯一の公共メディアでのオンエア)
思い入れは強いです。
今の感覚からすると、女性蔑視的すぎるとお叱りを受けそうですが、当時は本当にこう思っていた、ということです。
とにかく、女性にモテないことへのルサンチマンが強く、また、ちょうど定職に就いてないタイミングだったので、気持ちが荒みきっていたのでしょう。
ただ、「自分を捨てた相手に対する恨み節」としては、今でも普遍性があると思っています。

そもそも恋愛感情なんて、人間の感情の中でも、最も醜悪なもの。
世の中に流通している所轄ラヴソングの99.5%は存在価値が無い。(少なくとも自分にとっては、というエクスキューズを申し訳程度に付けておく)
好きだの、会いたいだの、ありがとうだの、そんなことは本人に直接言えばいいだろ!

文体が急に強気になりましたが、自分が音楽の、特に歌詞に求めている要素が世間と乖離しているからこそ、ミュージシャンとしては売れなかったとも言えるわけです。
まぁ、歌詞がダメでも、メロディと演奏のソツの無さで、形だけなら何とか聴けるケースもありますが。
でも、不快感を喚起する可能性のある言葉をとことん排除した音楽にしか居場所が無いなら、世の中にはヒーリングミュージックしか存在してないはずですが、実際は違いますよね?
つまり、僕にもチャンスはあったんですが、演奏技術の拙さなども相まって掴めませんでした。

···ダメじゃん!

破局した元恋人に対して「幸せになってほしい」と言ってるのを、よく見たり聞いたりしますが、あんなのは全部嘘です。
「自分を捨てたからには絶対に不幸になってほしい」なんて言ったら、大人げないとか心が狭いと思われるから、取り敢えず建前として「幸せになってほしい」と言うだけです。
破局後の定型文ですね。
自分が一方的に捨てた場合は、相手に対する罪悪感から「幸せに〜」と言うケースはあるでしょうが、捨てられた側は絶対に相手の幸せを願ったりしませんよ。

なんで皆、そんな見え透いた嘘を平然と吐くのか?
まして、歌うのか?
日常生活で、自己保身の為にその場しのぎの嘘を吐くことは、ある程度仕方ないと思えます。
でも、歌に嘘があるのは駄目です。
創作物と割り切ったフィクションの世界でも、リアリティ=嘘臭くなさを補強する為にディテールに凝ったりするわけでしょう?
何の衒いも無く、根も葉もない嘘を歌う行為は、リスナーを舐めてるも同然です。
で、リスナーというか、そういうミュージシャンのファンは騙されてるわけですよ。
しかも本人は騙されてることに気付いてない。
カルト宗教と一緒!
ハマってしまった信者を脱会させるのってムチャクチャ大変ですからね。
ミュージシャンが教祖でファンが信者という共犯関係的な構図は極めて不健全ですよ。
宗教団体の運営としては、上手くいっていることになるんでしょうけど。

話を自分の曲に戻すと、社会問題を入り口に超個人的な問題に着地するスタイルは忌野清志郎を、破局した相手をこき下ろすスタイルはエルヴィス・コステロを参考にしたものです。
とは云え、それは多分に後付けで、当時はそこまで意識的ではなかったですね。
同時代の国内のラヴソングへのアンチテーゼとも思ってませんでした。
自分としては王道のつもりだったんです。
まぁ、要するに···

早すぎる天才だった

ということでしょう。
自分が言わずに誰が言うんですか!





















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