見出し画像

12

ライナーノーツにはこうある。

「闘病を続けていた坂本 龍一が、2021年3月末ごろから「日記を書くようにスケッチを録音していった」と語り、その中から気に入った12スケッチを選び、まとめたというオリジナルアルバム。2017年リリースの『async』以来、約6年ぶりとなる本作は、たった一人で自分自身や世界と対話するように、日々の感じるままをピアノとシンセサイザーで紡いでいる。その表現の意識は旋律よりサウンドテクスチャの造形に向かい、水面に落ちる水滴が起こす波紋のように、シンセサイザーのドローンとミニマルなピアノの響きが美しい余韻や鎮静感覚をもたらしている。また、終始聴こえる息遣いを含め、演奏には「何も施さず、あえて生のまま提示」し、制作日をタイトルにした各曲が時系列に並べられている。その簡素な体裁は、呼吸するように日々の創作を重ね、人生を音楽にささげてきたアーティストのありのままを映し出している」

「鎮静感覚」 がんを生きる自らに湧き上がる「痛み」を鎮めるために、作られた音楽のようにも聞こえる。自分を癒すために。

死生感。死を自覚し、意識ある間の生をどう生きるか。その自問にも聞こえる。

遠くからの静かな人の呼び声、「息づかい」のような、「風」のような、「通奏」した「高音」。
からすの鳴き声。
雑踏の音のなかで、感情の揺れのように彷徨うピアノ旋律。「諦め」「寂しさ」「不安」 

「でもよかったじゃないか。総じてみれば」
「そうだね」

がんを生きる生き方。それも音楽家のそれ。

がんを生きる。教えられました。坂本さん。やすからに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?