見出し画像

博物館へ行こう#4「さいたま市岩槻人形博物館」

レンタル学芸員のはくらくです。秋の展示会シーズンも近づいてまいりました。noteを書くためというわけではないのですが、毎週のようにあちこち出歩いております。今回はさいたま市にある岩槻人形博物館をご紹介します。

今回来訪した館

名称:さいたま市立岩槻人形博物館
区別:公立・歴史(歴史・工芸)
住所:〒339-0057 埼玉県さいたま市岩槻区本町6-1-1
アクセス:東武野田線岩槻駅東口をから徒歩およそ10分
ウェブサイト:https://ningyo-muse.jp/

岩槻駅から徒歩圏内、2020年の開館ということもあり、外観は非常に現代的的で美しい館です。全然知らなかったんですが、日本ではじめての人形専門公立博物館だそうです。

同じ人形専門の博物館で思い浮かぶのは、横浜人形の家でしょうか。あそこは私立だったと記憶しています(地元に近いけど行ったことがない……)。長野県の中野市にある日本土人形資料館は公立館で人形をテーマにした館ですが、土人形ですからまた別のジャンルなんでしょうか。

入り口外観

2020年開館ということで非常にきれいな館でした。展示室は3室で、職人の技と道具を紹介する「埼玉の人形作り」、収集したコレクションを展示する「コレクション展示 日本の人形」、「企画展示室」に分かれています。

真ん中の部分は引出しになっている

「埼玉の人形作り」の展示の一部です。引出しを引っ張るとのぞきケースと同じように資料を見ることができます。昔、学芸員の資格を取得する時に「能動的な動作を行うことで、より記憶に残る」というようなことが紹介されていたように記憶しています。個人的には引き出すのが面倒であまり好きではないのですが、小さいものであれば、少ないスペースで多くの資料を見せることができるという利点はあるかもしれません。この部屋自体、かなりコンパクトな展示室でした。団体見学、たとえば地元の小学生が郷土学習のために立ち寄るというケースを想定すると、少し手狭かもしれません。班を分けて見学などの工夫が必要かと思います。

展示資料の数を絞った展示

「コレクション展示 日本の人形」は、いわゆる常設展示室です。展示替えを頻繁にするタイプの展示ではないように思ったけれどどうでしょう。特徴は展示方法ですね。余白を大事にした展示を行っています。適切な表現かどうかわかりませんが、展示する資料を絞って余白を作ってあげると、高級感が出るように思います。わたし自身は、どちらかというと大量に同種の資料を並べて、比較による差異を楽しんでいただく展示を行うことが多いので参考になりました。美術工芸品は、この展示室くらいの余裕を持たせた方が見栄えするでしょうね。

次は企画展示室です。わたしが行ったときには、「人形 未来へのまなざし 中村信喬作品展」という展示を行っていました。作家でありながら修復や古美術の復刻など、幅広く活用されているようです。福岡県の無形文化財の保持者にもなっています。

企画展示室トールケースの背側

企画展示室と常設展示室は同じくらいの広さに感じました。若干、「コレクション展示 日本の人形」の方が奥行があったかもしれません。

デザイン的な部分でこういうやり方もあるかぁと思いました。トールケースの背景に文字を表示して見せていました。移動式の壁面にも同じ書体。シールタイプのフィルムを貼り付けているんでしょう。さすがにこの規模だと自前ではできないと思いますので、業務委託かな。

移動式の壁面

展示する資料にあわせた気が利いたおしゃれな展示室でしたね。トールケースもウォールケースもLED蛍光灯で照度を確保した上で、小型のLEDスポットを当てていました。ライティングのためのダクト、細い専用のものがあるんですかね。と書いてから、明らかに上から円形のスポットを当てていることに気がつきました。これ、どうやってるんだ……?

躍動感のありすぎる博多人形たち

移動式の壁を使って、ウォールケースをふさいで使わないようにすることもできる構造になっています。これ、便利なんですよね……壁でふさいで移動式のトールケースやのぞきケースを設置したり、資料点数が少ないときの調整に使ったり……いずれにせよ様々な展示表現を検討できそうな展示室でうらやましい限りでした。

また機会を見て遊びに行ってみたいと思います!