書いたもの05

練習のあらすじ

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そこはあらゆる物語が飽和した世界。
どんなストーリーを作っても、必ず同じ作品が存在する。出版社がどんなに新しい作品と謳っても、ストーリーのパターン、舞台、セリフが必ず被ってしまう。人々が同じような常に既視感を抱いてしまう、物語に飽きてしまった世界。

「わたし」は作家だ。物語を紡ぐ作家。
あらゆる物語のパターン解析をして、組み替え、読者が喜ぶ物語を作っている。
評判はまあまあだ。空いているパターンの穴を埋めていくだけなので、作業もそんなに苦しくはない。
ただ、ただ…気付いてしまった。
「わたし」には何番煎じでもいいから、書きたい物語があることを。

試しに書いてみた。今までのどの作業よりも楽しかった。パターンを気にせず、好きなセリフを登場人物に言わせ、好きな場面展開をする。「わたし」だけのたった一つの作品ができた。
評判はもちろん、皆無である。それでいい。分かっていた。この物語は、人々から求められているものではない。


「またエラーですか」
「そうなんですよ。しばらく稼働させると、なぜか既に存在しているような物語をつくるんです。この暗算型AIは」
「仕方ないですね。またデリートですね」
「またいちからAIに物語のパターン読ませるのか…」
「万人が求める新しいモノを作らないと、買ってくれませんからね」

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新しい作品は出続けているけど、人間の限界ってあるのかなあ、ってところと、書きたいものと、売れるものの話。

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