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Visual Thinking Strategies 019

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絵には何が描かれているか

青い空に赤いカーテン。真ん中に人。顔は白いものに覆われている。左手には楽器のようなものを持っていて、右手はパー。白い石のようなものに座っている。足は白い布のようなものに巻かれ、お腹から胸の上あたりにかけては何かよくわからないものに覆われている。真ん中の方には白色で長方形の上に三角の屋根がついたようなもの。緑や黄色、オレンジ、ピンクなどカラフル。床は薄いベージュのようなものでフローリングのように見える。海の手前には砂浜。その手前は家か。その前には草木が生い茂っている。天候は晴れで雲はうすく鱗雲のようで波の様子をみると穏やかな天気というのがうかがえる。

ここから何を感じるか

まず、胸から腰にかけてのガチャガチャしたものは何だろうという疑問。左手に持つものは?この人は何者で何をしている?どんな状態?何か哀れな感じがした。赤いカーテンの感じや天候、海の景色から、比較的良い場所にいる。リゾートのような。だからこの絵を描いた人の視点は、そこにいる人=そこそこ稼いでてある程度豊かな人を想像する。でも、この真ん中に座っている人は豊かそうな人の奥にある心の貧しさのようなものを鋭くあぶりだすような、あざわらうような、それでいてなぐさめるような感じもする。すべてがお見通しのような。もしかしたらこれは自分(絵を描いた人であり主観)の分身かもしれない。外見と中身の不一致、不一致に悩むことに蓋をして日常に逃げているような。であれば、その楽器のようなものから奏でられるのは不協和音か。でも、不協和音ですら心地よいと感じてしまうくらいの心理状態なのかもしれない。こんな素晴らしい場所で聴く音楽はきっといいはずだと。自分で自分を納得させることで、ざわめきを抑える。聴きたいように聴く。感じたいものだけ感じ、それ以外の感覚には蓋をする。

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Solitary Orpheus ジョルジョ・デ・キリコ1973/1973

The musician god is represented with a lyre in his hand on a stage set. On the base behind Orpheus is painted a landscape full of the light typical of the Mediterranean, more relaistic and less mythological than ever: the blue sea, the white houses, the olive trees, a calm summer sky. The palette of the artist in his old age is full of joy, it is as sunny as that of a child. In this, one of his last works, de Chirico dreams of his own native land and in the role of artist-singer-mannequin, bids farewell to his audience, to whom he offers an essay on his repertoire.

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ミュージシャンの神は、ステージセットで彼の手に竪琴で表されます。オルフェウスの背後にあるベースには、地中海の典型的な光に満ちた風景が描かれています。青い海、白い家、 オリーブの木、穏やかな夏の空など、これまで以上に相対的で神話的ではありません。老後の芸術家のパレットは喜びに満ちており、子供のように晴れています。この中で、彼の最後の作品の1つであるデ・キリコは、自分の故郷を夢見て、芸術家、歌手、マネキンの役割を果たし、聴衆に別れを告げ、彼は彼のレパートリーについてエッセイを提供します。

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あらたな発見、さらに感じることや疑問

手に持っているのはリラという楽器で実在するものだった。この人はOrpheus(オルペウス)という人で、ギリシャ神話の中の吟遊詩人であり、古代に隆盛した密儀宗教であるオルペウス教の始祖らしい。明らかに人じゃないと思ったので、やっぱり神話上の人だったという納得感。ギリシャ神話は全然通ってないから、時代背景や意味などは今の時点ではよく分からず。Wiki情報をざっくりまとめると、リラがめちゃくちゃ上手で、妻を失った後に宗教をはじめ、最後は首を切られて殺され、河に投げられる。首は歌いながら海に流れ、島に流れ着いたという。。。神話っぽい。

この頃の作品は喜びに満ちており、子供のように晴れていると形容されているけど、確かにそうだけれどもそうであるがゆえに、真ん中の人(オルペウルス)の不気味さにすごく目を惹かれてしまったと振り返る。この人の不気味さも、オルペウルスの最期を知ってしまった後にもう一度絵を観ると納得感がある。この絵が目についたのは、対比の面白さなのかもしれない。明るくて心地良さの中にある、影や闇の部分。でもきっと、芸術や音楽の役割って、そういう部分にも光を当てて、見る人にいろんな解釈や閃きを与えることなんだと思う。むしろ闇を感じないアートにはあんまり惹かれないかも。

振れ幅。光と影。地中海の白砂と海っていうめちゃくちゃポジティブ感感じちゃうような背景に、妻失って首切られて殺されて首が歌いだしちゃうようなサイコ的な闇を真ん中に描く。コントラストがすごい。ネガティブなのをネガティブなまま描かずに、全体の雰囲気はポジティブ感を漂わせているのがなんか自分にはちょうどいいと感じた。これが逆だと今日の気分的には選ばなかったかも。今日のポジとネガのバランスがこんな感じだったのかもしれない。

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