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オンラインの新しい民主化がやってくる

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あらゆる権利は民主化されていく運命にある。

人類の歴史は民主化の軌跡であった。濃厚牧畜社会では作物を補充し、管理する人が次第に権力を持つようになり、それ以外の者を支配し始めた。

しかし、支配される側の庶民は「軍役し、税金を納める我々にも権利がある」と主張して参政権を求め、革命を起こした。こうして国王だけの国ではないとして国民主権が確立された。

現代ではお金を払えば誰でも公平にレストランへ行ける。誰でも議員会館へ行って議員に意見できる。学ぼうと思えば誰でも勉強ができる。誰でも自由に移動できる。これらは全て時の権力者から我々庶民の先祖が勝ち取ってきた権利だ。


文化面でも民主化の動きは同じだ。最初の音楽家は貴族の食卓のBGM要員として呼ばれていた。画家も彫刻家も権力者の家の装飾を作る職人として雇われていた。演舞だって茶人だって花人だって、皆特権階級の庇護の下で生きてきた。なぜなら他の庶民や奴隷に文化を楽しむ余裕などなかったから。

技術の発展とともにコロッセオ、舞台、コンサートホール、美術館、映画館ができ、特権階級だけのものだった文化が庶民にも「解放=民主化」されていく。

庶民に文化が解放されてからは、専門家が作り、安い料金で大勢がその瞬間を楽しむ大衆芸術と普遍性を求めて特権階級が高いお金を払って楽しむ純粋芸術に別れていった。文化の民主化も資本主義社会という大衆の欲を叶えるシステムの中でこれからより一層強まっていく。

さて、今の時代はどうだろうか。スティーブ・ジョブズによって誰もがスマホを持てるようになった。非専門家でも専門知識を持たない大衆を楽しませられる、つまり誰もが「作り手(クリエーター)」になれる時代だ。これは専門家だけに許された「動画やアニメを作って人々を喜ばせる大衆芸術」という枠組みからも解放された大きな変化だ(限界芸術の躍進)。誰もが拡張可能な飛び道具を持っているので、今日から誰もがクリエイターになれるのだ。具体的にはYouTuberがそうだろう。

では、これからはどうなるか。今後はAI が音楽やイラストを識別して、それっぽい新しい作品を無限に作れるようになる。きっと量子コンピュータのAI なら一秒間に何万曲といった新曲をリリースできるだろう。大衆はそれらをただ聞き流すだけで良い。マンガのイラストも何百種類という組み合わせから好きに選べるようになる。ネタと構成力さえあれば誰もがハイクオリティなイラストでマンガを手軽に作れるようになるだろう。では、どんなクリエイターなら生き残れるのか。それは「キャラ化に成功したクリエイター」だ。文脈や抑揚が理解できないAI に人間のクリエイターが対抗できるのはそこしかない。自分という唯一無二のキャラクターはどんな才能を持っていてどんな話し方のクセがあって、それらをどう表現すれば大衆に求められるのか、日々研究しながら、コツコツ実践し続けられる執念を持ったクリエイターが拡張性の高い作品を生み出し、生き残っていくだろう。

一方で、クリエイターではなく無限に生まれた作品を選りすぐって上手に魅力を伝えられるインフルエンサーも新しい民主化の時代で需要が高まるポジションだといえる。人々はあまりにも多くの作品が生まれる中で自分の趣向に合う面白い作品を見つけ辛くなる。そんなときに「良い作品だと保証してくれる人間」が求められるのだ。具体的にはオリエンタルラジオ中田敦彦のYouTube大学やMBのファッションチャンネルが情報の格付け保証人として上げられる。

そして最後にもう一つ民主化の例として今後生まれるであろう役割は「ライブトレーナー」だ。今までは文化を作るごく少数の専門家とそれを受容する大衆に分かれていたが、これからは誰もがアウトプットできる時代。つまりアウトプットの方法や実践する楽しさをリアルタイムで何百人という人々に教えてあげられる人が人気になるだろう。いつの時代も受容より、自分で実践するほうが楽しいのは変わらない。今でもヨガインストラクターやジムトレーナー、ゴルフのレッスンプロなどが動画を投稿しているが、今後はより多くの業種で〇〇トレーナーが量産されると予想している。創造や運動の楽しみ方を教えてあげられる人は一気に世界中でファンを集められるようになるだろう。

オンラインで新しい民主化がやってくる。

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