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「やれやれ」それとも「そろそろ」 ― 三井住友・中小型株ファンド #投資信託

先日↑↑↑のノートで取り上げた「東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン」は、私自身保有していないファンドでした。今回取り上げる「三井住友・中小型株ファンド」は私自身、2016年2月から毎月コツコツと買い続けているファンドです(少額ですが)。

そんな「三井住友・中小型ファンド」にも「そろそろ」が窺えます。そして「やれやれ」もありそうです。

「そろそろ」とは

そろそろ株価が下がるかもしれないので利益を確定させよう

の「そろそろ」です。

「やれやれ」とは

ある期間、評価損(投資した金額を時価が下回る)状態が続いた後に、時価が投資金額を少し超えようか、という頃に

やれやれ、これでこのファンドとはお別れしよう

の「やれやれ」です。

「そろそろ」「やれやれ」いずれもファンドからお金を引き揚げる行為です。

ファンド(投資信託)の規模を示す数字に純資産総額があります。このファンドでいくと2019年12月13日時点では

三井住友・中小型株ファンド_20191213_NAV

124.12億円となっています。この数字を見ているだけではファンドにお金が入ってきているのか、あるいは、出ていってるのか、分かりません。

純資産総額 = 基準価額 x 受益権総口数

で計算されます。この受益権総口数が増えていれば新たにファンドにお金が入ってきていることになります。逆に減っていればお金が出ていってる、引き揚げられていることになります。

月末基準での推移は下表の通りです。

三井住友・中小型株ファンド_201911_NAV_UNITS

2019年6月から6ヶ月連続で資金が流出していますが、2019年11月は受益権総口数が大幅に減少、つまり、多額の資金がファンドから引き揚げられたのです。11月末には純資産総額が143億円でしたが、上記の通り、今月も既に124億円まで減少しており資金の引き揚げは続いているようです。

表の一番右の列、受益権総口数の増減にご注目ください。2017年10月頃からこのファンドへの資金流入が増え始めました。受益権総口数が1ヶ月で最も多く増えたのが2018年10月です。つまり、この時期にこのファンドに沢山のお金が流れ込んだわけです。

2018年9月末から1ヶ月刻みで投資タイミングを後ろにずらして2019年11月末に至るまでの損益の推移を見たのがこのグラフです。

三井住友・中小型株ファンド_201911_パフォーマンス

2018年9月末にエントリーの場合、2019年11月末時点ではまだ評価損です。が、2018年10月末にエントリーの場合は3度(2ヶ月ずつ)の評価損があったものの2019年11月末には評価益。ここで「やれやれ」が出て来ているかもしれません。
2018年11月末にエントリーの場合は11か月評価損が続いて、2019年11月末遂に評価益に。これこそ「やれやれ」でしょう。

一方、2018年12月末にエントリーの場合、月末時点では一度も評価損を経験せずに2019年11月末時点で+18.6%です。そう「そろそろ(株価が下がりそう)利益確定しよう」です。まあ、このタイミングでエントリーした人はもっと前にファンドからお金を引き揚げているかもしれません。

三井住友・中小型株ファンド_201911_パフォーマンス_2

この1年、2年でめまぐるしくお金が流れ込んで出ていった(まだ出続けている)のが見て取れます。

こんな風にお金が流れ込んだ理由の一つはファンドの過去の成績にあったものと想像します。

三井住友・中小型株ファンド_201911_10年リターン

10年保有していたらどうなるかを↑のケース同様、エントリー時期を1ヶ月ずつズラしたものです。10年保有していたら投資額の2倍以上になったのが53回(データは75個)と非常に立派な成績です。ただ、この果実は10年保有しないと得られないものです。

ポリシーは「『リターンを売る』のではなくて、『投資哲学を売る』」です。

このファンドの運用担当者の木村さんのインタビューでの一言です。

木村さんは「哲学」を買ってもらいたいのに、販売していた人たちは「リターン」を売っていた、というのがこのファンドでここ1、2年に起きていたということだと感じられます。

木村さんのインタビューはこちらにもあります。

「そろそろ」「やれやれ」によるファンドからの資金の引き上げは、このファンドに限ったことではなく、11月には数多くのファンドで起きたことです。

ところで、アクティブファンド(投資先の選別をファンドマネジャーに任せるファンド)には大きく誤解している人が沢山いるように感じます。それは、ファンドマネジャーが行っているのは「どの会社に投資するか、しないか」だけだと思っている人たちです。ファンドマネジャーが判断しているのはそれだけではありません。投資先の価格、つまり、株価も判断しています。価値に比して低い株価であれば買い入れ、価値に比して高い株価であれば売るわけです。この価値と価格の比較をファンドマネジャーに委ねていることを理解していない人が非常に多いと思うのです。それを端的に示しているのが「そろそろ」による資金引き揚げです。つまり、お金を預けている側が自分で判断をしているわけです、「そろそろ下がるかもしれない」と。しかし、ファンドを保有しているだけの投資家はその中身を正確に把握しているわけではありません。ポートフォリオに含まれている投資先の市場での評価が高いか安いかを、それで判断できるのでしょうか。無理だと思います。

そんなわけで「リターン」を追い求めてアクティブファンドを選ぶのは避けるべきです。ホント、そう強く思います。

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