SBI証券さんの『ファンドマネージャー対談』を読んで:”銘柄”への違和感が増幅されました

SBI証券さんの素晴らしい企画です。

ファンドを選ぶ時の重要なポイントに、「大切なお金を安心、納得して運用を託すことができるか」という点があるとSBI証券では考えています。
今回は『ファンドマネージャー対談』企画をオンラインで実施!

対談は全3回でした。

最初の対談

藤野英人さん vs 木村忠央さん

藤野さんは #ひふみ投信  、木村さんは #三井住友・中小型株ファンド  の運用を担当されていて、僕はこの2つのファンドには長くお世話になっています。

木村さん:「パフォーマンスが悪い。どうやって改善しますか?」って聞かれるんですよ。すぐに改善してほしいと言われれば、答えは1つしかなくて、相場動向にそった運用するしかありません。でも、それをやりだすとコロコロ変わる相場に合わせて自分の運用方針も変えないといけなくなるんです。

この最初の「パフォーマンスが悪い。どうやって改善しますか?」に似ているなあ、と感じるのが、アクティブファンドのマネジャーへの「株価指数、インデックスをどうやって上回りますか?」問いかけです。そういう場に出くわすと、いつも思います、「そんなん訊いても意味ないで」と。

藤野さんもこう説明されています。

長期的に見れば株価はその会社の価値を反映するものですよね。だから3年、5年、10年単位で見れば、ファンドマネジャーの読みとそうブレることなく期待通りの株価に近づくんです。だから中長期投資がなぜいいのかというと、「中長期で保有すれば値上がりする」のではなく、「中長期で投資すると銘柄選択の効果がきちんと現れて、アクティブファンドのファンドマネジャーの実力が発揮できる」ということなんだと思います。

また、こんな風にも

「長期投資」とは何かっていうのは、すごく大事。「長期で持てば株価は上がる」ということじゃないんですよね。だめな会社を長期で持っても、下がるだけですから。

木村さんのこの言葉が印象的です。

一般に中小型株は「値動きが大きく、短期売買で儲けるもの」というイメージがありますが、魅力はそこだけじゃない。私はいつも「中小型株は短期でバリバリ売買するものじゃない」と一生懸命“布教”しているんです。

対談の全文は以下のページでご覧ください。


2つ目の対談は

湯浅光裕さん vs 武田政和さん

湯浅さんは #ひふみワールド  武田さんは  #厳選投資  の運用を担当されています。この2つのファンドにもお世話になっています。

武田さんです。

そもそも企業に投資する株主は、企業に資本を預けて経営者に増やしてもらうことを期待してるわけですよね。では企業経営者がどうやって資本を増やすかというと、事業を営んで毎年利益を生み出して内部留保し、それを再投資することでさらに新たな価値を生むという自己強化プロセスによって企業の価値を上げているわけです。そして、それがいずれは株価に反映される。
ですから重要なのは、自己強化プロセスができるだけ永続する会社を探すことなんです。そこで私が考えるポイントは3つあります。

湯浅さんはこんな風に。

私は、株主が重要だと思っています。アクティブファンドマネジャーとして私は経営者の方々から進もうとしている道のその先について聞き、そこに未来があると感じるとすごく期待するわけです。でも、その経営者が進もうとする未来について、信任して支えてくれるのは株主なんですよね。先ほど武田さんが国内の系列系運用会社についておっしゃっていましたけれども、企業がダメなのは結局のところ株主がダメだからということじゃないかと思います。経営者を信任してくれる株主がいること、経営者は株主と会話ができていてしっかり「握り」があるかどうかは重要ですね。

企業がダメなのは結局のところ株主がダメだからということじゃないかと思います。”  これはとても印象的な指摘です。

武田さん: 日本株ファンドのファンドマネジャーとして思うのは、日本経済が全体として縮小傾向にあるとはいえ、悲観する必要は全然ないということです。確かに、日本には今のところアメリカや中国のようなインターネットの巨大プラットフォーマーは存在しません。これはおそらく、お国柄や国民性、企業文化の違いが背景にあるのだと思います。しかし、日本には今後も世界のリーダー的存在として君臨できる分野があります。
湯浅さん: 武田さんがおっしゃるとおりだと思います。結局、FANGなどの巨大プラットフォーマーの環境も一部は日本企業が支えているわけですし、今後はさらにチャンスがあると思っています。

対談の全文は以下のページでご覧ください。


3つ目の対談は

藤野英人さん、湯浅光裕さん vs 奥野一成さん、岡島 翔士郎さん

最後はタッグマッチ?

奥野さん、岡島さんが運用を担当されている #おおぶね  シリーズ。こちらのシリーズにもお世話になっています。

岡島さん: 「おおぶね」の特徴ということでいうと、「対話」を一つのキーワードにしているところもポイントです。
(略)
これが我々の「対話」です。今日明日、信越化学さんのビジネスや企業価値、あるいは株価に反映されるような対話ではありません。けれども、こうした対話を繰り返す中で、企業さんと一緒に企業価値創造プロセスを楽しむ。そして、そのような取り組みもしっかり受益者のみなさんにご説明し、受益者の方にも一緒に楽しんでいただく。そこが、我々のアクティブファンドとしての魅力なのかなと考えています。

投資先(候補も含まれますね、きっと)との対話について

湯浅さん

アメリカの経営者の方々は自由主義の中の資本主義を深く理解しているので、スムーズに会話のキャッチボールができて楽ですよね。それに、お互いに「足りないところは謙虚に理解し、教えを請う」という姿勢があって、対話を始めた瞬間に尊敬し合える空気がきちんと作れると感じます。

藤野さん

僕もたまに湯浅と一緒に外国株の調査に参加することがあるんですけれど、英語の問題はあるにせよ、アメリカ企業の方がやりやすいと思います。それは、コミュニケーションのベースに「会社は株主のために報いるのが当然」という考えがあるからでしょう。資本コストに関する意識が高く、企業価値を上げるにはどうしたらいいかというところに集中することに関しては、アメリカでは地方会社であろうが時価総額が兆円単位の会社であろうが変わらないですよね。

奥野さん

長期投資にとって最も大事なことは、市場動向、需給動向、市場でのValuation(割安・割高)などではなく、企業が営む事業の経済性を見極めることだと信じています。この見極めにおいて、企業の大小にかかわらず真に素晴らしい企業の経営者と対話することで、我々の投資の質を向上させることができると信じていますし、今まで実直にそれを実行してきたのです。
「おおぶね」には企業の経営者や従業員の人たちと一緒に乗っていると思っていると言いました。もちろん海が荒れるときもあるでしょうけれども、しんどいときこそ同じ船に乗るチームとしてどう助け合えるかが大切だという思いも「おおぶね」という名前には込められています。

対談の全文は以下のページでご覧ください。


3つの対談ページで検索してみました。

1つ目の対談からです。

大型株ファンドの運用はTOPIX(東証株価指数)といった「ものさし」に対して勝ったか負けたかが大事で、実際のところ、時価総額に占める割合の高い銘柄をどう組み入れるかで運用成績が決まってしまう面があります。
「三井住友・中小型株ファンド」の場合、絶対的な目標株価水準に基づいて運用する方針で、企業調査や分析によって個別銘柄ごとに目標株価を算出し、それより安ければ買い、高ければ売ります。

1つ目の対談では、「銘柄」という言葉が16回登場してました。

2つ目の対談です。

でも、アクティブファンドを運用するファンドマネジャーとして思うのは、銘柄を選別して投資することに「本質的な投資の意味」があるということです。
しっかりとした着眼点で選んだ銘柄であれば、それは株価に反映していくものだと思います。ただ、これには時間が必要です。だからこそ、我々のような人間が職業としてやっていける、活躍できる余地があると思っています。

2つ目の対談では、「銘柄」という言葉が9回登場してました。

3つ目の対談です。

ご注意事項
・本ページは、投資一般に関する情報提供を目的としているものであり、投資その他の行動を勧誘したり、推奨したりするものではございません。銘柄の選択などの投資にかかる最終判断は、お客様ご自身の判断でお願いいたします。
・本ページに記載されている情報は各取材時点のものです。
・個別銘柄の紹介にあたっては、当ファンドの過去の組入銘柄の一部および運用担当者による見解を紹介したものであり、当該銘柄について将来の保有を約束するものでも、売買を推奨するものでもありません。また、当ファンドが組入れる銘柄などのパフォーマンスを示唆するものでもありません。

3つ目の対談本文には「銘柄」は登場していませんでした!

「ご注意事項」で5回、「銘柄」が登場しています。ですから正しくは1つ目の対談では11回、2つ目の対談では4回、「銘柄」が登場しました。

3つの対談を通じて、あらためて思いました。僕らは、会社に投資しているんだよ、って。

人間の集合体であり有機体そのものである企業を,あたかも無機物のように「銘柄」と呼ぶ業界慣習

みさき投資、中神康議さんの言葉からです。

「上場した途端、会社は“銘柄”と呼ばれる」。元ネタはみさき投資の中神さんなんだけど、上場企業といっても投資家からするとOne of themでしかないということを如実に突きつけられる表現で、発行体からするとやるせないなぁと。

「銘柄」を中神さんは”無機質”と表現されましたが、本当にそう思います。同じ船に乗るという意味では一つのチーム。味気ない、というか、リスペクトに欠ける、というか。

中長期の目線で会社を選ぶ、投資判断するマネジャーの皆さんには、「銘柄」ではなく、「会社」「企業」という言葉を選んで欲しい!


そんな気持ちが湧き上がってきました。

他者からすれば本当にどうでもいい差異にも関わらず「自分はどうしてもこれを見落とせない、できることなら自分の手で是正したい」と思うこと。

鳥井弘文さんのブログです。

会社、企業のことを「銘柄」と呼ぶ慣習。これは僕にとって”自分はどうしてもこれを見落とせない、できることなら自分の手で是正したい”ことのように思われます。

鳥井さんはこう指摘されています。

実際に発信し、仲間を集め、「小さな現実」をつくりだす。そうやって世間に対して提示することで、少しずつその世界が現実のものとなっていくのだと思います。

そんな風に一歩ずつでも小さく歩み始めることが結果的に、自分にとって本当に価値があると思えるものを創りだせる結果につながるのかなと思います。

この記事から「小さな現実」をつくり出せたらな、って思います。

繰り返しておきます。

中長期の目線で会社を選ぶ、投資判断するマネジャーの皆さんには、「銘柄」ではなく、「会社」「企業」という言葉を選んで欲しい!


素晴らしい3つの対談を発信して「小さな現実」、いや小さくはない?、をつくってくださったSBI証券、藤野さん、木村さん、湯浅さん、武田さん、奥野さん、岡島さんに深く感謝です。

このような企画を、より大きな現実にするために、何度でも実現させてくださると、とても嬉しく思います。


サポート頂いた際は、TableforKidsへの寄付に使わせていただきます。 https://note.com/renny/n/n944cba12dcf5