ライトノベル新人賞における受賞作の傾向・評価シートについて

人生をジュエルにして回すガチャこと、公募についてです。

突然ですが質問です。ライトノベル新人賞に応募する際、レーベルカラーを研究されていますか?

新田はゴリラなので、受賞作を片っ端から読むような分析は行っていません。そこに時間を割くより、一文字でも多く書いた方が受賞に近づくと思っているからです。とはいえ、当然ながら『独りよがりな面白さではなく、レーベルがいま求めている作品』を応募しないと受賞には繋がらないので、大まかな傾向は自分なりに探っていました。

では一体、各レーベルはどんな作品を求めているのでしょうか。公募に挑戦する立場である僕なりに考え、感じたことを記事にしてお伝え致します。

こう言うと「そんなモンがわかったら苦労しねえよ!」「ゴリラに何がわかる!」とお叱りの声が聞こえてきそうですが、残念ながらこのnoteはゴリラが管理するジャングルであり、暴力が法律です。このまま僕の独断と偏見に満ちた煮汁のような記事を啜るか、立ち去って有益な時間を確保するかの二択です。どちらかを選んでください。


ここから先の文章を読む方々は、新田汁を選ばれた物好きに違いありません。お口に合うかはわかりませんが、少しでもお役に立てれば幸いです。

※ここで綴るのは、ライトノベル新人賞についてです。一般文芸や児童文学、webサイトが開催するコンテストについては把握しておりません。また、市場のレーベルカラーではなく、あくまでも新人賞におけるレーベルカラーについての記事となっております。

また、僕は編集者の方から情報を得ている訳でもないですし、出版社の内情も知りません。この記事はあくまでも個人の意見として捉えてくださいね。


【電撃大賞】

まずは、みんな大好き電撃大賞!

ライトノベルやライト文芸を主戦場にする実力者がひしめき合い、締切前は「対戦よろしくお願いします」があちこちで確認できるのも毎年恒例ですね。応募総数も出版社が開催する公募の中では最大級で、長編・短編合わせて4000以上の作品が集まります。受賞数は平均すると毎年6作前後でしょうか。

狭き門すぎる。ちくわの穴か?

さて、公募屈指の高倍率を誇る電撃大賞ですが、どのような作品を求めているのでしょうか。応募要項を確認してみます。

オリジナルの長編及び短編小説。
ファンタジー、SF、ミステリー、恋愛、青春、ホラーほかジャンルを問いません。

未発表かつ日本語で書かれた作品に限ります (他の公募に応募中の作品は選考対象外となります)。

電撃大賞 公式ホームページより

広すぎる。ジブリパークか?

この応募要項を見る限りでは「面白けりゃなんでもいいんだよ!」という気概さえ窺えます。しかし、公募全般に言えることですが実情は少し異なるかもしれません。

①受賞作の傾向

電撃大賞の受賞作は、ライトノベルのレーベルである電撃文庫 or ライト文芸のレーベルであるメディアワークス文庫から出版されます。応募時にどちらかを選ぶ必要はなく、出版社側が独断で振り分けています。

まずは電撃文庫の受賞作についてですが、第23回大賞作品の『86―エイティシックス―』を筆頭に硬派で独創性が高いファンタジーがほぼ毎回受賞している印象を受けます。反面、webサイトのランキングやコンテストで好まれるテンプレに則った作品は厳しい戦いを強いられそうですね。web小説の共通認識(テンプレート)に頼った作品は第27回金賞受賞作である『受付嬢ですが、定時で帰りたいのでボスをソロ討伐しようと思います』以降は見当たりません。こちらは現在も刊行が続く大人気シリーズとなってますが、それでもテンプレを踏襲した受賞作が増えないあたり、電撃大賞においては編集者の手が上がりにくいジャンルなのでしょう。

また、ファンタジーと同様に人気ジャンルであるラブコメは第28回で『この△ラブコメは幸せになる義務がある。』が金賞に輝いていますが、近年では投稿数と比較して受賞数が少ないジャンルだと思います。他の新人賞では毎年のように受賞するくらいラブコメは強いのですが、電撃大賞に関しては絶対に欲しいジャンルという訳ではなさそうですね。

今後の傾向としては、第29回大賞受賞作である『レプリカだって、恋をする。』のように爽やかな読み味で、女性向け市場も狙える青春ラノベが増えてくるんじゃないでしょうか。とはいえ悪役令嬢や婚約破棄のような異世界恋愛を取り扱った受賞作が増えるとも思えないので、この枠を狙うならアプローチを工夫する必要がありそうです。

次に、メディアワークス文庫の受賞作にも触れておきましょう。こちらはライト文芸が主流ですが、テーマ自体は重めな作品が目立ちます。

第28回メディアワークス文庫賞作品である『きみは雪を見ることができない』のように架空の難病を扱っていても、命の在り方ではなく周囲の葛藤に見所がある物語だったり、第29回メディアワークス文庫賞作品『さよなら、誰にも愛されなかった者たちへ』のように孤独な死者の魂を紐解く物語だったり、身近にある社会問題(介護・孤独死・育児放棄等)を取り入れた作品が強い気がしますね。

このような近年の状況を踏まえると、同じライト文芸でもスターツ文庫で絶大な人気を誇る余命モノのような『難病を真正面から調理して感動を誘う作品』はめっっっちゃくちゃ厳しいと思います。その裏付けとして、余命モノの要素を含んだ僕の作品には、このような評価シートが届きました。

②評価シート

第29回電撃大賞に応募した『わたし、リコレクション。』という僕の作品は、4次選考で散ってしまいました。当時は「惜しい! あと1枠あれば最終選考でしたなぁ」などと自意識過剰極まりない思考に陥ってましたが、いま振り返ると妥当な所で落とされたかなと。

評価シートの内容を詳しく記載することはできませんが「余命をフックの1つにするのは肩透かしを覚えた」という減点要素がありました。余命設定はメインに据えていなくても風向きが厳しく、マイナスの先入観を覆せないみたいですね。

次に、仕掛けについても「現実離れしていたので咀嚼できなかった」と減点されていました。第16回のメディアワークス文庫賞作品である『[映]アムリタ』のようなリアリティラインの仕掛けを用いるなら、よほど作品の質が高くないと受賞までは届かないという事実を突きつけられましたね(そもそもこの手の作品は最近の傾向から外れてますが)。

僕が送った作品の仕掛けを簡単に説明すると『百合の片割れが病気で死に至るが、とある方法で相手の脳に自分の人格を構成して、身体を共有して添い遂げる』というものです。全項目で満点を付けてくれた編集者もいるので、仕掛けが破綻していた訳でも、手垢がついた展開でもないと思います。ただ、全員を殴るような説得力は無かったのだと痛感せざるを得ませんでした。

③電撃大賞のまとめ

現状の受賞作は『硬派で独創性が高いファンタジー』『介護や孤独死といった社会的なテーマを取り入れたライト文芸』。あと前項ではお伝えできませんでしたが『不思議な要素を含んだ青春モノのライト文芸』も多いです。これから数が増えそうなのは『女性向け市場も狙えるライトノベル』でしょうか。

とはいえ電撃大賞は予算も潤沢だと思いますし、ブームを生み出せそうな作品であればどんな内容でも受賞を狙えるのではないでしょうか。また、今年からカクヨム経由の受付が始まったので、傾向が大きく変わる可能性もありますね。

評価シートは1次選考を通過した方に配られます。内容としては具体的な改善策の提示が少なく、どちらかといえば編集者の所感が綴られる書評のようなものでした。電撃大賞の評価シートを元に作品の質を向上させるには、感想から改善点を汲み取る能力が試されそうです。

【MF文庫Jライトノベル新人賞】


次に応募総数が多いのはMF文庫の新人賞でしょう。しかし、僕はここに応募したことがありません。『小説家としてデビュー経験のない新人』に限られるからです。他の新人賞に関してはプロ・アマ問わず応募できるのですが、MF文庫の新人賞は純粋な新人が争う場です。それゆえに、アルファポリスからのデビューが内定していた新田に参加資格は無かったのです。

「じゃあお前、MF文庫の新人賞については何も知らねえの?」

はい、仰る通りです。ライトノベル新人賞におけるレーベルカラー云々と謳っておきながら、網羅している訳ではありません。しかし、新田は他のゴリラとは一味違うので、ジャングルの中から観測した所感を述べることはできます。お利口さんで可愛いですね。

①受賞作の傾向

バチクソに尖ってますよね(クソ感想)。

受賞作のあらすじを読む限りでも、他のレーベルとは明らかに違う何かが漂っている気がします。ゲスト陣が受賞作を決める選評も『めちゃくちゃ粗いけど俺は好きだ!(要約)』『減点方式では0点だけど加点方式では1000点!(要約)』のように小説ゴリラみたいな意見(褒めてる)が多く、既存の枠組みをぶっ壊すようなエンタメを描きたい人にはオススメの公募だと思います。

しかし、裏を返せば面白くても手堅く纏まった作品は不利なのかもしれません。書きたい物が明確で、荒々しくても熱量の高い作品が好まれている印象を受けます。また、設定を読むだけでセールスポイントが明確な作品や、個性的なキャラクターが登場する作品が有利な気がしますね。

個人的に僕が驚いたのは、第18回の最優秀賞『のくたーんたたんたんたんたたん』の選評で、鈴木大輔先生が応募時の梗概を加点要素にしていたことです。


僕は梗概を作るのがめちゃくちゃ嫌いで、Twitterで『地獄の入口で獄卒にやらされるヤツ』と言った過去があります。それは梗概を頑張っても選考にはさほど影響が無いからだと思っていたからです。しかし、この賞においては話が異なるみたいですね。『読めば面白い』作品ではなく『読む前から面白い』作品でないと、受賞に至るのは厳しいのかもしれません。

②評価シート

送ったことがないのでわかりませんが

①ネットではなく、応募者の自宅に届く
②到着時期のTLは阿鼻叫喚の巷と化す

情報だけは知っています。
恐怖新聞か?

③MF文庫Jライトノベル新人賞のまとめ

大した情報がなく申し訳ありません。外部から観測した所感で言えば特定のジャンルが強いというより『設定だけでも戦えるエンタメ特化の作品』『キャラクター造形に力を入れた作品』が強いと思います。また、デビュー済みのプロは参加できないのも大きな特色でしょう。

評価シートは公式ホームページのサンプルしか情報がありませんが、丁寧に、かつズバズバと切り裂いてくれるイメージですね。指摘を素直に受け入れる貪欲さと、あくなき向上心を兼ね備えている方に向いているかもしれません。

シンプルに言えばドM向きだ!

【GA文庫大賞】
 

ここは応募経験あります。自分やれます。

とはいえ1次選考で落選しています。前述した電撃大賞で4次選考まで進んだ『わたし、リコレクション。』が切り捨てられました。評価シートに関しては、後ほど掻い摘んで紹介しますね。

GA文庫大賞の大きな特徴としては、編集者の方々が応募作の感想をツイートしてくれる点でしょうか。ツイートは作品を特定されない範囲で濁していますが「これは俺の作品か?」と勘違いさせられること請け合いで、選考待ちの時点でも楽しめます。僕は自作とおぼしき高評価ツイートを見て目尻が床に届くくらいニヤニヤしていましたが、1次落ちだったので盛大な勘違でした。うおー、殺してくれ!!!!!

①受賞作の傾向

王道ファンタジーやラブコメだけでなく、第13回銀賞受賞作の『ブービージョッキー!!』のように、当時のウマ娘ブームを狙い澄ましたであろう受賞作もあるので、時流や市場を踏まえる動きが他の公募よりも大きい気がします。前述した編集者のツイートにも『商品パッケージ』という言い回しがいくつか見られたので、たとえ面白くても売り方が見えない作品の受賞は厳しいのかもしれません。

もう一つ付け加えるならば、第13回金賞受賞作の『ただ制服を着てるだけ』や第14回金賞受賞作の『あおとさくら』のように、ライト文芸寄りのライトノベルが増えている印象です。先日発表された第15回大賞受賞作の『透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした。』で、この系統を確立させるため勝負に打って出た感があります。前述した第29回電撃大賞の『レプリカだって、恋をする。』と同じイラストレーターであるraemzさんを起用したのも、青春ラノベの波を大きくしたいという戦略ではないでしょうか。

また、第15回銀賞受賞作の『ビューティフルワールド』は、あらすじを読む限りでは大賞作と同じく主要人物が大学生っぽいですね。ライトノベルの公募で、大学生設定の作品が複数受賞するケースは稀な気がします。この2作品の売上次第でレーベルの新たな方向性が固まると思うので、チェックして損はなさそうです。

②評価シート

具体的な部分まで踏み込んでもらえますが、要約すると『地の文が多い』という腑に落ちない内容でした。同じ原稿で電撃大賞に応募して、5人の編集者から評価シートを頂いた際は地の文に対する言及はなかったので「地の文が多い……とは?」と未だに咀嚼できずにいます。会話文を多めにした作品が有利なのかと思ったのですが、近年の受賞作を見る限りそうでもなさそうですし……。

こういった不完全燃焼も公募あるあるだと思いますが、もう少し的を射た選評が欲しかったなというのが本音です。全作品を読むだけでなく、評価シートまで記載するのは重労働なので、気持ちはわかるんですけどね! 

③GA文庫大賞のまとめ

受賞作の傾向としては『商品パッケージが明確な作品』もしくは『ライトノベルのキャラクター造形だけど、ライト文芸寄りの筆致で描かれたボーイミーツガール(年齢は大学生に引き上げても可)』といったところでしょうか。ただ、電撃大賞や後述する小学館ライトノベル大賞が求めるようなライト文芸とは少し違う気がします。ダンまちを排出したレーベルなので、王道ファンタジーも強いですね。

評価シートは僕には合いませんでしたが、1次選考を通過しなくても頂ける上に、そこそこの文量で具体的な部分に踏み込んでくれるのは他の新人賞には無い大きなポイントでしょう。

【小学館ライトノベル大賞】
 毎年9月末締切

通称ガガガ。

僕が初めて公募に挑戦したのが、第16回小学館ライトノベル大賞だったりします。結果は2次選考落選でしたが、とても嬉しかったのを覚えています。新田のママと言っても過言ではないでしょう。しかし、ママがいつだって優しいとは限りません。翌年の第17回小学館ライトノベル大賞では、応募した3作品(ノベル大賞最終落選・電撃大賞4次落選・オーバーラップ最終選考落選)すべてが1次選考で切り捨てられました。

あの愛情は、偽りだったのでしょうか?

①受賞作の傾向

ここはかなり明確です。応募総数は増加傾向にありますが、受賞枠は決まって5作品で、そのうち1作はライト文芸を選出するのが近年のパターンですね。その背景には、電撃大賞の選考スケジュールが影響しているのでしょう。電撃大賞で落選した作品は、締切日が近いこの公募に集まりやすいからです。

しかし落選作と侮るなかれ、第16回大賞受賞作の『わたしはあなたの涙になりたい』や第13回ガガガ賞&審査員特別賞の『夏へのトンネル、さよならの出口』のように、なぜ電撃大賞で受賞しなかったのかと首を傾げるほど高レベルな作品が普通に混ざっています。ちびっこ相撲大会に巨大ダンプカーが出てくるような理不尽さを覚えますが、残念ながら公募とはそういうものです。

あとはオリジナリティのあるローファンタジー(ダンジョン等の要素を含んだゲームっぽいものではなく、しっかりと世界観を構築したもの)と、アイディアが面白いラブコメも毎年受賞している気がしますね。ただ、同レーベルの看板作品『弱キャラ友崎くん』や『千歳くんはラムネ瓶のなか』のようなリア充(やや死語)関連のラブコメは厳しいかもしれません。ここ数年の受賞作を見る限りでは、欲していない印象があります。

②評価シート

ここは一次通過者のみに送られるので、第16回でしか頂けてないのですが、個人的にかなり響きました。ただ、めちゃくちゃ抽象的なアドバイスでしたね。具体的な改善案は全くありません。要約すると『小器用にやろうとするな』というメッセージだったのですが、当時の僕はオリジナリティを意識するあまり、色々な要素を取り入れ、形にしようと躍起になっていました。そこを的確に見抜かれた訳ですね。

③小学館ライトノベル新人賞のまとめ

求められる傾向としては『感傷を誘うライト文芸』『オリジナリティがあるローファンタジー』『アイディアが秀逸ラブコメディ』あたりでしょうか。あとは他賞では厳しそうな個性も受け入れてくれる賞でもありますね。

評価シートに関しては、抽象的ながらも心当たりが強い内容でした。反面、作品そのものに対する具体的なアドバイスを求めている方には合わないのかもしれません。

【ファンタジア大賞】

今年、35周年を迎えた老舗のレーベルですね。手前味噌で恐縮ですが、第36回前期ファンタジア大賞で僕が書いた『バックドロップ・センターマイク』が入選を果たしました。自分としては王道の青春を真正面から描いたのですが、ホームページでは新時代のラブコメと評されています。どうやら新田が予期していなかった方向に転がり、上手くいった模様です。最終選考でどうなるかはまだわかりませんが、受賞した際はこの文章を消して、いけしゃあしゃあと「作戦通りです」みたいな顔をします。

人はこうして、大人になっていきます。

①受賞作の傾向

ファンタジア大賞の特徴としては、王道のファンタジーやラブコメだけでなく挑戦的な作品も受賞している点です。第35回大賞の『VTuberのエンディング、買い取ります。』は、題材こそ流行中のVTuberモノですが炎上ビジネスや界隈の闇に踏み込んだ意欲作でした。

また第24回後期金賞受賞作の『空戦魔導士候補生の教官』、第26回大賞受賞作の『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』を筆頭に『アサシンズプライド』や『スパイ教室』といった教官モノが定期的に受賞している印象も強いですね。とはいえ、この傾向は長年続いているので、半ば飽和状態にあるかもしれません。受賞に至るには、既存作とは大きく異なる要素が求められるでしょう。

あとは『青のアウトライン 天才の描く世界を凡人が塗りかえる方法』のように、ライトノベルではあまり見ない角度で青春を描いた作品も受賞していたりします。僕はこの作品があったからこそ、お笑いの世界を本気で描いた青春モノをファンタジア大賞に出そうと決心し、入選を果たしました。部活動の域を超え、青春の全てを何かに捧げた作品は、一定の需要があるのかもしれません。

②評価シート 

ファンタジア大賞は1次選考通過者に評価シートが送られるのですが、僕の応募作は1次選考落選&入選という両極端すぎる結果だったので、どちらも該当せず評価シートは頂けませんでした。役立たずとは僕のことです。

聞くところによると、5項目が10段階で丁寧に評価されているみたいですね。はい、情報通みたいな言い方をしていますが『ファンタジア大賞 評価シート』でツイート検索しただけです。穀潰しとは僕のことです。

③ファンタジア大賞のまとめ

受賞作の傾向として『流行の要素を押さえつつ挑戦的な作品』『新規性のある教官モノ』『熱量が高い青春モノ』あたりでしょうか。もちろん、ファンタジー作品もかなり強いです。

また、評価シートに関してはツイートで検索するなりして情報を集めましょう(放棄)。

【スニーカー大賞】

あの『涼宮ハルヒの憂鬱』を輩出した角川スニーカー文庫の新人賞ですね。米澤穂信さんの『氷菓』も、実は角川スニーカー文庫から刊行されてたりします。ただ近年の受賞作は様変わりしており、上記で紹介した新人賞とは少しだけ毛色が異なるかもしれません。ここは応募経験がないので、ジャングルゴリラの独断と偏見に満ちた分析となっております。

①受賞作の傾向

第27回で12年振りの大賞作品となった『我が焔炎にひれ伏せ世界』は異世界転移作品でした。個性豊かなキャラクターが異世界を満喫するのは同レーベルの看板作品『この素晴らしき世界に祝福を!』の系譜ですね。

とはいえ、近年の異世界転移は飽和状態というより流行が過ぎ去った状態なので、出版社の新人賞で異世界転移モノが受賞するケースは極めて稀と言えるでしょう。同じ雰囲気の作品を送っても厳しいはずです。基本的には、どの回の選評を見ても『個性的な作品』を求めている印象を受けますね。

ただ、MF文庫のように尖った受賞作は少ないので(あるにはありますが)、既存ジャンルに新しいエッセンスを少し足した作品が好まれていそうです。前述した『我が焔炎にひれ伏せ世界』もそうですが、ベースに関してはカクヨムのランキングで強そうなファンタジーやラブコメの要素を取り入れるのが無難かもしれません。他の新人賞よりも少しweb寄りの受賞作が多い印象を受けるのは、カクヨムからも応募できる賞ならではの特色でしょうか。 

あとは『氷菓』と縁が深いレーベルらしく、少しほろ苦い要素を含んだ青春ミステリーも定期的に受賞している印象です。この系統が好きなので、もっと増えて欲しいですね。

余談ですが、スニーカー文庫から出版される小説は「性的なタイトルが多すぎる」と話題になりがちです。とはいえ、これらは主にカクヨムで拾い上げされたラブコメなので新人賞には求められていないでしょう。しらんけど。

②評価シート

ここは1次選考を突破した方に届くみたいですね。文章力やストーリー等の項目が採点されるだけでなく、長文で綴られる総合コメントもいただけます。作品の強みや、心に残ったエピソード等を具体的に記載してもらえるので、しっかりと精読した上で選考している印象を受けますね。改善点に関してもズバズバと切り裂くようなドM向けの書き方ではなく「とても良かったけど、ここをこうすればもっと良くなるよ!」といったスタンスなので、かなりモチベーションが上がると思います。

③スニーカー大賞のまとめ

受賞作の傾向は『webでもウケが良さそうなファンタジーやラブコメ』『少しほろ苦い青春ミステリー』あたりでしょうか。編集部が掲げる『個性的な作品』を読み違えないようにする必要はあるかもしれません。

評価シートに関しては1次選考突破が条件になりますが、全体的に丁寧な内容なので評価シートを目的に挑戦するのも良いかもしれません。

【オーバーラップ文庫大賞】
 

webを主戦場にしている人は、小説家になろうで開催されるオーバーラップweb小説大賞のほうが親しみ深いかもしれませんね。

①受賞作の傾向

基本的にはファンタジーとラブコメが強い印象を受けるのですが、ジャンル云々というより好きな要素を詰め込んだ際の熱量が重視される新人賞なのかなと思います。もちろん構成技術や文章力も評価対象ですが、講評を読む限りは、勢いが決め手になる印象を受けます。

第9回金賞作品の『スペル&ライフズ 恋人が切り札の少年はシスコン姉妹を救うそうです』はローファンタジーですが、どちらかといえばバトル描写や世界観よりもヒロインを可愛く魅せる技術と熱量が高く評価された印象を受けます。第9回銀賞受賞作の『落ちこぼれから始める白銀の英雄譚』に関しても、作者が好きな『ヒーローもの』という要素を取り入れた熱量が評価されています。他の新人賞も同じではありますが、最後の決め手となるのは愛と熱意なのかもしれません。というのも、第10回オーバーラップ文庫大賞の最終選考で僕の『毒を食らわば月の裏まで』が落選したのが一つの判断材料になったからです。

もちろん全力で書きました。キャラクター造形とストーリー構成は試行錯誤を重ねています。ただこの作品は「1作くらい現代ファンタジーの手持ちが欲しいな」と思い立って書いたのが経緯というのもあり、設定の練り込みや作品に対する熱が不足していたのです。事実として、関係性のカタルシスとストーリー構成は評価されましたが、設定の甘さを編集者全員に指摘されています。そればかりか『現代ファンタジーである必要性が薄い』としっかり言及されてしまいました。現代ファンタジーを書くという目的だけが先行したのを見抜かれた格好ですね。

この辺りは後日投稿する記事で詳しく語りますが、新人賞において『手堅くまとめただけの作品』は高次選考止まりのケースが多いです。僕の作品も最終選考作とはいえ、受賞は遠かったのではないでしょうか。

②評価シート

ここはかなり珍しく、各選考が終わる度に評価シートが頂けるシステムです。5項目が5点満点で評価され、それぞれの項目に3~4行ほどのコメントがついてきます。短さゆえに具体的な改善案はいただけませんが、改稿の方向性は示してくれるのでかなりオススメです。辛辣な言葉選びも少ないので、腕試し感覚で挑んでみるのもアリかもしれません。

③オーバーラップ文庫大賞のまとめ

受賞作の傾向については『王道ながらも作者の熱量を詰め込んだ作品』がとにかく強いと思います。ジャンルの有利不利はあまり無い気がしますね(流石にライトノベルで厳しい題材は取ってませんが)。小説家になろうで開催されるオーバーラップweb小説大賞にも力を入れている影響か、時流や市場はそこまで意識していない印象さえあります。

評価シートは各選考毎に頂けるシステムを採用しているので、満足度がかなり高いです。仮に一次落選しても評価シートを頂けるので、初心者にもオススメだと思います。

▶結局、どこを選べばいいのか

くぅ疲。

まだ紹介できていない賞も幾つかありますが、各レーベルの傾向についてはここで終わりにします。もう10000字以上書いてるのヤバいですね、読んでる方々もヤバいですが(シンプル暴言)。

しかし、もう少しだけ続きます。僭越ながら受賞後を見据えた選び方にも触れておきたいのです。「お前はまだ出版社の公募で受賞してないじゃん!」とお叱りの声が聞こえてきそうですが、僕に罵声を浴びせた方々は数日後に原因不明の死に至ります。怖いですね。

さて、本題に移ります。

新人賞に応募する理由は様々ですが、多くの方は『売れっ子作家になりたい』や『自分の性癖で多くの方を刺したい』だと思います。その夢を後押ししてくれるのが新人賞ですが、当然ながら出版社は慈善事業ではありません。受賞作とはいえ売れない作品は容赦なく打ち切りになります。そして、面白い受賞作が売れるとも限りません

沢山の娯楽が安価で楽しめる現代。可処分時間の奪い合いという観点では小説、とりわけライトノベルはかなり不利だと断言できます。そんな状況下でも、書店には沢山の書籍が並びます。もはや面白い書籍を陳列するだけでは、売れない時代になっています。

そこで重視したいのは、受賞作のプロモーションをどれだけ大規模で行ってくれるか・仮に打ち切られた場合は次があるのかです。

プロモーションの規模は売上に直結します。書店の売り場面積だけでなく、ネットや雑誌の広告、声優を起用した動画等を確認すれば、各レーベルの予算や新人賞に対する力の入れ具合が把握できるかと思います。
 
プロモーションの規模以外だと、続刊ラインが低めだと編集者が公言しているガガガ文庫(小学館ライトノベル大賞)や、大賞は3巻まで出版が確約されているオーバーラップ文庫など、サポート面で選ぶのもアリだと思います。その他についても、編集者や受賞作家のSNSをチェックしていれば、なんとなく特徴は掴めるでしょう。これらの要素を総合的に加味しながら、自分に合いそうなレーベルを中心に攻めていくのが得策だと思います。

とはいえ、好きなレーベルがある人はそこを狙うのが一番だと思います。受賞歴があればライティングの仕事が舞い込むケースもあるので、倍率が低めの新人賞を狙って作家としての地盤を固めるのも戦略の一つです。絶対に正解だと言えるルートは存在しないので、各々のスタンスに基づいて年間スケジュールを立ててみるのがオススメです。

ちなみに僕は応募総数が多い新人賞から応募総数が少ない新人賞へと流すように、作品を動かす意識はしていました。ライトノベル新人賞においては、基本的に原稿の使い回しを禁止されていません。どこかで落選した原稿が受賞するケースだって多々あります。なので、一度の落選で「これは駄作なんだ」と悲観せず、ガンガンいっちゃいましょう。

あと稀に前期と後期で有利不利は発生するのか?という考察を見かけますが、どちらかといえば前期で応募したほうが良い気がします。理由としては『前期の入選作と同じジャンル・切り口の作品は求められない可能性がある』『前期の入選作が多かった場合、後期は数を絞られる可能性がある』からです。とはいえ、この辺りは原稿が良ければ関係なく殴り飛ばせる部分だと思うので、一概に後期だから不利とは言えないですね。

▶最後に

色々と語りましたが、この記事の内容が全部間違っている可能性もあります。どんな作品が求められるかは結局のところ選考に携わる編集者にしかわからないからです。僕が片っ端から受賞作を読んで研究しないのはこれが理由です。極端に言えば、去年の受賞作ですら古いと見なされる可能性だってあります。

訳知り顔で出版社の内情を呟く方も見かけますが、あくまでも参考程度に留めたほうが無難です。鵜呑みにして執筆期間を棒に振っても、責任なんて取ってくれませんから。もちろん僕も取りません! 自己責任で試行錯誤して、公募を楽しみましょう。

受賞したら皆で焼肉に行って、レジ横で貰えるガムを噛もうな!!!!

最後に自著の宣伝をしておきます。
無料の記事だから許してくれ!!!!!!!!

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