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Apple Vision Proがビジネスにもたらすインパクト

本記事は、MESONで実施中のApple Vision Pro 1ヶ月記事投稿チャレンジ2月28日の記事となります。
昨日の記事は、こちらになります。


はじめに

初めまして。空間コンピューティングを主軸に、パートナー企業と共同でプロダクト開発を行う会社MESONにて、ディレクター職を務めている、田上と申します。

職責としては、いわゆる開発マネジメントも行うのですが、その前段のプランニングやビジネスモデル設計、更にその前段として、XRや空間コンピューティングがパートナー企業やその顧客の生活にどのような影響を与えるのかのワークショップ・勉強会・議論も行っています。

本日の記事は、空間コンピューティングデバイスやXRデバイスが、ビジネスにどういう影響を与えるかについて、自分が普段どのように考えているかを簡単にご紹介できればと思います。


そもそもVision Proは市場インパクトを持つのか

この点については、本記事投稿チャレンジの中で弊社COOが触れておりますので、そちらをご参照いただければ幸いです。一節を抜粋するのですが、例えば以下の文章はVision Proのビジネス観点でのポテンシャルを非常に分かりやすく説明していると思います。

Appleは過去にiPod、iPhone、iPadといった製品を通じて、新たなカテゴリーの製品を市場に導入し、一般消費者の技術受容度を大きく変えてきました。過去の製品が示したように、Apple社はユーザーフレンドリーなデザインと直感的な操作性で、高度な技術を一般消費者向けに広めることに幾度も成功しています。

また、企業としての向き合い方も抜粋いたしますと、以下のように記されています。重複説明は不要と思いますので、引用することで割愛いたします。

短期ではボラティリティが大きく、中長期では市場成長の可能性が高いこの領域では、
長期的な視点を持ち投資継続しつづける前提で
取り組みによって得られたアセット(知財、人材、データ等)を積み立て、
事業投資の矛先にメリハリをつけてリスク分散する
という向き合い方が有効ではないでしょうか。

数千万円の予算獲得はすぐに出来なくとも、専任チームもしくは個人にミッション設定してプロジェクト化することは難しくないのではないでしょうか。

そのプロジェクトでの検討を以て「いつどのような状況になれば、事業参入・テクノロジー導入する」といったような見解をぜひ持って頂きたいと考えています。

となると、改めてこのnoteにて何に言及するかですが、向き合った際に何を検討するのかについて、自分が普段考えていることのさわりだけでもご紹介できればと思います。



スマホから類推して考える

Vision Proを始めとした新しいデバイスが世の中に浸透したという前提で、各業界のビジネスモデルがどのように変わるのかをまず考えます。過去からの学びとしてスマホの時どうだったかを考えてみましょう。

言うまでもなく、携帯電話の製造メーカーは大きく影響を受けたでしょう。製造すべき携帯電話そのものが大きく変わったはずです。いくつか新しい技術開発も必要だったかと思います。
関連する部品メーカーも大きく影響を受けたことでしょう。新規製品も必要になったでしょうし、場合によっては海外の携帯電話メーカーという新規顧客の開拓も必要になったかと思います。

では、その他の業界はどうでしょうか。最終的には大きく影響を受けましたが、すぐに、致命的なほど影響を受けたのでしょうか



仮説:「新興企業の誕生」や「生活の変化」の後に影響があったのではないか

上記の仮説に至る過程について、少し古いですが「BOPIS」という事例をベースに考えてみます。

注釈:
その業界にてどのような変化が当時起きていたのか、外に居る私よりも中にいた方々の方が詳しいと思います。事実や読んでいただいている方のご認識とは異なった内容も含まれているかと思いますが、あくまで考え方としてご理解いただければ幸いです。

BOPISとは、Buy Online Pickup In Storeの略称で、オンラインで購入した商品を実店舗で受け取る(ピックアップする)ショッピングスタイルを指します。日本ではワークマンやユニクロ、無印商品、しまむら辺りが導入企業として有名でしょうか。

このスタイルを利用されていない方には少し不思議なスタイルかもしれません。ネットで注文したのにわざわざ店舗で受け取るの?と。
企業側のメリットは想像しやすいと思います。配送コストを抑えたり、店舗に来ていただくことで別商品の購入を促進したりできます。事実、客単価が向上したというデータも多く知られています。
顧客側のメリットですが、配送料が不要になること・配送での受け取りは意外とタイミングを選べないこと(=店舗受け取りなら自分のタイミングで受け取れること)に加え、「その場で説明を受けたり返品できたりすること」が挙げられます。

個人的には、自分で使ってみるまで3つ目が意外でした。
そもそもネットで服を注文する場合、自分がよく使うブランドでサイズ感や色合いが想像できる場合が多いでしょう。その上で色違いを買うとかそういうことが多いのではないか、と。とはいえ、購入してみると色合いが思ったのと違うなどして返品が発生することがあります。それが面倒なこと面倒なこと。なので、店舗で受け取る際に見て、かつその場で返品できるのが顧客視点ではメリットになるのです。

その場で返品できるという仕組みは、一見返品率を上げてしまう仕組みですが、企業視点でも結局はメリットになるのです。顧客満足度が下がりそもそも購入しなくなることの方が問題ですし、一度カスタマーセンターを挟むリモートでの返品の方が手間が大きいのです。

という次第で、BOPISというスタイルに至るわけです。

BOPISに至るまで

ではここで、スマホが出た直後に戻ってみましょう。果たしてBOPISというスタイルを打ち出したとして、浸透したでしょうか。個人的にはNOだと思っています。

  1. ECサイトやECアプリによるオンライン注文が習慣として浸透していたこと

  2. 食品や料理において、Grab & Goという取り置き注文の考え方が浸透していたこと

  3. スマホ自体が、SNS/動画サイトなど複数の目的で使われるようになったこと

などなど……
こういった変化の後だからこそ見えた顧客ニーズであり、その後だからこそ打ち出せたスタイルかと思います。

ここで冒頭の引用した文に戻ります。言い換えれば、今すぐ新しい即効性のあるビジネスモデルを考えるのか、それとも新デバイスの使われ方を長期的にウォッチしいつでも変化に対応できるようにするのか、という論点になるかと思います。
スタートアップを立ち上げるなどであれば前者かと思いますが、個人的には、おそらく日本の大きい企業であれば後者の方が適しているのかと思っています。

短期ではボラティリティが大きく、中長期では市場成長の可能性が高いこの領域では、
長期的な視点を持ち投資継続しつづける前提で
取り組みによって得られたアセット(知財、人材、データ等)を積み立て、
事業投資の矛先にメリハリをつけてリスク分散する
という向き合い方が有効ではないでしょうか。

数千万円の予算獲得はすぐに出来なくとも、専任チームもしくは個人にミッション設定してプロジェクト化することは難しくないのではないでしょうか。

そのプロジェクトでの検討を以て「いつどのような状況になれば、事業参入・テクノロジー導入する」といったような見解をぜひ持って頂きたいと考えています。

どう備えるのか

では、ミッションが与えられた専任チームや個人はどう備えるべきなのでしょうか。変化が訪れるのを待つだけでは不十分だと考えています。

再度、BOPISを例に検討してみましょう。当然ではありますが、Webサイトやアプリを作って終わりではないのが分かるかと思います。日本でDXというと、社内オペレーションのコストカットの事例が多いかと思います。しかし本来は、各種デジタル技術を伴う新規サービス・スタイルに合わせてオペレーション全体が変わるものも含まれます。

またこの例の個人的に特徴的だと思っているのは、ECによるオンライン注文を実装することにより見えた顧客ニーズだという点です。実際にやってみないと分からないというものです。



もし自分が、今ミニマムに備えるための取り組みを進めるなら、大きく2つのステップを行います。
1つ目は、そのデバイスが浸透した時に顧客がどのような生活をしているのかのイメージを持つことです。いわゆるSFプロトタイピングと呼ばれる手法です。
大事なのはデバイスだけで考えるのではなく、関連する技術(AI)やその他の業界トレンド全体も含めて、総合的に未来を考えることです。
2つ目は、実際にPoCを作成して、小規模な実験を行うことです。オペレーションにどういう変化が発生するのかなどは、実際に実験をしてみることでしか網羅できないと考えています。また、実験に成果が出れば、それが実際に事業立ち上げやサービスモデルの変化を社内で説明する際にも有用になると考えています。

大変恐縮ながら、Vision Pro向けのアプリを作るのみでなく、大きく社内の各種モデルも変えるほどの覚悟で取り組む必要があるというのが素直なところです。



むすびに

さてここまで大変偉そうに語って参りました。

"Appleがようやく出したXRのデバイス"という触れ込みに引きずられると、それに思考が集中してしまうかもしれません。しかし落ち着いて引いてみれば、あくまでDXの1つです。ビジネス観点では、その視点で取り組んでもらうのが良いと、個人的には考えています。

そして言うまでもなく、DXの難しさは認識しています。現場から上層部まで全体を巻き込み実行できなければ難しいことを、よく理解しています。だからこそ、今すぐ膨大な投資をではなく、長期で計画を立てる必要があると考えていますが、一方でそれが難しいということも理解しています。

MESONの宣伝のような結びになってしまうのですが、とても辛抱強さが求められる取り組みであり、だからこそパートナーとして共に戦っていきたい。そういう想いで日々プロジェクトに取り組んでおります。
SFプロトタイピングを始めとしたプランニングからPoC制作まで、今できる準備を共に実施できる体制は整っておりますので、ご興味のある方はぜひお声掛けいただければと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。



ダイレクトな宣伝

弊社は空間コンピューティングの社会実装に取り組む会社です。
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