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光栄なこと

正月号の日豪プレスの表紙の書を書かせていただいている。オーストラリアの日本人コミュニティの皆様の最初に目にする書が自分の手によるものであることは非常に光栄なことである。

「何? れんって誰だよ、知らねえよ」
「ほら、ショカの」
「何? ショカ? ショッカー?ちんぴらか?」
「どうしてショッカーがチンピラなのよ。」
「悪の手下はチンピラだって相場は決まってらぁよ。空手桃色帯の俺がとっちめてやる」
「とっちめるって、ちょっと。しかも桃色って、そんな帯ないわよ。空手なんてやったことないじゃない。えせ空手家名乗るのはやめてちょうだい。そもそもショッカーじゃないわよ、ショカよ、ショカ。」
「ショカってなんだよ、ショカって。夏の初めか? てやんでー、お前な、時の流れをなめちゃいけねえよ。もう正月だよ、シドニーは真夏よ、真夏、夏真っ盛りじゃねえか。」
「あんたはバカなの。人間のことで話してるでしょ。夏の初めなわけがないじゃない。」
「じゃあ何だよ、ショカって。ショカってなんでしょか、ってきたもんだよ。」
「イライラするわ。シュウジよ。シュウジはわかるでしょ」
「ああ、2丁目の魚屋の次男坊だな。なんだっけ、チューチューバーになりてえとかいってるとかで、オヤジが困ってたぞ」
「チューチューバーって何よ、チューチューバーって。あんたの脳は耳に聞こえてきた言葉の吟味ってやってんの?ユーチューバーでしょ、ユーチューバー。」
「チューチューバーでもユーチューバーでもそんなもんはどうだっていいんだよ。」
「よくないわよ。チューチューバーってあれでしょ。真ん中でぽっきんって折ってチューチュー吸うアイスでしょ。」
「馬鹿だね、お前は。あれはチューペットっていうんだよ、チューペット。なんだよ、チューチューバーって、ベロベロバアみたいに言うんじゃないよ」
「キーッ!! あんたがユーチューバーをチューチューバーって言ったんじゃないよ。ユーチューバーも知らないくせに偉そうに言うんじゃないわよ。」
「アイスの話なんかどうでもいいんだよ。」
「アイスの話なんかしてないわよ。ユーチューバーの話よ。インターネットで動画投稿すんのよ。動画投稿。」
「ええーっ、リンガーハットで増加毛根?」
「あんた、本当にそう聞こえた? 本当にそう聞こえたの? リンガーハットで増加毛根って、全く意味が分からないわよ。長崎ちゃんぽんをどうしたいのよ。インターネットよ、インターネット。 」
「ああなんだよ、インターネットかよ。かーっ、人間は汗水たらして働いてなんぼのもんじゃねえか。やだねえーそんなもんが流行るから活字離れが進むんじゃねえかよ。新聞を読めよ、新聞を。」
「偉そうに言う前に耳鼻科に行ってきなさいよ。聴覚が異常よ。何が増加毛根よ、もう無理よ、あんたのは。」
「うるさいうるさい。お前には人の情けってものがないのか」
「情けないのがあなたの頭なんでしょ。みなさいよ、あなたの毛根。あなたの毛根がベロベロバアなのよ。」
「まだベロベロバアを引きずってんのか。なんだその言い草は。そんでもってその顔。お前には品ってものがないんだよ。品が。ああもうインターネットなんて虫唾が走るんだよ。新聞はどこだ、新聞は。日豪プレスの、新年号。」
「ああもう、イライラするのは私のほうよ。品の話をあんたにされたくないわよ。はいもうこれ、ほら日豪プレス。さっきもらってきたのよ。私まだ読んでないのよ。」
「うるさい貸せ、もう。ああ、ほら見ろよ、この表紙の、この品のある字。こういうのを見て心を洗えよ。うーん、こういうのは家系なんだろうな、血だな血。」
「あら、それ、れんさんの字よ…」
「え、便座の血?」
「あんたーー」


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