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夢幻鉄道 9 希死念慮

ある日、誰かが見ている夢に、迷いこむ。

それが、夢幻鉄道の、エピソードとなる。

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私はカウンセラーの仕事をしている。 

三度目の鬱病再発で、仕事を再度休職することになった会社員の診察を担当した。

「とにかく起きてると死にたくなっちゃうんです。」と患者は繰り返す。

俯瞰でみても、これはどん底モードに入ってる。本当はパートナーが側にいて、死なないように見てあげる必要があるのだか、家族関係は最悪のようだ。

どん底の時は、自殺は実行できない。少し気力が戻った時、実行してしまう恐れがある。とにかくまずは休養が必要だ。2週間後に再診察の予約を入れ、安定剤と睡眠薬を処方した。

その夜、私は患者である彼女の夢の中に入ってしまったんだと思う。あれは。

死にたいという鬱特有の希死念慮 を体感してしまった。

死にたい、ビルから飛び降りたい、踏切に入りたい、とにかく誰かに背中を押してほしい、最後の一押しを待っている、苦しい、このまま息がとまればいいのに。何かのきっかけを待っている。

安定剤と睡眠薬を飲んだのに、なぜかふらふらと起き上がり、夜中にSNSを見てしまう彼女の体を、私は、とにかく布団に連れていき、横にならせた。そして、唱えさせた。

『私は今のままで十分価値ある存在です。』

なかなか、言えない。心に思っていないことは、無意識に口が発声を拒否する。

『私は自分らしく、自分にしか出来ない生き方をしていきます。』

『私は自分の命を精一杯まっとうします』

『有難うございます』

なかなか口が開かない。仕方ない。

これで1ヶ月風通しのよい場所で休養したら、 自分のパワーが戻って来るよ。

自分の中に無限の宇宙のパワーが宿っているんだよ。

だいじょうぶ。なんとかなるよ。

全ては完璧なタイミングで起こるべくして起こっている。この先に、まだ見ぬ素晴らしい出来事が待っていて、それをあなたの魂は、心の奥深いところで知っているのですよ。

とにかく1ヶ月、休養して。

不安や焦りは、再診察の時に吐き出してね。

私には守秘義務があるから、貴女が話した内容を貴女の同意無しで公にしないからね。

彼女は言う。「先生、安心で安全なここ(夢の中)で、また明日も会いましょう。そしたら明日までがんばれる。それを14回積み重ねて、診察に行きます。」

私「そう、それがいいね!明日、夢で会いましょう!」

これは、約束が大事なんじゃなくて、明日もまた会いましょうと前向きな発言が出来た彼女を尊重したことが大事なんです。

尊重されたと感じることが出来た彼女は、きっと自分軸を取り戻していくだろう。

人が心を病んだとき、死ぬのか、生き抜くのかはたった一人でいいから、寄り添ってくれる人が存在するかどうかが岐路となるように思う。

これを読んでいるあなたも、何かのきっかけで心を壊してしまうかも。

その時は思い出して。

まだ出会っていないあなたの心友が、世界に一人必ずいる。あなたと出会うのを待ってるから。どん底の今は息だけしてて。消えないで。

~おわり~





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