夢幻鉄道 2 傘
ある日、誰かが見ている夢に、迷いこむ。
それが、夢幻鉄道の、エピソードとなる。
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お休みなさい、と言って彼女はとなりで寝た。しかし、どうやら、静かに泣いているようだ。
顔を臥せているところを見ると、
気付いて欲しい訳ではないんだな、と察するが、はて、僕はどうしたらいいのか、さっぱり分からない。そのまま睡魔に抗えず、眠ってしまった。
僕の夢の中に、彼女がいた。
『ねぇ、なんでさっき泣いた?』
『分からない。ただとても悲しいの』
『何がそんなに悲しいの』
『…』深い沈黙に沈んでしまう彼女。
しかし、内面は凄まじい嵐がふきあれているようだ。そりゃあ、疲れてしまって、涙がでてしまうだろう。
『かんがえないで。目をつぶるんだ』
『それは、とても難しい修行だね』と彼女はやっと笑ってくれた。
突然、場面展開し、僕は雨のそぼふる道端に立っていた。
僕が出会う前の彼女のようだ。
彼女の顔面に傘が降りおろされた。
一回、二回、三回、暴行が続くのに、彼女はしっかり相手を見つめたまま、その場にフリーズしている。
僕はあわてて駆け寄った。
そして、僕の傘を彼女にさしかけてあげた。
他にしてあげれることがない。かけてあげる言葉がみつからない。
彼女は僕の方を見てこう言うんだ。
『傘って、本来の使い方は、こうですよね』
『あきらめが、やっとつきました。
あなたが、傘をさしかけてくれたこと、一生、忘れません。有難う。』
そこで、僕は目が覚めた。
さっき泣きながら眠りについたはずの彼女が、僕をやさしく見つめている。
『さっきは、夢の中で傘に入れてくれて、どうもありがとう。もう、悲しくなくなった。』
~おわり~
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