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夢幻鉄道 6 ツレがウツ

ある日、誰かが見ている夢に、迷いこむ。

 それが、夢幻鉄道の、エピソードとなる。  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『ツレがウツになりまして。』ってマンガや映画があったよな。。。

最初に私の頭をよぎったのは、それだった。

だって、ツレがウツになったから。(そのままかーいっ!)

そう、そのまま、あの作品通りだ。本当に彼は寝床から出てこない。そっと見に行く。声を出さずにただダラダラ、ハラハラと涙を流していたりする。

えっーと、なんだっけ。確か、頑張っては禁句なんだよな、、、ウツ病の人や、ウツ病から復活された人と職場で接したことは、ある。でも、家族では初めてだ。

私「ゆっくり休んだらいいよ。」

ツレである彼「あ、り、が、と、う」

私「で、治ったら夏祭り一緒に行こ!」

彼「う。 ん。(沈黙が続く)」

ん?彼は薬が効いたのか眠りに落ちたみたいだ。今は眠らせてあげよう。そういえば私も何か疲れたな。大好きな笑顔が見れないからな、寂しいんだよ、私だって。

彼の背中に(彼は私の方を見て寝なくなってしまったから、いつも背中しか見えない)、自分の背中をくっ付けて、昼寝することにした。

彼「鬱病が つらい」

私「なぜ?」

彼「すご く 深い 海底に 潜っ ている みたい 水圧が すごい 体も 痛い 何より 息が 出来 ない」

私「そうなの?」(彼が久しぶりにしゃべってくれるのが嬉しくて、黙って聞き役に徹している。あ、これ、彼の夢の中かな?と思い始めた。)

彼「水面 の 明るい所 に 君が見える 俺は 深い所 にいる 君に 触れ ない 君に 近付き たい 必死に もがく 余計に どんどん 落ちて いく 海底は 底無し なんだ」

彼は暗い目で続ける。

彼「海の底 は 音も なく 動く ものも なく 暗い けど 悲しい こと もなく て 心地が 良い そのうち 君が 遠く 見えな くなる 浮かび 上がる 理由が 見つから ない」

私(これは夢の中やから何でも出来るはずや。思うたことは何でも!)

私がやったことは、なんと、イルカになって、ツレである彼に会いに行った。(以前、野生のイルカに会った経験から、一度イルカになってみたかったんだよねー。)

イルカの私(以下イ)“どんなに深く潜ってしまっても大丈夫よ。深過ぎて、海の青が漆黒になってしまっても。青空が思い出になってしまってても。私は超音波であなたを探し出せるから。”

イ“迎えにきたよ。手(正確には胸ビレ)を繋ご。何も考えずにクルクルって一緒に回ろ。私たちは地球の流れの一部なんだ。ただ、ダンスすればいいんだよ”

イ“(あ、彼がちょっと笑った?いい調子じゃん。さすが私!)このまま手を繋いで浮上しよう!”

彼「そんな 簡単じゃ ないんだ!!」

思いがけず、激しい抵抗に驚く私。

は!?せっかく人が助けにきたのに、何だよっと思いかけたけど、その程度の私の不機嫌なんて、彼の目の暗さにぞっとして吹っ飛んだよね。

彼「君にとって簡単なことでも、今の俺には遠いんだ。君が思う1ヶ月先の夏祭りなんて、俺には遥か遠く、永遠なんだ。

時間が過ぎるのが、とてもスローなんだ。

薬で眠っても、起きたら1時間しか経ってないんだ。また、服薬して寝る。それなのに、また1時間しか過ぎてなくて絶望するんだ。720回の絶望を経たら、夏祭りだ。果たして俺は、その時、元気に夏祭りに行けるのか?行ける気がしない。

そんな先のことを考えられない。

今は、1時間先の自分も分からない。」

イ(彼が怒りの感情を現したことで、言葉が前より流暢に出ているなと気付いた。ちょっと、かまをかけてみよう。)「私は今、一緒にいない方がいいってこと?」

彼「君の負担になりたくない。負担になるくらいなら、いっそ消えたい。」

イ「分かった。負担じゃないんだけどな。

君は信じられないみたいだけど、私は君が、浮上するって信じてるから。

君が、浮上するまで、待ってるから、じゃあね。行くね。」(イルカである私は、振り向かないで泳ぎ去った)

でも、ちゃんと、空の青さが感じられる程度の浅さまでは、彼を引っ張っておくことは忘れなかった。

青空が感じられたなら、思い出してくれるはず。同じ空の下で、同じ日の光を感じながら、同じ空気を吸って、同じものをみたよねって。一緒に笑ったり、感動したり、これからも二人で過ごしていけたら最高だよねって。

夢から覚めた私は、彼の様子をさぐる。

変わらず眠っている彼。時計を見ると

3時間ぶっ通しで寝ているようだ。

心なしか、顔色も良い。

わずかだが、前進していると感じられたから、眠り姫と化した彼も、いとおしい。

人生で、そんなときもあるよね。

全て宇宙からみたら、些細なことだ。

消えたいだの、死にたいだの、言わせとこ。

きっと、彼は自分の力で戻ってくるから。

そう思えた不思議な夢のお話でした。



















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