夢幻鉄道 8 天使
ある日、誰かが見ている夢に、迷いこむ。
それが、夢幻鉄道の、エピソードとなる。
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俺なんか、どうせこの世にいてもいなくても、同じだ。
嫁もいないし、子どももいない。ちなみに結婚歴も×もない。
週末の楽しみと言えば、大型家電量販店で、さまざまな家電を見てあるくこと。
そんな趣味に付き合ってくれる人、いたらいたでメンドクサイから、俺は独りでいいんだーと、いつもの日曜昼下がり、俺はふて寝を決め込んだ。
どれくらい経った頃か、女性の声で「天使さんっ」と聞こえた。
その声は続ける。「先ほどは、ヤマ○電機で有難うございました。本当に困っていたのです。あなたが助けてくれました。あなたは、私の天使さんデス。お礼が言いたくて。」
なんか頭おかしいやつおるな。誰が絡まれとるんかなと好奇心で、目をやると、、、そこには誰も居なくて、俺だけ。その女性とバッチリ目と目があってしまった。
「はっ?僕?(他人には俺じゃなくて、僕って言うんだよ、俺w)」
女性「はい、あなたです。」
「僕、あなたに何かしましたっけ?」
お礼を言われるよーな事した覚えが、ない。
女性「TVにつける端子コード。定員さんに聞いても分からなくて、困っていたら、あなたがご親切に、適切なコードを教えてくださいました。そこに陳列されていた短いコードを買おうとした私に、あなたは少し遠くの棚を指差して言ったんです。『値段が同じだから、どうせなら、1.5メートル以上あった方が、今後模様替えした時にも使えるし、いいんじゃないですか?』って」
俺「はあ。」
(まあ、言ったけど、なんかこの女性大げさじゃね?)
女性「大げさだと思われると分かってたから、現実世界では、『本当に助かりました。有難うございます』と頭を下げるしか出来なかったのが心残りで。」
あとは言葉ではなく、映像が流れた。(夢って便利だな笑)
・古いアパート 壁のTV端子が旧型過ぎて現在販売中のTVに着いてるコードが合わない
・引越は終わったものの、TVが映らないという状態で過ぎる数ヶ月
・TVでは災害のニュースばかりだから、もう見たくない。これでいいとラジオで過ごす。
・週末のとあるテレビ番組を見るという宿題が、女性の子どもに出た。女性は子持ちだ。
・頼れる知り合いはいないし、近くの電器店は対応しないというし、見てもいいけど解決できなくてもお金は頂くと言われ、、、何かもう、断崖絶壁に追い込まれた気分で、雨の中、ヤマ○電機まで走る彼女。
・ここでも解決できなかったら、どうしよ。子どもがみじめになる、独りで解決しなきゃ。雨粒に涙粒がまじる横顔。
・彼女は、壁の端子の写メに加え動画も、TVの取説、現在のコード、全てを持って行ったのに、店員さんは、分からないと回答
「やりとりをたまたま横で聞いてたあなたが、最適な解決策を秒でくれました。
行動したら天使さんに会えた。被災後の数ヶ月で、初めて神様はいると思えた大きな出来事でした。あなたにとっては小さな忘れちゃうような事でも。こうして夢の中で、直接お礼言えて良かったです。」
そう言う彼女の瞳に映る俺は、、、、、、、俺の知らない俺の顔をしていた。
今回のように、自覚がなくても、自分が誰かの天使であり得るんだな。
あなたに今日助けていただけなかったら、折れてしまっていたところでした。。。
声ではなく彼女の想念がふわりと僕を包んだ。
人は、一人だけど、独りじゃない。
一人と一人が時々交わり、助け合ってる。
その事に気付かせてくれて有難う。
被災して無力だと思っている貴女こそ、わざわざ夢の中までお礼を言いに追いかけてきた貴女こそ、なげやりだった俺に、生きる価値を与えてくれた天使ちゃんだったよ。
有難う。
~おわり~
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