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「ジェンダー話をする女子ってうざいよね」って空気がますます女子を黙らせる

今回の某氏のジェンダー失言の件、案の定、「そんな大したことないのにおかしくない?」っていうカウンター意見が出てますね。まったくやれやれです。
一方、本来もっと激怒り抗議すべき女性議員や都知事が言葉を選んで沈黙気味なのも取りざたされてます。
そうそう、これだよ。日本がいつまでたってもジェンダー問題後進国な理由・・。
偉い立場にいる女性ほど、男性の村社会に苦労してる。
おじさんおじいさんに嫌われて妬まれると生きていけない。
だから男性に対して「かわいい女」(今でいうと「わきまえた女」でいなければならない。)

これは別に政界だけの話じゃない。我々女性が日常的に直面している社会での話だ。
会社でも、偉い男性に嫌われたら生きていけない。社内の偉い人もそうだし、取引先の偉い男性にも。だからつねに、女性は貝になる。
失礼なことを言われても微笑んで流す。聞かなかったことにする。
なんなら、「私はそういうの、許容しますよ!わきまえてるんで!」っていう態度で、笑い飛ばして見せたりもする。

日本社会では、男性に、ジェンダー問題でむきになって食って掛かる女子は冷笑される。SNSではこき下ろされたりもするけど、
日常では、「ちょっとめんどくさいよね、彼女」っていう空気になる。
「そういうの、やめようよ、酒がまずくなるよ」っていう男性の困った顔が目に浮かぶ。

私がその空気に初めて気づいたのは、大学を卒業して入社したばかりのころだった。


大学までは、まったく男女差別のこともジェンダーバイヤスについてもあまり考えずに済んできた幸運な私だったけれど、実力で入社を勝ち取ったはずの会社で、当たり前のように「女は引っ込んでろ」的な発言をされた。
会社でちやほやされるのは、きれいに着飾った短期契約の事務職の派遣さんたちで、女子社員はさらにその下に位置していた。
社内電話を取ると、当たり前のように「女の子いる?」って聞かれる。
今だったらあり得ないけど、私が新入社員のころは当たり前だった。
上司の鉢植えに水やりをしろって言われたときも、「なんで私が?」と聞いたら、「女だろ」って言われた。これも、冗談みたいだけど、ほんとの話。
この国の会社はつい最近まで、そんなことが当たり前にまかり通る場所だった。
その状況の理不尽さに、当然新人の私は怒っていた。
めちゃくちゃ義憤に駆られていた。

で、それを大学時代からの親友で、何かにつけて難しい議論なんかをして毎晩夜更かしトークしてたような男友達と飲んだ時に、ぶちまけた。
きっと彼なら、その話を聞いて一緒に怒ってくれるだろうと思ったから。
でも、彼の反応は超~微妙だった。
目をそらしまくって、「興味ない」オーラ出しまくり、何ならあくびすらしてたと思う。
そしてあろうことか、話募ろうとする私を遮ってこう言った。
「あのさあ、そういう話、やめない?つまんないじゃん」って。

あ、そうか、つまらないんだ。
彼にとっては、「こんな話」はどうでもいいことなんだ。

私が得意先に行って、セクハラ発言を苦笑いで聞き流したことも、
銀座のキャバクラで会ったこともなかった社外のデザイナー先生に、
「お前ブスで良かったな。他に可能性ないと仕事に打ち込めるだろ。」って言われても「ひどい~」って聞き流すしかなかったことも。

それは、男性的には、どうでもいいんですね。
そうですよね。
そんなことでジェンダー論振りかざすのって、かっこ悪いっていうか、
空気読めてないってことなんだね。

私は、その友人と、それっきり会うのやめた。
すごく理解しあってると思ってたけど、全然彼は私の事なんかわかってないんだった。いつも社会の問題について熱く語ってた彼だったけど、彼にとって私の問題は大したことではないのだった。

あの時の空気はずっと忘れない。

あれからずっと20年以上会社人生を送っているけど、その中で、私はいつの間にか、正しく怒る方法を忘れてしまった。

何を言われても傷つかず、男性社会の邪魔にならないように、
男性が女性を馬鹿にする発言をしても、ふっと微笑んで、
「私はわかってますよ、大丈夫、ジェンダーのじぇも言いませんよ」って顔をして、「わきまえてる女」を演じ続けた。

男性社会の中で仕事をしていると、悔しい思いをすることは死ぬほどある。
それは、はっきり目に見える形ではなく、あくまでも空気だから、
なかなか反撃できない。
「それは君個人の力不足だろ」っていう空気がある。
今回のM氏も、「数合わせで実力のない女性が・・」という女性個人の能力を攻撃することで、自分の差別意識をうやむやにしてたけど。
そういう空気があるんだよ。
実力で女性が劣ってるんだから、別に女性を虐げているわけではないよっていう個人に話を帰着させるずるい論法。
その論法におびえて、女性は、何か理不尽があっても、口をつぐむ。
自分が悪いんだからしょうがないんだと。

男性はすぐに女性を個人個人の特質に分解してしまう。
そして、「わきまえた女性」はいいんだよ、と言う。
だから女性は分断のはざまで、どちらにも行けなくなる。
だけど、その根底には、絶対に、あると思う。
「この社会は男優先なんだ」っていう確固たる信念が。
「女は劣っているのだから、男性が先導するべきだ」
「女は感情的だから」「女は話が長いから」「女は家を守らなければいけないから」うんぬんかんぬん。

それね、今でいうところの、ジェンダーバイヤスってやつです。
ダメなんです。そうやって性別でひとくくりに決めつけたら。
「男は男らしく」、もちなみにジェンダーバイヤスです。

今めちゃくちゃ流行ってる「鬼滅の刃」も相当やばくて私はアニメ見ながらドキドキしました。「えっこれ、普通に子どもに見せる?」って。
残酷だから、じゃないです。ジェンダーバイヤスバリバリだから。
「俺は男だから」「長男だから」「泣かない。」「守るんだ。」
って、えっ国際基準では放送コードレベルのジェンダーバイヤスです。
こういうの普通に聞き流してっから、日本はダメなんだってば!!!!!

でも、これ、言ってる人私の周りには誰もいません。
私も別に思ってるだけで周りの人に言ったことはないし、tweetしたこともない。だって、「なにジェンダー女?いたたた乙」って思われるのやだから。
あの、新入社員の時の男友達のしらけた顔が浮かぶんだ。
「空気読もうよ」「そういうの、つまんないよ」って。

でもさ。
私たちが、こうやって、空気読んで、微笑んで聞き流して、
あえて声を上げないで来たから。
男性に歯向かって自分の立場がなくなるの怖くて、
忖度しまくってきたから、今の日本があるんだよね。。
そう思うと、ほんと、自分を掘って埋めたくなる。
自分なりの処世術のつもりだったし、
周りの頭いい女性たちもそうしてきたから、
そういうもんだと思ってたけど。
やっぱり、黙ってちゃいけないんじゃないかって思う。

個人的に、失言した誰かを攻撃するってことは意味がなくて。

この国の社会が、当たり前だと思っている、かなり偏った意見を、
偏った風習、思い込み、呪いを。
一個一個、破壊していかなきゃいけないんじゃないか。

それは、女性だけじゃなくて。
男性に対しても同じだと思うんです。
男性が、男らしく力を行使して、家族を守らねば、とか、泣いてはならぬとか。そういうのも、なくしていかないと。
女性を守る運動とかじゃなくて。女も男も。
ジェンダーを理由にいわれのない差別発言、偏った見方をされないように。

これからは、ちょっとだけ、「わきまえない女」になろう、と
心に決めました。

こんな記事を書くと、「えっ恋愛部長って、ちょっとうざい感じ?」って思われそうで、封印してたんですけどね。(笑)
ホントは、心の中でずっと思ってたよ。
ジェンダーバイヤス死ね。って。


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